「根幹にあるコンセプトは、契約プロであるかどうかにかかわらず、プロがこぞって使いたくなるクラブにする、というものでした。つまり、プロに認められる〝性能〟と〝感性〟にこだわった製品であり、それはスリクソンとして踏襲してきたことです。それに加え、私自身の思いとして、ウッド、特にドライバーでは、飛ぶことが何よりも重要であり、ユーザーがいちばんワクワクするポイントでもあると考えて企画しました。飛びにフォーカスしたくて、〝RKT(ロケット)〟をコンセプトに加えました」
『スリクソン ZXi RKT シリーズ』ドライバー(以下、『RKT シリーズ』ドライバー)について、商品企画を担当した大倉 侑樹は語る。さらに大倉は、ここで言う〝プロ〟について次のように定義する。
「PGAツアーで戦うプレーヤーです。これまでも松山 英樹プロをはじめ、PGAツアーでスリクソンのドライバーを使用してきたプロはいますが、その数は決して多いとは言えませんでした。その流れをどうにか変えようというのが関係者の共通認識でした」
より多くのPGAツアーのプロに使ってもらうドライバーを開発するために、ダンロップはある決断を下す。彼らからの質の高いフィードバックをより多く得るために、アメリカでのモノづくりの拠点であるRoger Cleveland Golf Company, Inc.(以下、CG社)の開発部門の中にPGAツアー専属の開発チームを新設したのだ。詳しくは後述するが、この新組織を作った結果、PGAツアーのプロを対象にしたテスト回数も、作成したプロトタイプも、スリクソンの歴代ドライバーとしては史上最多となった。
「PGAツアーで通用するための性能を確認する機会が一気に増えて、PDCAを高速で回せるようになったのは、新しい開発体制のメリットだと思います。それと、ダンロップとして、アメリカ市場での伸びしろはかなり大きいと見ていて、そこでしっかりシェアを伸ばすには、市場によりフィットした商品を作るべきだという方針もありました」(大倉)
これまでにもCG社には、ウエッジやパターを手がける商品開発チームや、PGAツアーに対応する現地のツアーチームは存在した。また、日本から日本人スタッフが赴任していたものの、彼らの仕事は特定のプロへの専属対応や開発管理業務が中心だった。
それを『RKT シリーズ』ドライバーの開発では、彼らも現地の開発スタッフとして名を連ねた。つまり、本格的な日米混成チームによるクラブ開発は今回が初めての試みであり、そこが従来の開発体制との大きな違いだという。
それについて日本で開発に携わった福泉 惇は言う。
「開発の主幹を担ったのは日本のチームですが、PGAツアープロの要求を汲み上げて、製品にフィードバックをしたのはアメリカのチームです。そのため今回のモデルには、今まで以上にアメリカの開発チームの意見が反映されています。最終的にこれらの要素を練り上げてバランスのよい製品に仕上げるのは日本の役割ですが、日米どちらかの考えや価値観に偏ることなくミックスできたのはお互いにメリットがあると思います」
そんな新たな開発体制から生まれた『RKT シリーズ』ドライバー。その特長について、データなどに現れる「性能」と、プロがこだわる「感性」に関わる要素に分けて見ていくことにしたい。
6月下旬に『スリクソン ZXi RKT シリーズ』ドライバーを実戦投入し、3試合目の「全英オープンゴルフ選手権」で勝利を手にしたライアン・フォックス。
まずは、『RKT シリーズ』ドライバーの〝性能〟について。大倉たち商品企画チームが開発チームに第一に求めたのは、先述した〝飛び〟だった。
「ドライバーに飛びを求めるのはプロもアマチュアも同じなので、『他社を上回る飛距離性能は絶対に確保してほしい』とお願いしました。次に、これは毎回お願いしていることですが、我々が〝ヒーローテック〟と呼ぶ、ユーザーの目に留まるような新たなテクノロジーを搭載してほしいと」(大倉)
結果から言うと、通称スタンダードモデルの『ZXi RKT』、スピンを抑えた『ZXi RKT LS』、シャープな形状の『ZXi RKT TR』、寛容性を追求した『ZXi RKT MAX』という4つのモデルすべてが前作比で飛距離アップに成功。とりわけ『ZXi RKT』では、前作に比べて8.5ヤード(※)という大幅な伸びを記録した。
