PGAツアー4個目のタイトルと、同ツアーでの大会連覇。
松山英樹に、“日本人初”という勲章がまた2つ加わった。
ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ「ウェイストマネジメント・フェニックスオープン」。去年の優勝に加え、2014年が4位、2015年が2位と、コースとの相性が抜群なことから、大会前には優勝候補の筆頭に挙げられた。その下馬評どおり、松山は初日2位タイ、2日目3位タイと好調な滑り出しを見せた。ただ、3日目は順位こそキープしたものの首位との差が4打に広がり、松山自身、「勝つにはビッグスコアが必要」と優勝争いに絡む難しさを口にした。
そうして迎えた最終日、松山はパー5で着実にスコアを伸ばすという、得意の戦術を実践する。3番パー5の第2打を50センチにつけてイーグルを奪うと、13番パー5、15番パー5でもバーディ。この時点で通算17アンダーの単独トップに立った。
だが、ここから産みの苦しみが始まる。17番パー4では3メートル、最終18番では6メートルのバーディパットが決まらず、この日のベストスコア「64」で回り首位タイでホールアウトしたウェブ・シンプソンとプレーオフを戦うことになった。
18番パー4から始まった1ホール目は両者ともにバーディパットが決まらずパー。すると松山は、同じ18番を使った2ホール目ではティショットをバンカーに入れ、第2打もグリーンをショートさせパーを拾うのが精一杯。シンプソンがバーディパットを外したため、勝負は3ホール目に持ち越されたが、10番を使った3ホール目も、松山のバンカーからの第2打はピンを大きくオーバー。パーに終わったが、ここでもバーディチャンスを外した相手に救われた。
そして舞台を17番パー4に移した4ホール目。先にドライバーで打ったシンプソンのボールはグリーン右端に乗ったものの第2打はバンカー越えとなり、グリーン中央に戻すのが精一杯。そこからのバーディパットはカップをかすめたもののパーに終わった。一方、松山は3Wでグリーン手前まで運ぶと、第2打をピン手前およそ3メートルの好位置につける。そして、この日の終盤に決め切れなかった距離を、この場面ではしっかりと決めガッツポーズ。奇しくも1年前と同じホール、同じ4ホール目で決着をつけた。
実は開幕前日に首を痛めていたという松山。その影響もあってか、「(プレーオフが)早く終わってくれと思っていた」と打ち明けた。そんな苦しい状況に置かれても、相手に傾いた流れを食い止め、最後に勝利をものにしたのはさすがだ。
思えば、新しい『スリクソン Z-STAR XV』を初めて実戦に投入したのが去年のこの大会だった。松山がたしかな信頼を寄せるボールは、今年もビッグドライブやアプローチでの絶妙なスピンコントロールなどで連覇達成に一役買った。
今年のメジャー初戦のマスターズ開幕まで2ヶ月。松山本人は「オーガスタに行けば、ダメなところがたくさん見えて来る。来週からオーガスタまでしっかりトレーニングをしたい」と、勝って兜の緒を締めたが、“日本人初”のメジャー制覇への期待は高まるばかりだ。