昨年の「ダンロップフェニックストーナメント」の覇者、ブルックス・ケプカ(アメリカ)のメジャー初優勝で幕を閉じた117回目の「全米オープン」。松山英樹は、メジャーでの自己最高位を更新する2位タイでフィニッシュした。
練習ラウンドでは、飛距離の出るティショットやキレのよいアイアンショットを随所に見せ、仕上がりが順調であることをうかがわせた松山。だが、初日の戦いの幕が開けると、15番でセカンドショットを直接入れイーグルを奪ったものの、バーディなしの4ボギー。2オーバー「74」の82位タイと、本人が「最悪」と嘆く出遅れとなった。
だが、翌日は初日に入らなかったパットが面白いように決まり、7アンダー「65」をマーク。通算スコアを5アンダーとし、順位を一気に8位タイにまで上げて決勝ラウンドに進んだ。
ところが3日目は、前半に2つスコアを伸ばしたものの、後半は再びパットに苦しみ、パット数は初日より2打多い「30」。通算6アンダーとしたものの14位タイに順位を下げ、トップとは6打差に広がった。だが、第3ラウンド終了後、松山は、
「自分のベストを尽くせば、ビッグスコアは絶対出る。まだあきらめる位置ではない」
と語ると、最終日に自らの言葉を体現してみせた。
1番で幸先よくバーディを奪い、フロントナインで2つスコアを伸ばすと、バックナインでも5バーディを奪い、この日のベストスコアとなる6アンダー「66」をマーク。最終的には優勝に4打届かなかったものの、一時はトップに2打差に肉薄した。
この日の松山はスコア以外にも強いインパクトを残した。14番パー5では、およそ40ヤードの第3打を強烈なバックスピンでピン50センチに寄せ、ギャラリーの大歓声を浴びた。また、681ヤードの18番パー5では、フォローだったとはいえ、ティショットは約380ヤードのビッグドライブ。第2打でグリーン右横まで運んだ。こうして世界屈指のパワーと技を見せた松山だが、もうひとつ注目したいのがメンタルの強靭さだ。
同じく最終日の15番ではティショットが風に流されフェスキューに入り、3オン2パットのボギー。このホールでスロープレーによる警告も受けたが、直後の16番パー3ですぐさまバーディを取り返し、優勝争いに踏みとどまった。2日目は予選通過を賭けて、また最終日はトップと6打差という、いわば追い込まれた状況で共にベストスコアを叩き出したのも、強い精神力があればこそだ。
「メジャーの舞台で、2日間すごくいいプレーができた。よくなかった残りの2日をいいスコアで回れれば、(勝つ)チャンスは増えるかなと思う」
ワールドゴルフランキングで自身より上位のプレーヤーたちが予選落ちしたタフなコースを相手に、4日間中2日間でベストスコアを記録したことで、松山はメジャーへの確かな手ごたえをつかんだことだろう。
さらに、一時はグリーン上で仕切り直しするほどの強風が吹いた最終日のベストスコアも、風との駆け引きが勝負の鍵を握る次なるメジャー「全英オープン」での戦いに大きな自信を与えたに違いない。