2019/10/07

XXIO製品情報

《NEWゼクシオ 開発担当者インタビュー》大変革に挑みつつ、守るべきものは守って生まれた11代目のゼクシオ

ついにベールを脱いだ11代目のゼクシオ。今回のモデルは“リブランディング”=ブランドの再構築を行い、シリーズ史上初めて2つのラインアップで発売される。なぜ『XXIO ELEVEN(イレブン)』『XXIO X-eks-(エックス)』という2つのラインが生まれたのか? そして、今回新たに開発された革新的な技術とは? 開発統括を務めた住友ゴム工業(株)スポーツ事業部商品開発部の中村拓尊に聞いた。

中村拓尊(なかむら・ひろたか)

住友ゴム工業(株)スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術グループ 課長
2006年SRIスポーツ(当時)入社。ゴルフボールの開発を経て、ゼクシオブランドのフェアウェイウッド、シャフトの開発に従事。2017年秋より同部技術企画グループにて11代目のゼクシオの開発統括を担当。今年7月から現職となり、クラブに関する新技術の開発を手掛ける。

 ゼクシオのクラブが2つのラインアップになる――。これは、2000年のブランド誕生以来、ロング&ベストセラーを続けてきたゼクシオにとって最大のトピックスと言っていいだろう。
毎回モデルチェンジをするたびに数多くのアベレージゴルファーに支持されてきたゼクシオが、なぜ今回、リブランディングを行う必要があったのか。中村によれば、それは、歴代ゼクシオが達成してきた「軽量化」という進化と深く関わっているという。

「ゴルフクラブ本来の性能を、どれだけゴルファーが打ち消さないか。これは、ゴルファーのポテンシャルを、どれだけクラブがムダなく引き出すか、と言い換えてもよいのですが、この観点から言うと、“軽くて、よく撓(しな)る”のがよいクラブです。ところが、パワーのある人は必要以上に振り回してしまい、そのクラブは“合わない”ことになります。つまり、クラブの“進化”が、一部のゴルファーには扱いにくさにつながってしまうというジレンマです。言いにくいのですが、ゼクシオの場合、その進化によって、ブランド誕生当時はメインのお客様だった世代のゴルファーが離れてしまった部分があります。
 いまゴルファーの多くが使っている300グラム弱というモデルにしても、昔からすれば非常に軽くなっているのですが、ゼクシオの場合、軽量化という進化のスピードが速すぎて、まだまだ自分にはパワーがあり、軽量クラブは自分の使うクラブではないというゴルファーを置き去りにしてしまった。ゼクシオがゴルファーのポテンシャルを引き出すクラブとしては確実にレベルアップしてきたことを思えば、これは非常にもったいないことです。では、軽量クラブが持つ本当の価値に気づいていない、あるいは軽量クラブにある種の偏見を持っているゴルファーにも、ゼクシオの魅力を体験してもらうためにはどうすればいいのか? そう考えた時、やはり2つのラインアップが必要だと」

 こうして、2つのラインアップで新たなスタートを切る11代目のゼクシオ。一つが、従来モデルをバージョンアップさせた『XXIO ELEVEN』であり、もう一つが、いわばゼクシオ未体験世代のための『XXIO X-eks-』である。
 では、それぞれのドライバーの基本コンセプトや最新の技術について中村に語ってもらおう。

 従来のゼクシオモデル愛用者には待望ともいえる『XXIO ELEVEN』(以下、イレブン)。このモデルに新たに採用されたのが、中村が「今回の核となる技術」と呼ぶ「ウエイト・プラス・テクノロジー(WPT)」だ。

 ゼクシオのドライバーの歴史を振り返ると、当初はヘッドの反発性能を上げるために、ヘッドの大型化やフェースの進化に取り組んだ。その後、ヘッドの反発を規制するルールが導入されると、さらなるヘッドの大型化と長尺化で飛距離アップを図った。だが、そうしたクラブ全体での飛距離アップにも限界が見えてくると、7代目モデルからはゴルフスイングの領域にまで踏み込んだ開発を目指してきた。

