アメリカのみならず世界中のゴルフファンに自身の存在を知らしめた昨年10月の「ザ・プレジデンツカップ」から8か月。同じ「ミュアフィールドビレッジGC」を舞台に行われた「ザ・メモリアル・トーナメント」で、ついに松山英樹が米ツアーで初めての栄冠を手にした。アマチュアだった2011年の初参戦から26戦目。日本人プレーヤーとしては史上4人目、それも22歳という若さでの快挙となった。
「今日(最終日)は午前中からショットが良くなかった。そんな中でもアイアンショットがバーディショットについたものの、パットが足を引っ張った。でも、そのパットで最後(プレーオフ)の18番をカバーできてよかった」
優勝直後のインタビューで松山はこう答えた。良くなかったショットというのはティショットを、足を引っ張ったパットというのは、パーをセーブできなかった終盤の3ホールでのパットをそれぞれ指しているのだろう。
だが、全体を振り返れば、要所では優勝するにふさわしいショットとパットを見せた。たとえば、最終ラウンドの18番のティショットでは、確実にフェアウェイをキープ。そこから第2打を7番アイアンで1.5mにつけてバーディを奪い、プレーオフに持ち込んだ。
パットにしても、1m前後のバーディパットは確実に、4番と8番ではそれぞれ5m、6mを沈めてバーディとした。そして、自身が「カバーできた」と語ったプレーオフでの1打。下りの入ったおよそ4mのウィニングパットは、この大会のベストパットと言えるだろう。
「大事なところでのパッティングはまだまだ。もっと練習しないといけない」
苦笑交じりにそう語っていたのは、首位タイからスタートしながら10位タイに終わった前週の試合後。だが、コース設計者で、大会ホストでもあるジャック・ニクラウスが、「彼のパッティングストロークはとてもスムーズだ。それを22歳でできている。それだけでなく、頭を使ってパットを決められる」と評したように、松山のパットはすでに世界でもトップレベルにある。
そして、持ち前の精神力の強さは、この試合でも際立った。それまで競り合っていた他の上位陣がスコアを落とし、自らもダブルボギー、ボギーという最悪の流れで迎えた18番でバーディを奪ったのは、並の心臓の持ち主ではできないことだ。それを、18ホール中最難関のホールでやってのけるのだから恐れ入る。
ルーキーイヤーのツアー優勝を振り返って、「すごく自信になった」と語る一方で、「メジャーであんなミスをしたら優勝は遠ざかっていく」と早くも次を見据えた松山。この優勝によって一段ステップを上がった松山が、メジャーでどんな戦いぶりを見せてくれるのか楽しみだ。