Miyazaki Premium Golf Shafts0

An Inside Story Kaulaシャフト開発者インタビュー
ダンロップスポーツ 尾山仁志

プロ・上級者はもちろん、アベレージゴルファーにも
『しなり』『走り』が感じられる新しいMiyazaki

今秋、発売を開始したゴルフクラブ・NEW「スリクソン Zシリーズ」。プロ・上級者からアベレージゴルファーまで、幅広い層のゴルファーにフィットすることをコンセプトに開発されたこのモデルに装着されているのが、ダンロップスポーツ製のシャフト「Miyazaki Kaula(カウラ)」だ。従来モデルから大きく性能がアップしたKaulaは、これまでとは異なる新たなアプローチによって生まれた。開発を担当したダンロップスポーツの尾山仁志に、完成までの経緯や製品の特長について語ってもらった。

膨大なスイングデータを解析して剛性分布に落とし込み、
ラインナップを決定

Miyazaki Kaula。

Q.「Miyazaki」シャフトとして4代目となる「Kaula」ですが、まず開発の基本コンセプトをおしえてください。

尾山 はい。「Miyazaki」は、これまでもドライバーをはじめスリクソンのZシリーズに標準装着してきました。それは、今秋発売される新しいZシリーズでも同じなのですが、今回のZシリーズは、想定するユーザー層をこれまでのプロ・上級者だけでなくアベレージゴルファーにまで広げることをコンセプトにしています。そのためkaulaも、ユーザー層を広げることが最大のテーマでした。したがって開発も、プロや上級者に打ってもらい、それをフィードバックして開発に生かすという手順から、まず一般ゴルファーに試してもらう方法に変えました。そうした理由はもう一つあって、従来モデルのZシリーズに装着したKosumaは、店頭でフィッティングすると、ヘッドスピードの速いゴルファーにはフィットするものの、ヘッドスピードが遅めのゴルファーにはやや扱いにくく、他の軽量シャフトを勧めるケースがありました。今回は、そういうゴルファーにもMiyazakiを使ってもらおうと考えたのです。

Q.なるほど。それはかなりの方針転換ですね。では、より幅広い層のユーザーに合うシャフトを作るために何をしたのですか?

尾山 アベレージゴルファーに使ってもらうために、剛性分布の見直しを検討しました。その際に活用したのが、「IFC※フィッティング」から得たスイングデータです。Miyazakiシャフトの発売開始以来、「デジタルインパクトワールド」計測器を使って計測した一般ゴルファーのデータが少しずつ蓄積されていて、そのデータ数は今回の開発を始める時点で4300を超えました。そのデータを回収、解析して、世のゴルファーの適正IFC分布を割り出しました。どういう剛性分布がいいのか、また、それに合うゴルファーがどれくらいいるのかを割り出して、そこからシャフトの剛性分布に落とし込んで新しいラインナップを決めていきました。そこが、これまでとの大きな違いですね。

ダンロップスポーツ 尾山仁志

Q.それはたしかに大きな変化ですね。では、開発は具体的にどのように進めたのでしょう?

尾山 中級者でも扱いやすいシャフトにするために、「しなり」「走り」「つかまり」といったものを中級者が十分感じられるようすることをポイントに開発しました。Kaulaは80~50g台をラインナップしていますが、60g台、50g台については、よりやさしくしています。重量についても、Zシリーズの従来モデルのZ545とZ745のドライバーでは、ともに60g台のシャフトを標準装着していましたが、今回のZ565ではシャフト重量を50g台に設定していますし、その50g台のシャフトは、中級者でもしなりを感じながら打てるスペックになっています。

Q.今のお話にあった新しいZシリーズのヘッドとのマッチングはどのように行ったのでしょうか?