「前作の10代目は、スイングはそのままにクラブの動きを変えることで打点を芯に集め、ナイスショットを出やすくするというものでした。その同じ流れの中で、今回は“スイング自体を変えることはできないか?”と考えました。そこで着目したのがスイングのトップです。トップで違和感があると、もうナイスショットは期待できないですよね? これはゴルファーなら感覚として分かると思います。そこでモーションキャプチャーを使って、アベレージゴルファーのトップでのヘッドの位置を調べてみると、バラつきがハンドボールの大きさほどにもなることが分かりました。それを何とかできないかというのが、WPT開発のきっかけでした」

 そして、WPTを着想するもうひとつのきっかけが、男子プロの間で見られた「カウンターバランス」(以下、CB)というトレンドだった。CBとは、重くて振りにくいクラブのグリップ側にウエイトをつけることで反作用=カウンターが得られ、振りやすくなるというもの。中村ら開発陣がCBの実験を行った結果、グリップを重くすることで、たしかにトップの位置が安定するという効果は発見できたという。

「ただし、単にグリップを重くするだけでは、クラブ全体が重くなってしまってCBの効果を打ち消してしまいます。具体的には、トップまでは効果が出るものの、重いクラブはそこから振りにくいのでスピードが出ません。つまり、力があって振り切れる人はいいものの、多くのアマチュアには、シャフトやグリップを軽くした上でウエイトを載せて初めて効果が得られます。それに、各パーツを軽くしてからウエイトを載せるほうがスイング軌道が安定しますし、スイングスピードも出ます。そこがカウンターバランスとの違いであり、代々軽量化に取り組んできたゼクシオだからこそ実現できたのがWPTなのです」

 スイング軌道のバラつきが小さくなるだけでなく、手首のコックも深くなってパワーがたまる。WPTのもたらすこの2つの効果が、ヘッドスピードのアップと打点の安定につながるのだ。そして、このWPTは『XXIO X-eks-』『XXIO LADIES』にも搭載されている。

 そして、飛びを大きく左右するヘッド自体も「イレブン」はさらなる進化を遂げている。
 ヘッドの反発性能を上げるには、まず絶対的な反発力を高め、その反発エリアをできるだけ広げるという2つの方法がある。それに効くのが、慣性モーメントのアップであり、そのために今回新たに採用したのが「スターフレーム構造」と呼ばれるものだ。

「アウトドアテントはスタードームという形状になっています。これはできるだけ少ない骨で強度を保てるよう、三角形と五角形を組み合わせた構造体です。イレブンでは、これをヒントにしてソールのリブ(突起)を配置しました。それによって強度を確保することでリブ以外の部分を薄くでき、その結果生じた余剰重量をウエイトに使うことで慣性モーメントを大きくできます。今回、リブ以外のソールを今までで最も薄くできたことで慣性モーメントは過去最大になり、スイートエリアを広げることができたのです」

 さらに、イレブンのヘッドにはもう一つ新しい技術が投入されている。「新フラットカップフェース」だ。前述したように、ドライバーのヘッドには反発性能を規制するルールがある。一般的にSLEルールと呼ばれるものだ。ここでは詳しい説明は省くが、フェースには他にも規制があるのだという。

「とある条件下で測定した接触時間を示す“CT”という項目で、これも規定を超えてはいけません。反発力は、フェースのセンターが一番高くなるのは想像がつくかと思いますが、CTは端の方がいちばん高くなるケースがしばしばあるのです。つまり、端のCTが規定を超えてしまうと、ルールを守るためには全体の数値を下げる必要があります。当然、センター部分も抑えないといけないため、おのずとセンターの反発は落ちてしまいます。この課題をどうするか。そこで考えたのが、センター部分のCTがいちばん高くなるようにすることでした。そうすればセンターの反発は高く保て、ボール初速を上げることができます。では、どうずればそれができるのか。シミュレーションの結果、行き着いたのは、それまで真ん中を厚く、外側を薄くしていたフェースの肉厚を、思い切って発想を変えて、真ん中をこれまでより薄くして、そのエリアを広くしました。たとえるなら、今までの富士山のような形状から、エアーズロックのようななだらかな形状に変えたのです。チタンのカップフェースは全体の反発性能を上げるのに有利で、しかもチタンは軽いので重心設計にも効いてきます。そのフェースを、今回さらにフラットにして反発エリアとCTとが最も高くなる部分を一致させることができた。これは派手ではないものの、すごい技術なんです(笑)」

