2020/10/12

SRIXON製品情報

《「スリクソン ZXシリーズ」開発者インタビュー②》 フェアウェイウッドもアイアンもターゲットはPGAツアーのプロ!

スリクソンの最新モデル『スリクソン ZXシリーズ』。松山英樹プロがプロトタイプを愛用中のドライバーと同じく、フェアウェイウッドやアイアンもまた、めざしたのは米PGAツアーのプロたちの“武器”になることだった。スリクソンZXシリーズの開発責任者にモデル完成までの軌跡を振り返ってもらう本企画。2回目の今回はフェアウェイウッド、ハイブリッド、ユーティリティアイアン、アイアンについて聞いた。

住友ゴム工業(株)スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術グループ
平野智哉(ひらの・ともや)

2001年入社。主にゼクシオのゴルフクラブの設計を担当したのち、2012年から4年間、アメリカ・クリーブランドゴルフ社に出向し、R&Dテクニカルコーディネータ兼プロ対応業務に従事。2016年から再び国内にてゴルフクラブの設計を担当し、Z85シリーズよりスリクソンモデルの開発責任者を務める。

「プロがクラブに求めるのは、構えやすさ、飛距離、コントロール性という3つの基本性能です。そのためプロを満足させるには、設計や技術によって、その3つの性能をしっかり高めることに尽きます」
 プロモデル開発の基本コンセプトについて、スリクソンのゴルフクラブの開発責任者である住友ゴム工業(株)スポーツ事業本部 商品開発部の平野智哉はそう話す。『スリクソン ZXシリーズ』(以下、ZXシリーズ)が、そのコンセプトを体現するために、フェアウェイウッドとハイブリッドで搭載したのが、ドライバーと同じ新技術「リバウンドフレーム」だ。
“軟・剛・軟・剛”の4層構造の組み合わせに加え、3番ウッドでは打点のバラつきに強さを発揮するカップフェース構造を採用。フェースを大きくたわませることで反発性能を高め、ボール初速のアップに成功した。
 また、ドライバーと同様に形状でもツアープロの要望に応えるべく改良を加えた。
「5番と7番については、飛びはもちろんですが、よりコントロール性の高さが求められる番手なので、前モデルとはっきり違いが出るよう形を変えています。これまで、どの番手もフェース高を同じくらいに設計していたのですが、それだと5番や7番は“ヘッド後方が小さい割にフェースが厚く見えて打ちにくい”という声がありました。そこで、ZXフェアウェイウッドでは、フェースを薄くして、構えた時にヘッドの厚みと奥行きの比率が同じに見えるように調整しました。従来モデルとヘッド体積はさほど変わらないものの、形状を新しくしたことで、ボールを拾いやすく、高さを出してグリーンで止めるイメージが増したと思います」
 そして、ZXハイブリッドも、ウッドと同じくリバウンドフレームによってフェースを大きくたわませてボール初速をアップさせた。また、形状についても変更を加えた。
「これまで、トゥ側が丸みを帯びていてウッドのような形状だったのを、アイアンに近いコンパクトな形に変えています。具体的には、トゥの輪郭を直線的にし、ヘッド後方を広げることでテークバックしやすくしています。インパクトでは、アイアンと同じように、ヘッドを上から入れやすいと感じてもらえるはずです」
 新しい構造で飛距離と方向安定性を高めつつ、外見でもプロが自身のショットをイメージしやすい形状を実現したのである。

 ZXシリーズのウッドとハイブリッドに搭載された「リバウンドフレーム」と同じく、ボール初速を高めるためにポケットキャビティ「ZX5アイアン」と中空構造の「ZXユーティリティ」に搭載された新技術が「メインフレーム」というフェース設計理論だ。
 まず、前モデルで採用したフェース周辺部の溝「スピードグルーブ」の面積を拡大。それに加え、打点分布に合わせてフェースの肉厚を最適に設計することで、フェースを大きくたわませることに成功した。
「ZX5アイアンを使うゴルファーは、ややトゥ寄りでヒットする傾向があるので、そこに当たった時に反発が最大になるよう、フェースの肉厚を調整しました。そこがZX5アイアンの最大の特長です。そして、肉厚の最適化には、実はフェース重量を軽くできるという効果もあります。つまり、それによって重心設計に余裕が出てくるため、ソールにタングステンのウェイトを入れるなどして、重心を低く、深くすることができるのです」
 メインフレームには、反発性能のアップと低・深重心化というダブルの効果があるというわけだ。
 また、「ZXユーティリティ」も、メインフレームがフェースの大きなたわみを生み出し、ボール初速がアップ。形状にも改良を加えた。
「あまり知られていないのですが、実はスリクソンのユーティリティは4、5年前からアメリカで高く評価されていて、特にPGAツアーでは、契約がなくても使用しているプロは多くいます。ただ、前モデルでは、性能はよいもののソール幅が広く、構えにくいという声がありました。そこでZXユーティリティでは、外見をシャープに見せて構えやすさを向上させることにフォーカスしました。それにプラスして、メインフレーム搭載によって飛距離が伸びたので、派手さはないものの、パフォーマンスは間違いなく上がっています」

 ツアープロの多くが愛用するハーフキャビティも、『ZX7アイアン』として大きな進化を遂げた。
「まず、プロが求める打感を実現するためバックフェースの中央を厚肉化しました。ひし形状の部分で、これはデザイン上のアクセントにもなっています。それと、このモデルにプロが求めるのは、やはりコントロール性の高さですから、それに応えるために、フェース面の溝をアップグレードしました。これはZX5アイアンも同様で、特にラフで使うことの多いショートアイアン(#8~PW)は、溝を狭く、深く、本数を多くすることで、ラフからでもできるだけスピン性能が安定するように改良しました」
 そして、ターゲットユーザーをPGAツアーのプロに定めたのは、ZX7アイアンも同じだった。そのために、まず、アメリカ・クリーブランドゴルフ社を開発の拠点とし、現地に駐在中の日本人スタッフを中心に現地スタッフも巻き込んで研究やテストを進めた。そうして開発された「ZX7アイアン」について、“アメリカらしさ”が端的に表れているのがソールのバウンスだという。
「ご存じのように、アメリカと日本とではフェアウェイの芝の種類が違います。そのため、日米それぞれのメーカーが作るアイアンをくらべるとバウンスに差があり、アメリカ製の方がだいたい2~3度は大きくなっています。これは地味ですが非常に大事な部分で、アメリカの芝に対応するためには、PGAツアーのプロとコミュニケーションをとりながら開発、設計を進める必要がありました」
 かつて平野が日本設計のアイアンをアメリカに持参してPGAのプロに打ってもらったところ、どの番手も数ヤードずつショートした。だが、当初はなぜそうなるのか分からなかったという。
「原因は、バウンスが少ないためにヘッドが芝に潜っている時間が長くなり、ボール初速をロスしてしまうことだったのですが、それはのちに私がアメリカに駐在して初めてわかったことでした。一般のアマチュアは感じないかもしれませんが、プロには大きな差になって現れます。やはりバウンスのあるモデルでないと向こうのプロには受け入れられません。ZX7では全番手でバウンス設計も見直したので、ソールもまさにPGA仕様になっています」
 世界最高峰の米PGAツアーのプロたちに照準を合わせ、ドライバーからアイアンまで、日米の開発スタッフが総力を結集してつくりあげた「スリクソン ZXシリーズ」。飛び、方向安定性、操作性のすべてが“世界標準”の性能をぜひ味わってほしい。

◆『スリクソン ZXシリーズ』の詳細はこちらをご覧ください。
https://sports.dunlop.co.jp/golf/srixon/zx/