PGAツアーの今季レギュラーツアー最終戦「ウィンダム選手権」で、松山英樹は最終日を「66」でラウンドし15位でフィニッシュ。今季の獲得賞金をランキングで105位相当まで積み上げ、125位以内(またはフェデックスポイントで125位以内)に与えられる来季シード権を手にした。
自身にとって初戦となった「ソニーオープンinハワイ」ではまだアマチュアだったため、プロとして参戦したのは「全米オープン」を皮切りにわずか6試合。それだけでシード権を獲得してしまったのは見事と言うほかない。しかも、そのすべてが初出場の試合で、予選もすべて突破し、最も悪い順位が21位タイなのだから驚く。特に、7月第3週から始まった「全英オープン」「全米プロ」というメジャー2試合を含む5連戦で見せたプレーは、ゴルファーとしてのポテンシャルの高さをあらためて証明した。
スコットランドからカナダ、そしてアメリカへ。3カ国を6週にわたって転戦した松山は多くの未知なる相手と戦った。スコットランドのリンクスでは、風と、硬くて速さがホールによってまちまちのグリーン。アメリカでは、粘りのある芝。長距離移動による時差ボケ。そして、連戦から来る疲労。それらのすべてに、松山は打ち克った。
初めてプレーするコースでは、他のプレーヤーと一緒に練習ラウンドをしてアドバイスを請い、柔軟な思考と高い吸収力、それに限られた時間ではあったが練習によって自分のものにした。リンクスで見せた、弾道を低く抑えたショットはその最たる例だろう。また、疲労は、5連戦目には棄権を考えさせるほどの腰痛になって表れたが、21歳という若さと日頃のトレーニングでつけた体力、それにスイングを変えることで乗り切った。並の選手であれば、疲労が即予選落ちなどの成績になって表れるのだろうが、予選を通過し、そのうえトップ10以内をうかがう位置まで持っていけるのが松山のスゴいところだ。
国内では屈指の飛距離と、精度の高いアイアンショット、引き出しの多いアプローチ、そして自ら得意クラブと語るパット。どれをとっても新人離れしているのはだれもが認めるところだったが、それが世界でどれだけ通用するのかに注目が集まった。中には「1年目からいきなり結果は出ないのでは?」「まずは経験を積むことが大事」と、長い目で見る向きもあっただろう。だが、松山はそうした予想をいい意味で裏切り、いまや人々の期待のレベルは「彼の力はまだまだこんなものではない」と確実に一段階上がった。
来シーズンのPGAツアーは、早くも10月に開幕を迎える。松山はその前に日本ツアーに参戦する予定という。ぜひ、海外で大きくなった姿を日本のファンの前で見せてほしいものだ。
文/魚住 了(ゴルフライター)