DGW: それは今後がますます楽しみですね。「日本アマ」の前に、その前週に開催された「トヨタジュニアゴルフワールドカップ」(以下、トヨタジュニア)についてお聞きします。個人戦で優勝されたそうですが、ゴルフの内容もよかったのでしょうか?
松山:そうですね。練習日から本当に調子がよくて、始まる前から優勝する気持ちでいました。本番でもいいゴルフができて、いいスコアで優勝できた(※計54ホールで通算14アンダーをマーク)ことで自信がついて、いい流れのまま日本アマに行けたかなと思います。
DGW: トヨタジュニアで特によかったところは?
松山:もう全部よかったです。ティショットもよかったし、アイアンも常にピンを刺していました。パットも、長い距離が何度も入りましたし、「絶対決めたい」というパットも取りこぼさず、入れることができました。3日間とも会心のゴルフができたと思います。
DGW: よい流れで「日本アマ」を迎えて、「優勝できるとしたら今かな」という手応えがあったそうですね。
松山:はい。(開催コースの)廣野ゴルフ倶楽部は、本当に難しいコースで、いいスコアは出ないだろうと思っていました。でも、トヨタジュニアに続いてあの週も調子がよかったので、「大きなミスさえしなければ、今の自分ならイケるかも」と思っていました。
DGW: そして、初日を終えて9位タイにつけて、2日目に3位タイ、3日目に首位タイと順位を上げていきました。プレー内容もだんだんよくなっていったのでしょうか。
松山:はい。初日に「68」を出せたことで、安心できたというか、自分がいい状態をキープできているのが分かりました。それで自信がついて、2日目、3日目といいゴルフにつなげられたかなと思います。
DGW: そして、2ホール目でパーパットを決めて優勝しました。あのパットについて振り返ってもらえますか。
松山:最初のホールで自分もバーディーを獲ったことで、気持ちが落ち着きましたし、あの日も調子がいいのが自分で分かりました。2ホール目は、山下さんが先にパーパットを外したのですが、もし自分がパーパットを外しても、絶対にまたチャンスが来るし、勝てる自信がありました。だから、2m弱のパットでしたが、落ち着いて、決めることに集中して打てました。
DGW: 優勝が決まった瞬間、キャディーをされていたお父さんと抱き合っていましたね。あの時はどんな気持ちだったのですか?
松山:本当のことを言うと、もし勝てたらガッツポーズしようと思っていたんです(笑)。でも、優勝が決まった時は、嬉しいというよりホッとする気持ちでした。プレー中はずっと震えていたので、「あー、終わった!」という、安心感というか開放感がありました。
DGW: 日本一のタイトルを最年少で獲得したことについてはどう感じていますか?
松山:日本アマで優勝したという喜びはあるし、優勝した実感も満足感もあります。でも、最年少記録を塗り替えたということに関しては、特別な感覚はなかったです。
DGW: 去年の「日本アマ」は、初出場で29位タイという成績でした。中学3年生で予選を通過したのもすばらしいと思いますが、この1年の間にご自身で成長したとか、上手くなったという実感はありますか?
松山:1年前からずっと成長してきたとは思いますけど、特に高校に入ってからの数カ月間で、ゴルフの内容がかなりよくなってきました。そのゴルフを前週のトヨタジュニアでも発揮できて自信がついたので、そこでさらに成長というか、ゴルフがよくなったと思います。
DGW: 高校に入学してから変わったのは、練習やトレーニングの方法ですか?
松山:練習方法というより、寮で同じゴルフ部の先輩や同級生と生活するようになって、ゴルフに向き合う時間が本当に増えたのと、ラウンド回数が増えたのが大きいのかなと思います。より実践する場が増えたと思います。
DGW: ゴルフを始めてラウンドもすぐにしたのですか?
松山:いえ、初めてコースに出たのは小学1年の終わりぐらいです。僕はずっとコースを回ってみたかったんですけど、父が「まだ周りの人に迷惑をかけるレベルだし、そんなレベルでコースに出ても意味がない」と。それで、3~4年はずっと練習場でボールを打っていました。
DGW: コースに出るまでかなり長く練習したのですね。競技に初めて出たのはいつですか?
松山:小学2年の冬です。小学1年で初めてコースに出て、その後はまたしばらく練習場で練習するだけでした。それで、試合に出ることが決まって、その会場になるコースで、小学2年の夏頃から月に1度ぐらいプレーするようになりました。
DGW: 競技は、最初に出た時からか面白いと感じたのでしょうか?
