2020/06/30

ダンロップメンバーズテニスメルマガ 2020 6月号

2020年8月、テニスギアの総合ブランドであるダンロップからテニス用ストリングがデビューします。ダンロップストリングは、すでに海外で販売されており、多くのプレーヤーが使用しています。今回の日本市場への参入にあたり、ダンロップは単純に海外の既存製品を発売するのではなく、日本プレーヤーの要求性能に適合するアイテムを、根本から検討して開発しました。

まずポリエステル系から4機種。使用素材・構造が一目瞭然となるようシリーズ化する方針をとり、ポリエステル系ストリングには【EXPLOSIVE = エクスプロッシブ】のシリーズ名が与えられました。同名の海外モデルもありますが、今回の4機種はすべて日本市場向けに新開発されたものです。

大きく分けて「柔らかめポリ」と「硬めポリ」の2タイプ。「柔らかめポリ」は高い弾道を描いて飛び、コートイン安全性が高い特徴があります。逆に「硬めポリ」はスピードの乗った打球が低弾道で相手コートに突き刺さり、相手から反応時間を奪うことができます。あくまで一般的な傾向ですが、スイングスピードが猛烈に速いプレーヤーが好むのが「硬めポリ」で、それほどでもないけど速いプレーヤーに選ばれるのが「柔らかめポリ」ですね。それをわかっていると、きっと選びやすくなるでしょう。

まず、最近は人気が高い「柔らかめポリ」には、オーソドックスなポリユーザーに、スピード・打球感・コントロールをバランスよく発揮できる【エクスプロッシブ・ツアー】。

そして、打球感はマイルドながら、ボールに喰いついてナチュラルなスピンを与えてくれる【エクスプロッシブ・バイト】が並びます。

ポリ系らしいしっかりした反発感が特徴の「硬めポリ」には、フラット系のスピード打球が活きる【エクスプロッシブ・スピード】と、

低弾道で飛び出しながら相手のベースライン手前でググッと落ちるエッグボール系を打つプレーヤーにさらに強さを与える【エクスプロッシブ・スピン】。ともに強烈にボールを叩くプレーヤーに向いています。

そしてナイロン系マルチフィラメントからは3機種が発売され、シリーズニックネームは【アイコニック】。ダンロップラケットは【MAX200G】以来、マイルドな打球感をブランドイメージとして進化してきました。そのマイルドさを「象徴する」という意味でマルチフィラメントシリーズは【ICONIC = アイコニック】と名付けられました。

柔らかく・喰いつき感があるというのがマルチフィラメントの個性ですが、そのマイルドさを徹底的に追求したのが【アイコニック・タッチ】。

そして打球感の柔らかさもほしいけど、それなりにスピード感も手に入れたいというプレーヤーのために、硬めのコーティングを施して、カチッとしたしっかり感とスピン性能を強調したマルチフィラメントが【アイコニック・スピード】。

両者の中間的バランスモデルが【アイコニック・オール】です。
また、ナイロン系の優しさと、爽快な瞬発感を持ち合わせたコスパ系モノフィラメントの【シンセティック・タフ】も同時発売され、計8モデルのラインナップです。

これら8機種の展開によって、基本的な性能スタイルはまんべんなくカバーされています。この中から自分に最適なものを選んでいただきたいのですが、ダンロップのホームページをぜひご覧ください。HPはこちら!
https://sports.dunlop.co.jp/tennis/products/string/

ラインナップの各アイコンをクリックすると、パッケージや構造イメージ図が表示されますが、画面を下にスクロールすると、「機能・特徴」を示すパフォーマンスマップが現われ、当該モデルがどの位置にあるかを示してくれます。これから「喰い付き感・弾き感」「柔らかな打球感・しっかりした打球感」の軸を指標にし、さらにその下の性能スペック表などを参考にして、そのモデルの性能を判断してください。

そしてもっと下へスクロールすると、テニスコートの横から見た「打球軌道イメージ」が出てきて、当該モデルの打球軌道が「点滅」して教えてくれます。実際にはこんなに極端な違いは出ませんが、あくまでイメージとして参考にしてください。