尾山 ゼクシオの場合と同じなのですが、当初のコンセプトに合わせてヘッドとシャフトを設計し、最初のサンプルができた時点で両者を合わせてテストし、その結果をフィードバックしました。その工程を何度か繰り返して、今回のZシリーズに標準装着されている中調子の「MIZU(水)」を作りました。そして、それをベースに、先ほどの適正IFC分布を考慮しながらカスタム用の調子違いのスペックを作り込んでいきました。

「しなり」と「安定」。
相反する二つの現象を最新の技術によって両立

Miyazaki Kaulaの構造図。剛性がアップしたフープ層(黄色の部分)が
▲Miyazaki Kaulaの構造図。剛性がアップしたフープ層(黄色の部分)が"つぶれ(たわみ)"を防ぐ一方、バイアス層(オレンジ色の部分)が"ねじれ"を小さくすることでシャフトの挙動が安定。フェース角、ロフト角のバラつきを減らす。(クリックで拡大)

Q.これまでのメインユーザー層に想定していたプロ・上級者向けのスペックはどうなったのですか?

尾山 この例が分かりやすいと思うのですが、ゴムホースを大きく曲げていくと、あるところでフニャッと折れますよね? あれはつぶれて折れているのですが、シャフトの場合も、スイング中にたわみが大きくなると、つぶれ変形という現象が起きます。それが起こると、少しの力でたわみ方が変わり、それがシャフト挙動のバラつきにつながると考えています。Kaulaでは、フープ層(シャフト軸に対し垂直方向に巻いたカーボン層)に、ゼクシオ ナインでも採用した「東レT1100G」という材料を使うことで、つぶれ剛性を24%上げることができました。それによってシャフトのつぶれ変形を抑え、スイング中のシャフトの動きの安定につなげています。

Q.24%というのはとても大きな性能アップですね。

尾山 そうですね。特に今回は「しなり」「走り」をテーマにして設計したため、剛性をバランスよく調整する必要がありました。シャフトは、硬くすれば当然しなり感はなくなってしまうのですが、「しなる」「安定する」という相反する現象を両立させることができたのが、kaulaが大きく性能アップした最大のポイントだと思います。

Miyazaki Kaula

Q.なるほど。もうひとつの「ねじれを絞る」という対策は、どんな方法で行ったのでしょう?

尾山 先ほどの"つぶれ"というのは「曲げ方向」に関わる力であるのに対し、ねじれは「開いて閉じる」動きの中で起こります。これまで、バイアス層(シャフト軸に対し斜め方向に巻いたカーボン層)には、弾性率が40トンと80トンという二つの素材を組み合わせた特殊素材「ハイブリッドプリプレグ」(炭素繊維と樹脂でできたシート)を使ってきましたが、今回、80トンの代わりに90トンという1段グレードの高いものを40トンのものと組合わせた材料を、世界で初めて採用しました。それによって、ねじれを小さくすることができたのです。カーボン繊維というのは、弾性率が高い、すなわちトン数が大きくなると、硬く、伸びにくくなる一方、脆くなるという性質があります。そのため、シャフトを作るには高弾性のものだけではダメで、弾性の低いものとミックスすることで、強くてしなやかなシャフトを作ることができます。90トンのプリプレグは飛び抜けて硬いので扱いが難しいのですが、自社工場でしっかり工程を管理することでシャフトの材料として利用できました。

Q.そうして完成したkaulaですが、プロ・上級者などアスリートゴルファーの反応はいかがですか?

尾山 テストをお願いしたトップアマのみなさんには、しなり感、走り感を感じてもらっています。また、プロへのフィッティング作業はこれから本格化させる予定で、アメリカPGAツアーでは、硬めのスペックを揃えてフィッティングを始めたところです。

Q.すると、「これまでより幅広い層のゴルファーが使えるシャフト」という目標は達成できたのでしょうか?

尾山 はい。Kaulaのスペックはこれまでと同様、フレックス・重量別に36通りですが、プロ・上級者を含め、世のゴルファーをまんべんなくカバーできるラインナップになりましたので、どんなゴルファーにもフィットする一本がみつかるはずだと思っています。

※IFC=インターナショナル・フレックス・コードの説明はこちら

尾山 仁志(おやま・ひとし)

ダンロップスポーツ株式会社 グローバル商品開発本部 クラブ開発部 課長
1992年に住友ゴム工業(株)に入社以来、一貫してゴルフクラブ開発に従事。現在はMiyazakiのほか、「スリクソン」「ゼクシオ」などダンロップの全ブランドのシャフト開発を手がける。

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