松山:はい。試合にはずっと出たかったので、最初から楽しめました。予選を通過できたこともありますが、本当に試合で出られて嬉しかったし、プレーしていて楽しかったです。
DGW: たしかに飛びますね(笑)。ただ、聞くところによると、一時期試合でドライバーを使わない時期があったのだとか。
松山:(苦笑しながら)それは、2年前のジュニアの大会のことだと思います。中学生の試合だと、距離が短い上に、ティーイングエリアが前に出ると、ティショットの落下地点が余計狭くなったりするんです。だから、その時はほとんどドライバーを持たなかったです。
DGW: つまり、それはコースマネジメントということですね?
松山:はい。ドライバーに自信がないということじゃないです(笑)。特に最近は、ビビらず、悪いことも考えずに、本当にいい流れと精神状態でドライバーを振れていると思います。
DGW: そして、ドライバーの下はウッドではなく、ユーティリティアイアンの#2をバッグに入れているそうですね。どれくらい飛ぶのですか?
松山:ティショットだと260ヤードくらいです。夏場だと、270ヤードくらい飛ぶこともあります。
DGW: すごい飛距離ですね。やはりロングアイアンも自信があるクラブですか?
松山:はい。ドライバーで行くかどうか迷ったホールは基本的に#2アイアンで打ちます。自信を持って打てるし、このクラブがなければ日本アマで優勝することもできなかったと思います。それくらい、自分の中ではクラブセッティングのキーになるクラブです。
DGW: 一方で、もっと磨かないといけないと感じている部分はありますか?
松山:やっぱりコースマネジメントですかね。それとウエッジの距離感も。ウエッジは、以前はかなりひどくて、だいぶよくはなってきたんですけど(苦笑)、まだスピン量が安定していなくて……。狙った距離が打てても、スピン量がバラついてタテ距離が合わなくなってくるので、そこが課題ですね。
DGW: スリクソンの道具についてお聞きしたいのですが、まずボールから使い始めたそうですね。
松山:はい。モニターになる前の小学4年の終わり頃から使っているので、もうかなり長く使っています。ボールはずっと『スリクソン Z-STAR XV』です。同じシリーズの中では、いちばん高い球が出る感じがするのと、打っていて気持ちがいいので、いちばん自分に合っている気がします。
DGW: その後、中学生になってからクラブもスリクソンに替えたそうですが、現在使っている『スリクソン ZX7 Mk II ドライバー』はどんなところが気に入っていますか?
松山:いちばんは打感です。僕は打感が硬いのが嫌なのですが、スリクソンのドライバーは、インパクトしてボールを押し込む感じがあるので好きで、本当に自分に合っているなと思います。
DGW: 〝スリクソン〟〝松山〟と言えば、世界のトップレベルで活躍する松山 英樹プロがいます。まだ会ったことはないですよね?
松山:いえ、実はあります(笑)。中学2年の時に東京で松山さんがジュニアレッスン会を開くことになって、その抽選に当たったので、レッスン会でお会いしました。
DGW: そうなんですか? すると、そこでレッスン受けたのですね。
松山:はい。練習場で、自分の好きな番手を選んでスイングを見てもらうというイベントだったのですが、僕は、レッスンを受けるというより、自分のスイングを見せつけるつもりで行きました(笑)。
DGW: ご自身はまだ高校1年生で、高校生活はこれから2年以上あります。今後、高校を卒業するまでの目標はありますか?
松山:はい。まず今年の「日本ジュニア」(8月14~16日)で優勝することです。そして、レギュラーツアーにも推薦で何試合か出場できると思うので、高校生のうちに上位に入って、できればなんですけど、レギュラーツアーでアマチュア優勝してプロになるというのが一番の目標です。
DGW: 大きな目標ですね。プロになった後の目標もすでにあるのでしょうか?
松山:プロになったら、できるだけ早く賞金王を獲って、すぐに海外でプレーしたいなと思います。
DGW: 海外というと、やっぱりアメリカですか?
松山:はい。メジャーにも出てみたいですし、アメリカツアーで優勝できる選手になりたいです。
松山 茉生(まつやま・まお)
2008年愛知県生まれ。5歳でクラブを握り、小学2年で競技会に初出場。2020年の「全国小学生ゴルフ春季大会」(スポーツニッポン新聞社主催)で優勝したほか、「中部ジュニアゴルフ選手権」では、2022年から今年度まで3連覇を達成。23年の「日本ジュニアゴルフ選手権競技 男子12歳~14歳の部」では自己最高の2位タイに入賞。そして、昨年に続き2度目の本選出場を果たした今年の「日本アマ」で、史上最年少の15歳344日で初優勝を飾った。身長182cm、体重88kg、血液型A。福井工業大学附属福井高等学校在学中。