このたび『スリクソン プロシリーズ』グローブとして登場するのが、羊革タイプ『GGG-S022』、合成繊維ナノフロント®を使用した『GGG-S023』、そして、人工皮革クラリーノ®を使った『GGG-S024』の3タイプ。前者2つは従来品のモデルチェンジであるのに対し、『GGG-S024』は新たに開発、市販するものだ。つまり、スリクソンのプロ・上級者向けグローブが一つ増えたことになる。
なぜ、バリエーションを3つに増やしたのか。
「これまで当社では、羊革モデルと全天候型モデルを展開し、ツアープロをはじめ多くのゴルファーから好評をいただいてきました。特に、薄いために素手感覚で握れ、耐久性にも非常にすぐれた合成繊維ナノフロント®を採用した全天候型モデルは、大勢のプロにご愛用いただいていました。ただ、松山英樹プロはじめ一部のプロからは、“ある程度厚みがあり、 握った時にしっかりした感触が得られるグローブを”という要望がありました。そんなプロのために人工皮革クラリーノで生産したモデルをプロトタイプとして開発しまして提供しておりましたが、『もしかしたら、一般ユーザーの中にもクラリーノ®が好きな方がいるのではないか?』と、市販化を検討することになったのです」
バリエーションの増加を検討し始めた理由について、商品開発を担当した住友ゴム工業(株)スポーツ事業部商品開発部の松本浩一郎はそう語る。
とはいえ、松本の言うように、スリクソンの既存の羊革モデル、ナノフロント®使用モデルともに市場での人気は高く、セールスは好調だった。本当にクラリーノ®使用モデルへのニーズはあるのか?
それを確かめようと、商品開発、企画のスタッフたちは二手に分かれて東西のゴルフ練習場を訪ね、一般ゴルファーを対象にアンケート調査を行った。その際、グローブを選ぶ際に重視している点について尋ねると、「グリップ性能」や「耐久性」といった項目を抑え、「フィット感」と答えたゴルファーが最も多かった。その割合は全体の実に85%に達したという。そして、今回の3タイプの試作グローブを試着してもらい、どのグローブのフィット感が自分の好み・こだわりに合うかを尋ねてみた。すると、羊革タイプが4割とトップを占めたほか、クラリーノ®使用モデルも、ナノフロント®使用モデルと同等の約3割のユーザーが支持することがわかったのだ。
「調査結果を見て、やはり一般のお客様もプロと同じくフィット感の好みが分かれるのだという印象を持ちました。そして、企画意図とユーザー調査の結果が合致したことで、クラリーノ®使用モデルにもニーズがあるのは間違いないと感じましたし、それぞれ特長の異なる3つのタイプを同時に提案したほうが、お客様も比較して選びやすいはずだという結論に至りました」
商品企画を担当し、練習場で調査に当たった、(株)ダンロップスポーツマーケティング ゴルフ企画第二部の佐藤弘樹は語る。3つのタイプそれぞれのフィット感を好む一般ゴルファーが存在するのを確信したことで今回のプロシリーズが誕生し、市販されることになったのである。
では、それぞれのモデルの特長を見てみよう。
まず、新たなバリエーションとして加わった人工皮革クラリーノ®使用モデル『GGG-S024』。元々クラリーノ®は、汗や雨に弱く、濡れて乾いたあとに硬くなりやすいといった羊革のデメリットを補うために開発されたもの。そのため、厚みやしっとりとした肌触りなどの風合いは羊革に極めて近い。それに、雨や汗に対する強さや耐久性の高さ、通気性のよさという、グローブに必要な機能をプラスしたすぐれものだ。ちなみに、この『GGG-S024』には『しっかり、厚手タイプ』という説明がついているが、
「極薄のナノフロント®と区別するために厚手とうたってはいますが、これを好むプロたちはけっして厚いとは感じていません。アマチュアの頃からこの素材のグローブを愛用している松山英樹プロも、『薄すぎず、厚すぎないベストの厚さで、フィット感が高い』と、高く評価してくださっています」(松本)