 スターフレーム構造によって広い反発エリアを確保するとともに、新フラットカップフェースでフェースセンターの反発性能を上げる。それにより、イレブンではボール初速が上がりやすくなり、飛距離アップを実現している。

 そして、ゼクシオに誕生したもう一つのライン『XXIO X-eks-』(以下、エックス)。すでに述べたように、このモデルは、これまでゼクシオのクラブを打ったことのないゴルファーに打ってもらうことをめざして開発された。
 ゴルフというスポーツを競技としてとらえるか、あるいは楽しむものとして考えるかは、ゴルファーそれぞれで違い、それがクラブ選びも左右する。そして、どんなクラブを使ってきたかも、当然ながら世代によって異なる。

「ゴルフ歴の比較的長いゴルファーの中には、“まだまだ振れる”“ゴルフをスポーツとしてプレーするんだ”というマインドを持った方がたくさんいます。そうした方には、モデルチェンジのたびに軽量化してきたゼクシオは、“自分にはまだ早い”“まだ自分の使うクラブじゃない”というイメージが出来上がってしまったために、これまで使ってもらえなかったのだろうと思います。“それなら重いクラブを作ればいい”という考えもありますが、ゼクシオは軽くて打ちやすいというイメージが堆積しすぎて、“どうせやさしいクラブなんでしょ?”と思われてしまう。それならば、ブランドごと変えて、まったく新しい別のラインを作ろうと」

 これまでもゼクシオでは、若い世代のゴルファーを意識したパワーヒッター向けのモデルも発売してきた。ただ、それはレギュラーモデルからヘッドの仕上げやカラーを変えたり、重いシャフトに差し替えたりした、中村いわく「中途半端」なものだった。

「そこで今回は、ヘッドの素材、構造、形状のすべてを変えました。打球音についても、ゼクシオ特有の高く、爽快な音のよさを、パワーのあるゴルファーにも感じてもらうために、音量や残響をコントロールしました。当然、ヘッドの金型から違うので、かなりの労力にはなったのですが(苦笑)、これまでのゼクシオがもっていた雰囲気をいわばリセットして、“ゼクシオのもうひとつの世界観を味わってください”というメッセージを込めました。ただし、エックスも、初代ゼクシオからの不変のコンセプトである“クラブ全体で飛ばす”という括りの中で作っています」

 レディスモデルも含め、大きく生まれ変わったゼクシオ。それを世に送り出す側にとって、ゼクシオとはどんなブランドであり、クラブなのか。改めて中村に尋ねた。

「開発だけでなく、ゴルフ事業に携わるすべての社員が、そしてそれぞれの立場にかかわらず“放っておけない”のがゼクシオのクラブなのだと思います。みんなそれぞれのゼクシオ観がありますし、思い入れもあるので、引っ張る力はすごく強い。それぞれベクトルの向きも少しずつ違うのですが、お互いがバランスよく引っ張り合うことで、ゼクシオ本来のよさを失わずに進化させることができるし、守るべきものを守れてきているように思います。守るべきものというのは、“一発目からナイスショット”というコンセプトであり、“アベレージゴルファーのスイングに寄り添う”という思いです。イレブン、エックスともに、新しいゼクシオを手に取ってくだったゴルファーのみなさんには、それを感じていただければと思います」。

・各モデルの製品情報は以下をご覧ください。