2021/12/14

D-Cafeレポート

《桂川 有人プロ スペシャルインタビュー》海外修行で身につけた技と自信。来年は、レギュラーツアーで1試合でも早く結果を出したい

D-cafe:まずは、今年10月のAbemaTVツアー「石川遼 everyone PROJECT Challenge」(10月第2週)でのプロ初優勝、おめでとうございました!
桂川 有人プロ(以下、桂川)ありがとうございます(笑)。

D-cafe:あの試合では、2日目に単独トップに立つと、最終ラウンドは5アンダー「67」で回り、2位に3打差をつける快勝でした。会心のプレーだったのではないですか?
桂川いえ、それがそうでもないんです(苦笑)。短いパットをいくつも外していたので、同じ組の選手も、僕がそんなにいいスコアで回っているとは思っていなくて。2日目の終盤にスコアボードを見た時も、「メッチャ伸ばしてる人がいる!」とか言うので、「それ、自分のことなんだけどなぁ」と思って(笑)。

D-cafe:そうでしたか(笑)。でも、初優勝はどんな気分でした?
桂川あの試合では、たまたまショットの調子がよかったのですが、去年からずっとショットが不調だったんです。だから、しばらく優勝はできないかもと思っていたので、勝ててホッとしました。やっぱり結果がすべてですから。

D-cafe:そして、あの試合の翌週の「日本オープン」では、3日目に6アンダー「65」という好スコアをマークしましたね(注:最終順位は23位タイ)。
桂川はい。あの日は、ショットもパットもよかったです。ただ、去年から、毎試合どちらかと言えば不安のほうが大きくて、「プレーしてみたら、意外と大丈夫だった」という感じなんです(苦笑)。

D-cafe:どんな点が不安なのでしょう?
桂川元々ショートゲームはちょっと苦手で、昔から不安なんですけど、ショットにはかなり自信があったんです。だからアマチュアの時には、「パットさえ決まれば優勝できる」という気持ちでプレーしていたのですが、去年ぐらいからショットがおかしくなってきてしまって……。ただ、一時にくらべればだいぶよくなってきたので、さらにもう少しよくなってくれば、ショートゲームに集中できるようになると思います。

D-cafe:ショートゲームが苦手とのことですが、ダンロップのスタッフによると、同じスリクソン契約の星野陸也プロが「桂川くんは小技が上手い」と言っているそうですよ。
桂川本当ですか⁉ それは初めて聞きました(笑)。

D-cafe:(笑)。星野プロとは仲がいいとも聞きましたが。
桂川僕から仲良しと言っていいのかわかりませんけど(笑)、お互い日大出身なので、僕がツアーに出始めた時に会場でご挨拶しました。その後、練習場でたまたま打席が隣同士になったりして、そこから一応仲良くさせてもらっている感じですかね。

D-cafe:ご自分のゴルフの持ち味、強みは何だと思いますか?
桂川何ですかねぇ……(と言って、しばらく考え込む)。やっぱりアイアンショットだと思います。好不調の波がそんなに大きくないのも、ショットメーカーだからかもしれないです。

D-cafe:飛距離についてはいかがですか? 今年はレギュラーツアーでの出場試合は少なかったものの、ドライビングディスタンスは291.41ヤードでした。
桂川自分でいちばん飛んでいたと思うのは、中学2年生の頃で、もう270ヤードぐらいは出ていました。僕は元々体を動かすのが好きで、ゴルフ以外にもサッカーとかバレーボールをやっていたこともあって、細身の割には飛んでいたんです。よくわかりませんが、たぶん〝バネ〟で飛ばしてるんですかね? その後はあまり飛距離が伸びなかったのですが(苦笑)。

D-cafe:桂川プロのスイングを見ると、あまり強く振っている感じがしませんよね。
桂川それは、いろいろな人から言われます。先日も、プロコーチで、日大ゴルフ部のコーチをしている内藤雄士さんから、「持ち球がフェードで、それだけゆったり振って、この飛距離はちょっとおかしい」と言われました(笑)。ツアーにはもっと飛ぶ選手はたくさんいるので、たぶん球筋やスイングからしたら飛んでいる、ということだと思いますけど。

D-cafe:先ほど他のスポーツの話が出ましたが、ゴルフはどんなふうにプレーしてきたのですか?
桂川おじいちゃんが昔はシングルプレーヤーで、聞いた話では、僕の子守りを任されたおじいちゃんが、自分で練習したくて、僕を一緒に練習場に連れていったそうです (笑)。それで僕も4歳頃に始めたのですが、ゴルフに関して記憶があるのは、コースデビューした小学2年生ぐらいからですね。コースに行くのが本当に楽しみでした。