この図の見方ですが、「これを使えば、こんな打球が打てる」ということではありません。自分の打球がどの打球軌道に近いかで選ぶことで、自分の打球の個性をより明確な武器にしてほしいということです。ちなみに弾道が高いほど打球スピードはゆっくりめで、低いほどスピード感豊かな打球になります。このフィッティングツールを使って、自分のテニスに最適なダンロップストリングを、あなたの新しい武器に加えてください。

人と機械 …… 複雑なる張りの世界

テニスラケットにストリングが必要なのはみなさんが知っていることであり、そのストリングにも寿命があることもご存知でしょう。自動車のエンジンオイルと同じように、使ううちに性能は劣化し、性能寿命を迎えたオイルをいつまでも使っていると、車の性能は悪化し、エンジン自体をも傷めてしまいます。

天ぷらの揚げ油も同じですが、こちらは汚れが目に見えるから、交換時期を悟ることもできます。しかし、自動車のオイルやストリングは、使い続けていると、劣化を感じることができにくくなります。

新品に交換して、古いものとの差を感じて、初めてそのメリットを知ることができるのです。このように、世の中の道具には、交換しながら使い続けなればならないものがたくさんあります。

さらに、その「交換」のために、特殊な技術が必要なものがあります。テニスストリングの張り替えは、その最たるもので、張り替え技術にも天と地ほどの差があるものです。

張りの違いを理解しない人はよく「あれって機械が張ってくれるんじゃないの?」と言いますが、とんでもない誤解です。あの機械のことを『ストリンギングマシン』と呼びます。マシンはあくまで「工具」であり、「ストリンギングロボット」ではありません。使うのは人間であり、機械はそのための道具にすぎないのです。

ストリンギングマシンにもピンからキリまであります。ピンは、1台が100万円以上する高級マシン。その対極のキリは、10万以下の自宅用マシンです。その差は10倍以上。いったい何が違うというのでしょう? 同じように張り上がるなら、安いほうがいいじゃありませんか!

ストリンガーにもピンからキリがあり、マシンにもピンからキリがある。
キリのストリンガーがピンのマシンを使えば、素晴らしい張りができるのでしょうか?
ピンのストリンガーでも、キリのマシンでは、ひどい張りになってしまうのでしょうか?

これを語るには「いい張り上がりとは何か?」から話さなければなりませんが、それはいずれするとして、どちらの答も「NO」です。張りの技術とは、マシンの値段ではありません。でも、素晴らしい張りを求めるストリンガーならば、いいマシンを使いたがるものです。

ストリンギングの良し悪しに関わる大きな要素は「正確さ」です。安価なマシンでは、おおざっぱに張り上げることはできますが、ストリングを引っ張るテンションの正確さや安定性などへの配慮は少なく、ストリングを留める「クランプ」の爪は滑り、フレームを支えるアームの堅牢さも期待できません。

でも高額なマシンは、あらゆる作業工程に対して配慮ある設計がなされ、非常に高い精度を発揮し、またその精度を実現するためのたくさんの仕掛けが隠されています。あらゆるパーツが高精度の結果を引き出すために開発され、作業のしやすさを導く筐体デザインまで、徹底して「ストリンガーのため」に設計されるのです。

ただ、安いマシンでも、プロのストリンガーはそれなりに良い仕上がりにもっていくことはできます。マシンの劣るところを、経験と知識・技術で補うことができるからです。しかしながら、実現するためにはつねに緊張感に迫られます。高級なマシンというのは、正確な作業を効率よく進めることができるようにフォローしてくれるのです。

ストリンガーは、一日にとても多くの張りを手掛けるもので「楽に張れるよう」「効率よく張れるよう」配慮されたマシンは、非常に心強い味方となります。だから無理しても、高額なマシンを手に入れるのです。

張りの技術とは、マシンの性能とは別のところにありますが、その技術の精度を上げるために存在するのが高性能マシンです。素人がいかなる高性能マシンで張っても、プロのような素晴らしい張りにはなりません。逆に言えば、高性能マシンほど、プロとアマチュアの差をあからさまにする道具はありません。結果として残るのは、技術の差だけなのです。

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。