ダンロップ ストリンギング エキスパート 座談会 その2

ダンロップのラケット&ストリングは「マイルドさの重ね着」だ!

前回は特別版として、ダンロップの新しいストリンギングチームともいうべき【DUNLOP STRINGING EXPERTS】の座談会という形で、エキスパートストリンガーがお考えになっていることを話していただきました。今回は、「その2」として、ダンロップストリングについて感じてらっしゃることを伺います。彼らの話から、ダンロップストリングという新しい世界を感じ取っていただければ幸いです。

吉岡輝彦山内大志青木宏

まずダンロップストリングが他社ストリングと違う点、優れている点は何でしょう?

吉岡輝彦氏:

初めてダンロップのストリングを張ったときに感じたのが「張りやすい」ということでした。とくにポリエステルは硬くて、ときに角張ったり、凸凹が激しかったりと、横糸を通すときには指先は痛いし、捩れないように張ることにすごく気を遣わなければならなかったり。プレーヤーにはわからないでしょうが、ストリンガーにとっては、とてもストレスのある素材なんです。でもこれだけ主流になってしまうと慣れましたけど(笑)。

それだけにダンロップストリングの「張りやすさ」には驚きました。すべてのお客さんに、これを使っていただきたい(笑)!

山内大志氏:

私も吉岡さんと同じように、ダンロップストリングの第一印象は、まず「あっ、張りやすい糸だな」ということです。とくに【エクスプロッシブ・バイト】は、突起のために張りづらいかなと勝手にイメージしていたんですが、自分としてはまったく抵抗感なくスムーズに張り上げることができて、ちょっと意外でした。

対談風景

青木 宏 氏:

ダンロップの場合はラケットありきで、その特徴をさらに生かし、感じてもらうためのストリングというスタンスがあるわけです。ダンロップラケットのイメージというのが「マイルドさ」ですから、ポリエステルなのにマイルドで、ナイロンはさらに優しさがあるというコンセプトなんですね。ブランドとして統一されたイメージがあり、そんな「ラケットとストリング」を「組み合わせて使うこと」が、プレーヤーにとってもプラスαを生んでくれると感じています。

今回発売された「ダンロップストリング」のなかで、「これが一押し!」は?

山内大志氏:

ウチの店で評判がいいのは【エクスプロッシブ・スピン】です。【エクスプロッシブ・ツアー】はとても柔らかいフィーリングがいいと評価されるんですが、これまでポリらしいポリを使っていたお客さんが多く、乗り換えるに当たっては、似ている感覚を選ぶ方が多いのは当然だと思います。【エクスプロッシブ・ツアー】については、一通りの乗り換えが落ち着いてから、新たにポリエステルを試そうかというお客さんに評価されるようになると思います。

対談風景

吉岡輝彦氏:

ダンロップのストリングは、これまでも海外では流通していましたから、そのまま日本に導入するのが簡単だったはずですが、今回は日本でゼロから企画し直したもの。つまり日本のユーザーのために開発したラインナップですし、ラケットを企画している日本のダンロップが、自社ラケットと最適化しつつ組み上げているので、互いに違和感があるものはいっさいなく、ダンロップラケットのユーザーには安心して使い始められるところがいいですね。

青木 宏 氏:

ストリングに関してダンロップは最後発であって、後発には後発のメリットがあります。それは「他社の人気モデルを研究したうえで開発できること」で、その結果「他社モデルの短所を補ったストリングを作れる利点」があります。ストリングというのは、ずっと使い続けていると、性能的にちょっと不満に思う面も出てくるもので、それを補って満足感の高い仕上がりに調整したのが、新ダンロップストリングです。

しかも価格的に『安い』というメリットがあるわけですから、一度使ってみさえすれば、「これでいいんじゃない?」ではなくて「こっちのほうがいいよね!」となってくれると思います。それが全モデルについて言えるので、まずは使ってみてもらうことですね。

今までの経験や日頃の張り実績から、今後の可能性のあるストリング素材とは?