D-cafe:すると、子どもの頃から頻繁にラウンドしていたのですか?
桂川いえ。ラウンドもおじいちゃんと一緒だったのですが、おじいちゃんは普通のサラリーマンだったので、最初は月イチぐらいのペースでした。練習場に行くのも土日だけで、平日はサッカーやバレーボールをやっていました。

D-cafe:そうなんですね。すると、プロゴルファーになりたいと思うようになったのはいつ頃なのですか?
桂川小学3年生の頃ですね。ちょうど石川遼さんがツアーでプレーし始めた時期で、遼さんを見て「やっぱり凄いな。カッコいいな」と思って、プロになりたいと思いました。でも、毎日は練習に行けないし、プロはただの憧れで、目指すという感じではなかったですね。プロにはなれないだろうなと思いながらも、夢は持っていたというか。

D-cafe:それが、中学卒業後にフィリピンに渡ったことで、プロへの道が開けたと。
桂川はい。僕が通っていた地元の練習場のお客さんに、フィリピンで会社を経営している方がいて、たまたま僕が練習しているのを見て声かけてくださって。いろいろ話をするうちに、「フィリピンにこんなコースがあるよ」と言うので、一度現地に行きました。そこで知り合った方たちと話をして、ある方にお世話になることになりました。はっきりプロになろうと決めたのは、フィリピンに行く時ですね。

D-cafe:それで、単身でフィリピンに行かれたと。現地での練習環境は?
桂川家がコースの敷地内にあったので、本当に一日中ゴルフをしていました。通信制の高校には入りましたが、たぶんプロかそれ以上に練習していたと思います(笑)。特に土日は朝から夕方までずっとラウンドや練習をしていました。あの3年間で一気に伸びた気がします。

D-cafe:フィリピン時代には、アジアンツアーの下部ツアーにも出場したそうですね。海外でそのままプロ転向しようという考えはなかったのですか?
桂川実は最初はそう考えたのですが、身体がまだ小さかったですし、体力面でも不安がありました。それに、お世話になった方からも、「日本の大学でやってもいいんじゃないか」と言われまして。日本に戻れば、いろいろ勉強もできるなと思って、日大に進むことにしました。

D-cafe:その日大在学中には、ほとんどのアマチュアタイトルを獲得しましたね。
桂川やはりフィリピンでの経験が大きかったと思います。プロの選手とラウンドするのに慣れていたし、高いレベルでずっとプレーしていたから、アマチュアの大きな大会に勝てたのかもしれません。そういう意味では、フィリピンでは本当にいい環境を与えてもらったと思っています。

D-cafe:先ほどの話にも出ましたが、今は一時の不調から抜け出しつつあるのでしょうか?
桂川はい。クラブに関しても、いろいろサポートしていただいて、ショットはだいぶ落ち着いてきました。ただ、自分の中では、高校時代のよかった時とくらべたら、まだ本調子ではないし、もっといいプレーができるはずだと思っています。

D-cafe:今年はAbemaTVツアーが主戦場でしたが、レギュラーツアーでも8試合に出場して、すべて予選を通過しました(注:賞金ランキング87位)。来年はレギュラーツアーの前半戦に出場できます。どんな目標を持っていますか?
桂川やっぱりレギュラーツアーでも優勝したいです。試合数は限られているけれど、そのほうがかえって集中できるというか、後がないので、目の前の試合で勝つだけです。焦っているわけではありませんが、一試合でも早く結果を出したいなと。

D-cafe:プロゴルファーとして、将来の目標はなんでしょう?
桂川やっぱり海外にも挑戦してみたいですね。せっかく海外でプレーしていたし、縁があるというか、海外で応援してくださっている方もいると思うので、国内で結果を出して、海外の試合にも出られる選手にはなりたいなと思います。

D-cafe:もしも海外ツアーに参戦するとしたら、やはりアジアからでしょうか?
桂川僕も最初はそう思っていたのですが、大学に行って、その分、年を取ったので(笑)、ここまで来たら、いきなりいちばん上、つまりアメリカに行きたいなと。ヨーロッパもチャンスがあれば行きたいのですが、同じ海外でゴルフをするなら、アメリカでプレーできればいいなと思っています。

D-cafe:夢は大きく膨らみますね。今後の活躍に期待しています。今日はありがとうございました。

桂川 有人(かつらがわ・ゆうと)
1998年愛知県生まれ。中学卒業後、フィリピンに渡り、通信制高校で学びながらゴルフ修行。帰国後、日大に進学すると、「朝日杯」「文部科学大臣杯」「日本学生」「日本オープン ローアマ」「ネイバーズトロフィー」(団体、個人)など数々のビッグタイトルを獲得。2020年10月プロ転向。2021年AbemaTVツアーでプロ初優勝。同ツアーの賞金ランキング3位に入り、2022年前半戦のレギュラーツアーの出場権を獲得。身長167センチ、70キロ。血液型B。