XXIO SQUARE(以下、XS):まずは、今回のシーズンオフのトレーニングの様子についておしえていただけますか?
青木 瀬令奈プロ(以下、青木):はい。実は、トレーニングは昨年の最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」の最終日の翌々日から始めました。最終戦の表彰式で出場選手全員が集まった時に、「ああ、この気持ちのまま開幕戦を迎えよう」と思ったんです。オフを作らずに、ずっとオンの気持ちでいたいなと。それで、トレーナーさんのところに2~3日に一度通ってトレーニングを始めたのですが、自分の身体を調べることにも力を入れました。
XS:身体を調べるというのは、たとえばどんなことを?
青木:まず、スイングのインパクトの瞬間にどれくらい足で地面を踏み込めているかを調べてもらいました。私のスイングだと、横方向に力を使っていると思っていたのですが、データを取ってみると、意外と強く踏めていることが分かりました。私の今のヘッドスピードは38~39m/sで、ミート率は最高レベルと言ってもいいくらい高いので、これ以上効率よく飛ばすのは難しいんです。なので、今のスイングの感覚のまま、さらに安定性と飛距離を求めるなら、踏む力を強くしてボールに伝わる力を大きくしようと考えて、ジャンプしたり、バイクを漕いだりというトレーニングをしました。瞬発力を持続させるようなイメージで、おかげで踏み込む力がさらに強くなりました。
XS:身体に関して、他にも調べたことがあるのでしょうか?
青木:はい。トレーニングをした翌日にゴルフをしてみて、身体のどこに筋肉痛が出るとプレーしづらくなるか、あるいは問題なくプレーできるのかを調べました。1月に沖縄で2週間、2月中旬にハワイで1週間それぞれ合宿をしたのですが、日によってメインで鍛える箇所を体幹、下半身、腕と変えてみました。腕を鍛えた翌日のゴルフはボロボロだったのですが(苦笑)、腹筋とか体幹に筋肉痛がある分には、張りを感じることで逆に意識がそこに生まれるのですごくよかったんです。そこから、「試合の前日まではこういうトレーニングをして、ゴルフに影響があるところは月曜日だけ鍛えよう」とか、「己を知る」ではないですけど、シーズン中にもトレーニングをするためのデータ取りをかなりやりましたね。
XS:そうしたトレーニングの効果は感じているのでしょうか?
青木:まだ1、2ヵ月なので、実感できる部分は少ないのですが、クラブを振るスピードは肉眼で見ても速くなっていますね。まだ打点のバラつきはあるけれど、シーズンが始まると強く振れなくなってくるので、オフの間はドライバーを常に120%の力で振ることに徹して、最大値を引き上げるイメージでやっていました。その後、2月中旬ぐらいから、形を意識しながら練習しています。それは、たとえばトップが大きくなり過ぎないようにとか、ヒザが流れないようにとか、大西翔太コーチからシーズン中にも言われていることで、そういうことは120%の力で振る中で取り組むのは難しいですからね。
これまでは、筋肉痛というと、あまりゴルフによくないと思っていたのですが、私もつい最近30歳になって、十代や二十代前半の頃とくらべて疲労が抜けにくくなったり、身体が変化してきているのを感じています。それで筋力を維持するには、オフだけでは難しい部分もあるし、私としては、安定性を求めてやった結果、そのオマケで飛距離がちょっとでも伸びてくれたらいいな、というぐらいの気持ちでトレーニングしているんです。
XS:何が課題だと感じているのでしょう?