その要因について、福泉は2つの技術的進歩を挙げる。
「1つは初速性能が圧倒的に上がったこと、もう1つはプロが求める弾道にこだわって、弾道の質を改善できたことです。高初速・高打ち出し・低スピンという、飛んで直進性も高い弾道を手に入れたのが『RKT シリーズ』ドライバーです」
初速アップに欠かせない反発性能の向上。その実現のために、『RKT シリーズ』ドライバーでは、フェースに「ゼクシオ 14 シリーズ」で新開発したVRチタンを採用した。VRチタンは、大きくたわんでも割れない粘り強さが特長。この素材に、センターの肉厚を薄くし、周辺に厚い部分を配置することで無駄な振動を抑えてエネルギーをボールに効率よく伝えることができる「i-FLEX」設計を施した。
さらに新たな試みとして、『RKT シリーズ』ドライバー向けに改良したカーボンクラウン複合構造を採用。それにより〝軟-剛-軟-剛〟と剛性の異なる層を組み合わせた「REBOUND FRAME」構造が進化し、フェースとボディのたわみはより大きくなった。
この複合構造は、福泉が飛距離アップの2つ目の要因として挙げた「高打ち出し+低スピン」にも寄与している。クラウンを軽量化でき、それによって生じた余剰重量をソールに配分することで重心が低くなり、高打ち出しと低スピンが実現できたのだ。
さらに、高打ち出し+低スピンを生むもうひとつの要因が、福泉が「ガラリと変えました」と語るヘッド形状だ。前作に比べてヘッド全体に厚みをもたせたことに加え、フェース面自体もサイズをタテ方向に拡大した。
「プロの多くはフェースセンターか、その少し上でヒットします。それにはゴルフクラブのギア効果が関係していて、そのエリアで打つことで、より高打ち出し・低スピンの効果が得られるからです。ディープフェース化した『RKT シリーズ』ドライバーは、フェースをタテに広く使えるため、よりその効果を得やすいのです」(福泉)
ディープフェース化は、先述したアメリカのPGAツアー専属開発チームによるフィードバックを形にしたものだが、PGAツアーのプロの要望は日本のプロのそれとは異なるという。
「日本のゴルファーは、ディープフェースにはプロも含め〝難しい〟〝球が上がりにくい〟というイメージをもっているように思いますが、アメリカでは逆に“塊(かたまり)感”のあるヘッドが好まれます。その要因はいわゆるパワーゴルフにあって、ヘッドスピードの速い人が力強い球を打てるヘッドとして彼らがイメージするのは、厚みがあって、より打ちごたえのあるヘッドなのです」(福泉)
初速アップと高打ち出し+低スピン化は4つのモデルすべてで実現。その結果、すでに述べたように、いずれも前作から飛距離を伸ばすことに成功している。
『ZXi RKT』『同 LS』『同 TR』の前作とのヘッド形状・重心位置の比較。バック側のふくらみを抑えて操作性を高める一方、低重心化により低スピン化に成功した。
(※)ドライバーヘッドスピード46m/s相当。
ドライバー選びにおいてプロたちがこだわるポイント。特に〝感性〟に関わる要素の中でもプロが最も重視していると福泉ら開発チームが考えるのが打球音だ。
「打球音と打感は、最初に身体に入ってくる情報になるため、まずそれが自分の感覚と合わないと違和感があります。さらに最近では多くの要素が数値として出てくるので、音と自分の感覚、数値の3者が合わないとプロは納得しません。そうした流れはおそらくアマチュアにもできつつあるため、やはり心地よい打球音は絶対に外せない要素なのです」(福泉)
では、プロの感覚に合う打球音とは? 実は『RKT シリーズ』ドライバーがカーボンクラウンを採用したのは、それを実現するためでもあった。
「昨今のドライバーはカーボン複合モデルが主流です。市場に複合モデルが増えたことで、打球音はまずカーボンクラウンありきがトレンドになり、プロの好みもその方向に動いてきました。カーボン複合ならではの打球音は、PGAツアーでプレーする当社の契約プロからの要望でもあり、やはりカーボン複合構造を採用することが不可欠だと考えました」(福泉)
