2020/11/13

D-Cafeレポート

《リラックス・トーク》“日本一”に貢献してくれたスリクソンZXシリーズ。次は宮崎で勝ちたい ~稲森 佑貴~

 みなさん、こんにちは。稲森 佑貴です。先月の「日本オープン」では今季初優勝をすることができました。テレビの前で応援してくださったみなさん、どうもありがとうございました。先日は、ダンロップさんの東京オフィスにお邪魔して、スタッフのみなさんに優勝報告をしてきました。そこでもお話ししたのですが、あの試合では新しいクラブとボールが大活躍してくれました。

 まずは、『スリクソンZX7 ドライバー』。僕はこれまでスリクソンの“5シリーズ”を使ってきたのですが、今回は“7シリーズ”を選びました。初めて完成品を見せてもらったのが今年7月で、ソールのウェイトを替えながら打ってみたのですが、トゥ側を2g、ヒール側を8gにしたら、僕が理想とする、まっすぐ飛び出してからジワーッと左に切れていくゆるーいドローボールが出たんです。日本オープンでも、よほどつかまえに行かない限りはその球筋が出てくれて、ほとんどのホールでフェアウェイをキープできました(注:4日間平均78.57パーセントで出場選手中トップ)。飛距離も、僕の感覚ですが、それまでより5~10ヤードは伸びたと思います。それと僕がミスをする時には、右に抜ける球が出てしまうのですが、そんなショットでも、ZX7で打ったボールは勢いがあって、風に強いなと感じましたね。

 また、『スリクソンZXフェアウェイウッド』の#3、#5も強いボールで飛んでいくし、『スリクソンZXハイブリッド』#3も『スリクソンZXユーティリティ』#4も、特に距離のあるホールでは武器になりました。
 そして、『スリクソンZX5 アイアン』。これも本当に役に立ってくれました。初めて構えた時、当時僕が使っていた「Z585」に形が似ていたので、「これはいい」とその日のうちに替えました。ZX5アイアンは、打感もいいのですが、球が強くて、なおかつ長い番手でもしっかりスピンがかかるんです。僕はドライバーは飛距離が出る方ではないので、セカンドオナーになることも多いのですが、日本オープンで、僕がアイアンで遠くからどんどんグリーンに乗せるので、一部の選手たちの間で僕のアイアンの飛距離が話題になったみたいです(笑)。ZX5アイアンは、たしかにロフトが少し立っているけれど、高さも十分に出るので、ロングアイアンでもピンを攻めていけます。それに、ZX5アイアンはバックフェースのデザインがカッコよくて、いかにもポケットキャビティという感じがしないのも気に入っています。

 さらにもう一本、『クリーブランドRTX ZIPCOREウエッジ』の50°。これは最後にビシッと王手をかけてくれました。テレビ中継を観た方はご存じだと思いますが、僕は4アンダーの首位タイで最終日の18番パー5を迎えました。僕はティショットを「ZX7ドライバー」で打ち、セカンドは「ZXハイブリッド」#3で刻みました。第3打はピンまで120ヤードぐらいで、最初はPWで抑えめに打つことも考えたのですが、奥に行ってしまうと下りのラインが残るし、グリーンも速いのでバーディを獲るのが難しくなるだろうなと。それで50°のウエッジでしっかり打ちました。ライがすごくよかったので、バックススピンで戻ってしまうかもと思ったのですが、ボールはピンのほぼ横に落ちてピタッと止まってくれました。あれは、新しい『スリクソンZ-STAR』(来年2月発売)の性能のおかげもあると思うのですが、とにかくスピン量が絶妙でした。

 2m弱のバーディパットはラインを読みませんでした。打つ前にしゃがんではみましたが、あれはただの儀式です(笑)。あの日はそれまでパーパットは入るものの、バーディパットはまったくと言っていいほど決まりませんでした(苦笑)。直前の17番でも「絶対に入れる!」と思って打ったのに外してしまって。それは深読みすぎが原因だったので、最後は直感で打ちました。距離の割にけっこうフックしましたが(笑)、最後の最後で決めることができてよかったです。

 日本オープンでは、14本のうちパターと58°のウエッジ(クリーブランドRTX 4 FORGED)を除く12本は、今年の夏以降に使い始めた新しいモデルでした。以前のクラブも悪くはなかったのですが、新しいモデルのほうが計測でいいデータが出たし、“伸びしろ”を感じたんです。それに、新しいクラブを使った方がダンロップのみなさんも喜ぶでしょうし(笑)。ボールを新しい「Z-STAR」にスイッチしたのも、大会の10日前くらい前。正直に言うと、こんなに道具をいっぺんに、しかもメジャーの前に替えるのは自分でもどうかと思ったのですが(笑)、今年は試合が少ないし、全部替えて試合で使ったほうが本当の結果が分かるんじゃないかと考えました。それで、思い切って替えてみたところ、いきなり勝ててしまったという感じです。

 実は、去年は僕にとって本当に苦しいシーズンで、トップ10にも一度入っただけでした。ショットのイメージが悪いままずっと練習していたし、解決策を探して迷走している感じでしたね。最終的になんとか賞金シード(49位)は獲れたものの、「なんでこんなにずっと調子が悪いんだろう?」と悩んでいたんです。
 それである時、後輩がオーバーパーを打っても笑っているのを見て、「なんでそんなにヘラヘラしていられるの?」と聞いてみたんです。そうしたら、その後輩は「稲森さん、悟りを開いた方がいいですよ」と。彼はたぶん適当に答えたのだと思うのですが(笑)、それを聞いて、たしかに自分は考えすぎていて、自分を追い込みすぎたかもしれないと思いました。だから、上手くいかなくても“あっけらかん”としていようと思ったんです。

 それで、オフやコロナ自粛の期間には、あえて朝の練習をまったくせずに、ストレッチだけしてラウンドしたり、グリップを自分で打ちやすいと感じる握りに変えてみたりしました。そうしたら、アンダーパーがどんどん出るようになったんです。すると、気持ちにゆとりが出て、自分のスキルを生かしたゴルフができるようになりました。だから、今年は開幕戦からいいゴルフができていたし、去年よりはるかにプレーしやすくなりましたね。

 2年前に初優勝した時はなかなか実感が湧きませんでしたが、今回の2勝目はすぐに勝ったという実感が湧きました。ただ、1時間後には実感も興奮もスーッと引いていきました。次に向かって切り替えたというか。
 今回優勝して、たくさんお祝いの言葉をもらいましたが、「なんで他の試合で勝てないんだ?」とも言われました(苦笑)。メジャーでしか勝てないのが、カッコいいのか、カッコ悪いのか分かりませんが(笑)、もちろん他の試合でも頑張りたいと思っています。特にダンロップフェニックスは、勝ちたい気持ちがめちゃくちゃ強い試合。フェニックスCCは、毎年オフの合宿でもよくプレーしているし、今年の大会は海外からの招待選手もいないので、ぜひ優勝を狙いたいと思っています。

稲森 佑貴(いなもり・ゆうき)
6歳でゴルフを始め、2011年国内男子では史上最年少(当時)の16歳でプロテスト合格。14年初のシード権を獲得すると、18年「日本オープン」でツアー初優勝。フェアウェイキープ率は15年から5年連続で1位を継続中。身長169センチ、血液型A。