青木:よくなったスタッツもあるのですが、元々得意なスタッツが悪かったんです。それはパー3の平均スコアで、2019年は3位だったのが、去年は33位に下がってしまって……。本来なら、そこが私の強みで、それがよければ後半戦ももう一回ぐらい勝てたかもしれないという思いがあります。去年の最終戦の時なんか、7月に優勝したとは思えなくて、「もう1年以上優勝してないんじゃないかな」というぐらい、全然ダメだなと感じていました(苦笑)。
XS:でも、リカバリー率もサンドセーブ率も大きくランクアップしましたし、1ラウンドあたりの平均パット数は2シーズン連続で1位でした。
青木:たしかに、1ラウンドあたりの平均パット数は全ホールのパット数が反映されるし、ショートゲームがよかった証でもあるので、そこはよかったと思います。でも、やっぱり後半の4ヵ月はすごく取りこぼした印象があります(苦笑)。バンカーショットもそうですけど、「もっとできたはず」という思いがあって、悔しい気持ちのほうが強いですね。先ほど最終戦の表彰式の時の気持ちの話をしましたが、もっと詳しく言うと、「今の悔しい気持ちを忘れずに、甘さを捨てて来年の開幕戦を迎えるんだ」という気持ちでした。
XS:なかなかご自分への評価が厳しいですね。とはいえ、青木プロのゴルフは、年々レベルアップというか、総合力が上がっていると感じます。
青木:そうですね。ゴルフに対する姿勢や向き合い方は、年々アスリートになってきているというか、私自身、「去年より今年のほうがゴルフが好き」と思えるような歳の重ね方ができている感じはあります。だからこそ成績がキャリアハイだったり、7年連続でシード権が獲れたりといったことにつながっているのかなと思います。
XS:今シーズンの道具についてお聞きしますが、ドライバーは『ゼクシオ エックス』ですよね。あらためて、どんなところに魅力を感じていますか?
青木:やっぱり〝やさしさ〟ですね。それは、打ちやすさでもあり、ミスがミスにならないやさしさでもあります。それと、これは余談なんですけど、私はダンロップの契約プロなので、アマチュアの方から、スリクソンのクラブのことも聞かれるんです。そんな時に、「打ったことがないので分からないんです」と言うのは心苦しいので(笑)、新しいモデルが出ると一度は試打させてもらっています。今度の新しいスリクソンのモデルも、打ってみていいクラブだとは思いましたが、その後に「ゼクシオ エックス」を打ってみて、やっぱりやさしいなと感じました。なんだかホッとしたというか(笑)。女子ツアーは毎週試合がありますし、秋口とか、疲れが出てきた頃にメジャーが続いて、四日間競技も増えてしんどいなという時でも、「ゼクシオ エックス」はいつも芯に当たってくれます。そういう安心感はゼクシオならではですね。
XS:ボールについてはいかがですか? 『スリクソン Z-STAR シリーズ』がモデルチェンジしましたが。
青木:新しい『スリクソン Z-STAR XV』を使います。昨シーズン中に一度試して、このオフに本格的に試させてもらったのですが、打ってみて、初速がかなり速いなと感じました。特にそう感じたのがハイブリッドで打った時で、沖縄合宿で打ってみて、今までと全然初速が違うのでびっくりしました。
私がずっと「XV」を使っている一番の理由は、ショットゲームで、しっかりした打感が手にダイレクトに伝わってくるのが好きだからなのですが、長いショットで「おっ」っと思うくらい、前のモデルとの違いを感じたのは今回が初めてかも。新しいクラブに替えて初速の違いを感じることはあるけれど、ボールだけ替えてそう感じることってそうはないと思うので。沖縄で打ってみて、風にも強そうな感じがしました。
XS:そして、今年もいよいよ沖縄での「ダイキンオーキッドレディス」で女子ツアーが開幕します。
青木:はい。今年は序盤戦から優勝争いをして、1試合でも早く優勝したいので、「早く始まってほしい」という気持ちでオフを過ごしてきました。「開幕はまだか」みたいな(笑)。沖縄で合宿をしたのは開幕戦のためでもあるし、毎年沖縄の高麗芝にやられているので(苦笑)、芝質に対応できるようにするのも合宿のテーマでした。試合会場の琉球ゴルフ倶楽部をプレーする機会も何度かあったので、いくつかパターを持って行って、どれが合うのか試してみました。打ち方は変えずに、パターで球の転がりを変えて対応しようかと。
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