「打球音には、当然これまでもこだわってきましたし、フルチタンだった前作でもいい音が作れたと自負しています。ただ、福泉が言うように、周りがカーボン複合ばかりだと、その打球音に慣れてしまってフルチタンの音が異質に聞こえるのだと思います。私個人としては、フルチタンのほうが飛ぶのであれば、それにこだわってほしいと考えていたのですが、開発チームからは“カーボン複合でもフルチタン以上に飛ばすことができる〟という答えが返ってきたので、それなら自信をもってカーボン複合を推していこうと」(大倉)
では、カーボン複合ならではの打球音とは、具体的にはどんな音なのか。
「私たちは、打球音を〝高低〟、〝大小〟、そして残響の〝長短〟という観点で見ますが、プロが好むのは〝低めで小さくて短い音〟です。市場では〝締まった音〟と言われますが、カーボン複合には、音を小さくして残響を短くする働きがあります。そこがカーボン複合の大きなメリットです」(福泉)
このように、カーボンクラウンには、低重心化という性能と、心地よい打球音という感性の両面でプラスの作用がある。とはいえ、カーボン複合は、フルチタンと比べて本当に飛距離性能で上回るのか。
そんな疑問に対し、福泉は次のように答える。
「かつてスリクソンのドライバーではカーボン複合を採用していました。それをフルチタンに変えたのは、カーボン複合の金属とカーボンとのつなぎ目がヘッドやフェースのたわみを邪魔するのではと考えたからです。ですが、その後、REBOUND FRAME構造を研究していくうちに、カーボン複合でも最適な設計をすればヘッドをしっかりたわませながらフルチタンと同じメリットを得られることがわかりました。ボール初速をしっかり出しつつ、軽量化・低重心化する。その両立を達成できたのが『RKT シリーズ』ドライバーの最大の成果です」。
全4モデルのソール。その形状はいずれも安定感のある座りを追求してデザインしたもの。チューニングウエイトの位置も、各ターゲットユーザーの求める弾道に合わせてアレンジ。
『RKTシリーズ』ドライバーが、世界のトッププロたちの感性に合わせて実現したことがもうひとつある。それがフェースの向きであり、これもまた、PGAツアーのトレンドに沿ったものになっている。
「今から8~10年ほど前は、開き気味のヘッドでしっかり叩くのがPGAツアーのプロたちのトレンドで、海外メーカーのドライバーはそれに合わせてオープンフェースに設計されていました。その後、プレーヤーのスイングが変化した結果、近年では、スクエアに構えられるヘッドがトレンドになり、PGAツアープロたちもそれを求めるようになっています。今回あらためてアメリカでしっかり調査してみて、それがわかりました。我々が思っていたより時代は進んでいて、よりスクエアなヘッドが求められているということです」(福泉)
ただ、実際にスクエアなヘッドを作るのには試行錯誤が伴った。〝正解〟というものがないため、まず試作品を作り、プロにフェースの見え方についてヒアリングを重ねた。アドレスでヘッドをポンと置いたときに、フェースがターゲットにまっすぐ向くようにするために、フェースそのものの向きだけでなく、ソール形状やネックの角度も調整を重ねた。その過程では、新たな開発体制が生きた。
すでに述べたように、今回作成したプロトタイプは、スリクソンでは史上最多となったが、PGAツアーのニーズやフィードバックを落とし込む設計はアメリカで行ったため開発はスピーディに進んだ。また、テストも、PGAツアーのプロに加え、ローカルのプロを大勢集めて一斉にテストを行うなどした。テストの回数だけでなく、そこまで大規模なテストを行ったのも初の試みだった。
開発体制の刷新や新たな技術など、さまざまな試みによって、性能、感性ともにPGAツアーのプロを満足させることに成功した『RKT シリーズ』ドライバー。それは当然アマチュアゴルファーにも心強い味方になる。
「アマチュアのみなさんには、とにかくドライバーのロケット感、すなわち驚くような初速と直進性能を体感していただきたいですし、飛距離も、実際に打てば今までのスリクソンとの違いを感じてもらえると思います」(大倉)
「飛距離はもちろん、打感や打球音の点でも、気持ちよく打てて、もっともっと打ちたくなるドライバーに仕上がっています。開発の目標にしてきた〝PGAツアーで戦えるドライバー〟ができたという自負があるので、その性能をアマチュアのみなさんにも体感いただきたいというのが開発者としての願いです」(福泉)