吉岡輝彦氏:

男性プレーヤーは、ベテランや大ベテランでもポリエステルを張っている人が少なくないですよ。男性の場合は「強く打ちたい」「思いっきり叩きたい」という願望がありますから、ポリエステルで芯を喰ったときのハードヒットは、忘れられない快感になります。ちょっと前であれば「ポリエステルは飛ばないからダメ」というニュアンスもありましたけど、最近はラケットフレーム側の反発性能が上がってきているので、ポリエステルでも十分に飛んでくれますからね。

ポリエステルのメリットは「断面形状を自由な形で作れる」ということです。これはナイロンではきわめて困難です。これによって、それぞれに際立って個性的な打球性能やフィーリングを持たせることができます。今後はもっともっとポリエステル製ストリングの研究が進み、シェアが広がっていくのではないかと思います。

対談風景

青木 宏 氏:

ポリエステルというストリングは、学生について見れば「ほぼ100%」に近いでしょう。ベテランにとっては「最近やけに流行ってるけど・・・・・・」でしょうが、学生たちはテニスを始めたときから存在するもので、むしろナイロンモノやマルチを使ったことがない学生がほとんどでしょう。いまやラケットフレームの開発も「ポリエステルありき」の姿勢であることは明確です。

今後は、ポリエステル単体ではなくて、ナイロンなどとの異素材との組み合わせについて、研究が進んでいくことを期待しています。現在のポリエステルには、テンションメンテナンスの問題や、打球時の衝撃感が大きいことなど、拭い去れない現実があります。それを解消しようというムーブメントが「ハイブリッドストリンギング」です。ポリエステルの良さを求めながら、マイナスに感じる部分を異素材ストリングとの縦横ハイブリッドで緩和していこうというものですが、「単体でのハイブリッド効果」についての試みはすでに始まっています。おおいに期待できますね。

今後の「ダンロップストリング」に期待することは、どんなことでしょう?

山内大志氏:

私が期待しているのは【エクスプロッシブ・スピード】の良さを多くの若者に理解してもらうことですね。ダンロップには丸形断面のポリエステルが2種類あり、【エクスプロッシブ・ツアー】はとてもマイルドなセッティングで、かたや【エクスプロッシブ・スピード】はそれと対極的にしっかりした打球感で、学生など若いハードヒッターにはものすごい球威を与えてくれます。それをこの価格帯で提供してもらえるダンロップのありがたさを伝えられると嬉しいです。

吉岡輝彦氏:

それから新たに開発されたダンロップのストリンギングマシンは、価格に対する満足度がとても高いものです。ストリング自体が「張りやすい」のが特長であって、さらにマシンもストリンガーが使いやすいことを考えて作られているので、ダンロップのストリング事業が、いかに本気であるかを感じ取れるところです。

青木 宏 氏:

ストリングブランドとして後発のダンロップが進むべきは、「性能と価格の絶妙なバランス」じゃないかと思うんです。ポリエステルがこれだけ市場に蔓延している状況で、新規ブランドが喰い込んでいくのは非常に厳しいです。ポリエステルにしても、すでにあらゆる側面がカバーされてしまっている・・・・・・ではダンロップが何をやるべきか?同じタイプであるにしても、既存モデルよりも「ここがこういうふうにいい」「こんなメリットがある」と明確に説明できる武器がほしいですよね。

「ものスゴくいい!」もアイテム的に魅力的ではありますけど、既存モデルとかけ離れすぎていると、選択の対象外になってしまうので、それはそれとしてラインナップし、市場に根を張るためのストリングは、「適度に優っている」「優しい個性がある」くらいで、しかも「価格的にメリットがある」。ようするに「安い!」ってことですね。「ほんの数百円のことは気にする問題じゃない」という意見もありますが、同等以上の性能で安ければ、それを選ばない理由はないんじゃないでしょうか。そのベースはすでにできているので、あとは存在を認知してもらうだけですね。

対談風景
松尾高司
松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わってきたプロフェッショナル。