また、他社のクラリーノ®使用モデルは、甲側と掌側とで同じ素材、同じ加工のものが多いが、この『GGG-S024』では両側の加工を変えている。まず、甲側は、クラリーノ®に柔軟加工と揉み加工を施すことでやわらかくした。それにより指は曲げやすく、握りやすくなり、プロが求める繊細なフィーリングを実現している。一方の掌側には、羊革と同じようにオイルを浸透させることでグリップ性能をアップさせ、雨や汗への対応力を高めた。
次に、ナノフロント®を使用した『GGG-S023』。極細の合成繊維であるナノフロント®が可能にした素手のような感覚は、「できればグローブはしないに越したことはない」と考えるゴルファーに人気で、すでに多くのツアープロが愛用している。
「同じナノフロント®を使ったグローブは市場にいくつも発売されていますが、スリクソンのモデルは薄さだけでなく、伸縮性素材を加えたことで、より手にフィットする仕様になってます。また、掌のナノフロント®の表面に、グリップ力を高めるアクリル樹脂加工を施しているのもスリクソンのモデルの特長です」(佐藤)
そして、きめの細かい羊革を使った『GGG-S022』。羊革ならではのしっとり柔らかな風合いで、手全体を包み込むような着用感が最大の魅力だ。また、今回、従来モデルとは違う種類の羊革を採用するとともに、独自のなめし加工を施すことで、よりソフトに仕上げた。
「その結果、羊革派のプロからは、『型崩れしにくくなった』『これまでは汗をかくとシミができたり、ヌルヌル感が出てきたりしていたが、このモデルはそうなりにくい』という声を多くいただいています」(松本)
さらに、雨や汗で濡れたあとでも硬くなりにくいため、握りやすさ、グリップ力が長く持続するのも、このモデルの特長だ。
こうして3タイプが揃ったスリクソンのプロモデルグローブ。「素材によってそんなにフィット感が変わるものなのか?」と思う方もいるかもしれないが、実際に着けくらべてみると、その差は明らかだ。
まず、ナノフロント®を使用した『GGG-S023』は、薄さ、掌のさらっとした感触ともに、まさに素手に近い感覚。グリップの感触が掌にダイレクトに伝わる。また、羊革タイプの『GGG-S022』は、天然の素材ならではの柔らかな手入れ感で、指が曲げやすく、掌の中でグリップがしっかりなじむ。そしてクラリーノ®使用モデルの『GGG-S024』。手を入れた感触は羊革に近いやわらかさ。たしかに『GGG-S023』と比較すれば厚いが、松山プロの言うように決して分厚いわけではなく、絶妙の厚さと言える。こうして実際に着けくらべてみると、それぞれによさがあり、プロだけでなくアマチュアでも好みが分かれるというのも納得だ。
「プロ・上級者向けボールは、スピン重視タイプと飛び重視タイプという性能別にシリーズ分けされていますが、グローブの場合、羊革かそれ以外という素材でしか分けてきませんでした。今回、羊革以外のタイプを合成繊維と人工皮革という2つに細分化してバリエーションを増やしたことで、より多くのゴルファーのみなさんに満足していただけるのではないかと思います。これまで何となくグローブを選んでいたという方は、ぜひ店頭で3つのモデルを試着して、“いちばんフィットするのはどれか?”という選び方をしていただきたいですね」(佐藤)
掌・甲ともに同じ人工皮革クラリーノ®を使っているものの、グリップ力向上のためのオイル加工を施した掌側はしっとりした手触りなのに対し、柔軟加工と揉み加工を施している甲側はさらっとした感触。また、手を締めつける感じは、3つのモデルのうちで最もしっかりしているという印象だ。
極細合成繊維ナノフロント®を使用することにより、ご覧のようなしなやかさを実現。それでいて耐久性と伸縮性は群を抜いて高く、汗・雨にも強い。また、掌の「サメ肌グリップPRO」は、プロが求める強力なグリップ力を生む。さらに、15~26㎝(12サイズ)と幅広いサイズに対応しているのも特長だ。
従来とは違う種類の羊革に独自のなめし加工を施すことで柔らかさ、弾力性が増し、フィット感、グリップ力はかつてない高レベルに。さらに、「プロの中には、ショットの直前に着け、打った後は外す人が多いのですが、そういうプロから『着けたり外したりするのがラクになった』という意見をいただいています」(松本)と扱いやすさも向上した。