2021/02/24

XXIO製品情報

《飛ばしのカギは反発性能アップと“つかまり”のよさ》進化を遂げたNEW『ゼクシオ プライム』

解説:杉本靖司(すぎもと・やすし)
住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ外注技術グループ
1993年入社。以来、一貫してゴルフクラブの開発に従事し、「ゼクシオ」「ゼクシオプライム」は初代から最新モデルまで、主にヘッドの開発を担当。

「ゼクシオ」のレギュラーモデルと同じく、今回が11代目のモデルとなるNEW『ゼクシオ プライム』(以下、NEWプライム)。そもそもプライムは、どんなゴルファーをユーザーとして想定して開発してきたのかを確認しておこう。
「以前にくらべ、体力もヘッドスピードも落ちてきて、身体もスムーズに回らなくなってきた……というゴルファーのみなさんがメインで、ドライバーのヘッドスピードでいうと、34m/s前後を想定しました」(杉本)
 そんなゴルファーがいちばん欲しいのは、もちろん飛距離。ビッグドライブを実現するには、まずボール初速を上げることが不可欠だ。そして、ボール初速を上げるには、ヘッドの反発性能を高める必要がある。そのために新たに搭載したのが、ゼクシオイレブンで新たに開発された「フラットカップフェース構造」と、スリクソンZXシリーズにも採用された「リバウンドフレーム」である。
「まず、カップフェースは、1枚の板を曲げたような形状なので強度を高くでき、肉厚を薄くできます。つまり、大きくたわむので、全体の反発性能が上がります。また、その一部であるリーディングエッジ剛性を高めたことで、すぐ後ろのフェースの折り返し部を薄くでき、ここも大きくたわみます。そのたわみを、リブなどで剛性を高めたソールが受け止める。この“軟・剛・軟・剛”という構造のリバウンドフレームにより、反発性能をより高めることができました」
 フラットカップフェースとリバウンドフレーム。この2つの技術の融合により、NEWプライムの高反発エリアは前モデル比で、なんと231%に広がった。
「NEWプライムがターゲットとするゴルファーは、どうしても打点がトゥ、ヒール方向にバラつきますから、スイートエリアをどれだけ広くできるかも重要でした。今回、2つの技術をどう組み合わせるかについては苦心しましたが、当初想定していたよりも広くできたな、というのが正直なところです(笑)。モデルチェンジでここまで大きく数値が改善するケースはなかなかないですから」
 フラットカップフェースは、フェアウェイウッドとハイブリッドにも搭載。フェース全面の反発性能アップ、ひいてはボール初速のアップに貢献している。

 飛距離不足と並んで、ヘッドスピードが遅めのゴルファーの悩みのタネが「スライス」。杉本いわく、NEWプライムの想定ユーザーの8~9割までがスライス回転のボールを打つという。その最大の原因が「体の回りにくさ」だ。
「バックスイングで肩が十分に入らないと、ダウンスイングがアウトサイドイン軌道になってしまいます。すると、フェースが開いたままインパクトを迎えるためにボールにスライス回転がかかり、ショットが曲がるだけでなく、飛距離のロスにもつながります。そのためスライス回転を抑え、少しでもドロー回転に近づけるために“つかまり”をよくすることは、NEWプライムの開発では特に重視した点です」(杉本)
 つかまりをよくするために、新たに開発しNEWプライムに採用されたのが、左右非対称の「ドローバイアスバルジ設計」フェースだ。
「分かりやすくいうと、これまでの丸い形から、トゥ側だけを少しフラットにしています。それにより、右に飛び出したボールは、ギア効果(※)によってセンター方向に戻ってきます。一方、ヒール側は、前モデルよりフェース面のラウンドを強くすることでギア効果を小さくし、左に飛びやすくしています。つまり、トゥとヒールのバルジの値を変えることで、トゥ寄りでヒットしたボールにはよりドロー回転がかかり、ヒール側で打ったボールは、スライス回転が少なくなるのです」
 さらに、つかまりをよくし、ドロー回転がかかりよくするための工夫がもうひとつ。前モデルにくらべ、わずか1ミリだがグースをつけたのだ。これにより、打ち出す方向が確実に変わった。
「1ミリのグースというのは、アイアンでは非常に大きな違いで、ウッドでもかなり効果があります。その結果、曲がり幅がわずか数ヤードの違いであっても、スライスが原因でOBになってしまっていたショットが何とか耐えてくれる。あるいは、ラフに入ったかなという当たりが、フェアウェイをキープできる。曲がり幅が小さくなることが、結果の大きな違いになって現れます。特にプレーし慣れたホームコースでは、その違いが分かるはずです」
 新開発のこのフェースもまた、フェアウェイウッドとハイブリッドに採用され、前モデルにくらべ、フェアウェイウッド(#3)、ハイブリッド(#5)ともに2.2ヤードの飛距離アップに成功している。
(※)ヘッドのトゥ寄りでボールをヒットすると、その衝撃でクラブフェースが開き、その反作用でボールに左向き(フック)の回転がかかる現象。ヒール寄りでヒットした場合には右(スライス)回転がかかる。

 アイアンも、NEWプライムはたしかな進化を遂げている。ゼクシオ イレブンにも採用された「ツイングルーブ」を搭載したことで、反発性能がアップしたのだ。
「ともに地面に近い部分ですが、まず、フェースのすぐ裏側に細い溝を、そしてフェースを受けるボディの後ろに、深く、幅の広い溝を設けました。後者によってボディのソールの一部を薄く設計できるのでボディもたわみ、大きな反発性能を生み出します」
 ヘッドスピードの遅いゴルファーの場合、アイアンは上から打ち込むのではなく、横からの払い打ちになる。その分、いわゆる“下打ち”になることも多いが、NEWプライムは、2本の溝の効果で、フェースが下部までしっかりたわみ、ボールを遠くまで運んでくれるのだ。
 さらに今回、ソールを改良し、「段差ソール」という新たな形状を採用した。従来、プライムでは、ボールを上がりやすくするために、できるだけ重心を低くしようとソールを幅広く設計してきた。ただ、幅が広いと、どうしても抜けが悪くなるという弊害も出てくる。
「そこでNEWプライムでは、ソールの形状について、いくつか試作し、テストをしました。その結果、ヒール寄りが引っかかりやすいことが分かったため、ソール後方のヒール寄りの部分を削りました。それにより、抜けはかなり向上しています」
 ゴルファー(ドライバーのヘッドスピード35m/s相当)による新旧アイアンの実打テストの結果を見ると、NEWプライムは平均で1.2ヤード飛距離が伸びたことに加え、打球分布を示す楕円も左方向に移動している。これは、アイアンでも、つかまりがよくなったことを意味する。
「ドライバーからフェアウェイウッド、ハイブリッド、アイアンまで、NEWプライムは“ハイドローの弾道”を理想として開発しました。そのため、“つかまりをよく”というのは、反発性能アップと並んでNEWプライムの“肝と言えます。つかまりは、前モデルにくらべ明らかに進化したことがテストで分かっているので、ぜひ、NEWプライムでハイドローの弾道を味わってほしいと思います」(杉本)

■NEW『ゼクシオ プライム』のスペックはこちらをご覧ください。
https://sports.dunlop.co.jp/golf/xxio/prime2021/