2020/11/30

ダンロップメンバーズテニスメルマガ 2020 11月号

住友ゴムグループの(株)ダンロップスポーツマーケティングでは、ダンロップストリングを購入すると「張り上げ代の¥500分をダンロップが負担します」というキャンペーンを実施したところ、約12,000人もの方に「初めてのダンロップストリング」をご購入いただきました。

その売上結果を集計したところ、ポリエステル系4機種、ポリアミド(ナイロン)系4機種、全8機種のうち「自分にはどれが向いてそうかな?」と、みなさんがどれを選ばれたかの結果です。

ここでまずご理解いただきたいのは、これは「使ってみたうえでの人気投票」ではなく、「最初に買っていただいた購入数順位」です。ですから「まず最初に『これを使ってみたいな』と思った順」ということをご承知おきください。

ダンロップストリングを初購入いただくときの選択要素としては「素材」「断面形状」「性能説明」「機種名からのイメージ」「価格」などあり、各要素のどれを重視するか? によって、選ばれるものが違ってくるでしょう。

まずは「素材」ですが、ポリエステル系素材の【エクスプロッシブ】シリーズか、ポリアミド(ナイロン)素材の【アイコニック】シリーズかで大きく分かれます。
購入された数の集計は、ポリエステル系4モデルの合計が「約45%」、ナイロン系モデルの合計が「約55%」で、やはりダンロップというブランドには「柔らかさ」のイメージを持たれている方が多いようです。

まず【アイコニック】シリーズの内訳ですが、いちばん柔らかい【アイコニック・タッチ】が「18%」で、【アイコニック・オール】も同じく「18%」でした。これもご購入いただいたみなさまがダンロップに対して「柔らかさ」を期待してらっしゃることや、ナイロンマルチフィラメントには「いかにもそれらしいマイルドさ」を求めてらっしゃることを読み取ることができます。

アイコニック・タッチ

アイコニック・オール

価格帯としては両モデルともダンロップマルチの中では上級価格帯であり、マルチをお求めの方は、価格よりも性能を重視される方が多いように見受けられます。「高価だから高性能」という単純なものではありませんが、「自分に必要なストリングはどんなタイプか」を大切に考えられているということだと思います。

いっぽう、マルチフィラメントでありながら、反発感やレスポンスの速さを感じさせるネーミングの【アイコニック・スピード】や、唯一のモノフィラメントである【シンセティック・タフ】も、ともに「10〜9%」と、極端に人気がないわけではありませんでした。ナイロンのマイルドさにもスピード感を期待される方や、価格的安さに魅力を感じていただいた方もいらっしゃるでしょう。「お得な価格設定」は、ダンロップストリングの特徴の一つでもありますから。

アイコニック・スピード

シンセティック・タフ

さて、ポリエステル系の【エクスプロッシブ】シリーズで明確になったのは、昨今は「多角形断面を使ってみたい」という方が多いことです。ラウンドベースに突起を配した【エクスプロッシブ・バイト】が「15%」、そして六角形断面の【エクスプロッシブ・スピン】が「14%」と、ほぼ同率の結果が示されました。

エクスプロッシブ・バイト

エクスプロッシブ・スピン

これはやはり「スピン性能」に期待されるプレーヤーがとても多いということですね。ポリエステル系ストリングは、表面も硬く、ノッチングが起こりにくいため、縦糸のスナップバックが起こりやすいのが特徴です。高速でパワフルなスイングならば、これによってスピンのかかりやすさを引き出してくれますが、トレンドとしては、さらにボールに引っかかる・喰い付くイメージのある多角形断面に期待が集まるようです。

ポリエステル系でありながらマイルド感のある【エクスプロッシブ・ツアー】は、¥2,700とちょっと高価である(ダンロップポリの中でですよ)ためか「7%」。また硬めの設定で、真っ直ぐに高速弾を打ち込むために開発された【エクスプロッシブ・スピード】は、「ポリらしいポリ」ということで「9%」のプレーヤーがこれを選ばれました。

エクスプロッシブ・ツアー

エクスプロッシブ・スピード

【エクスプロッシブ】シリーズでは「多角形:丸型」とわけて考えてしまいそうですが、ちょっと見る角度を変えると、違ったチョイスのしかたが見えてきます。それは「フィーリングとスピン」という括り方。

まずマイルドな【エクスプロッシブ・ツアー】に対して、それを多角形断面にしたのが【エクスプロッシブ・バイト】。またポリエステル系らしい高速レスポンス感の【エクスプロッシブ・スピード】に対して、もう少し打球を持ち上げてくれる【エクスプロッシブ・スピード】。こういう選び方をすると、フィーリング&レスポンスを中心に、スピン量の調整がしやすいかと思います。

最初にも触れましたが、これは「最初に選んだダンロップストリング」のランキングです。考えるべきは「次にどれを選ぶか?」ですね。打球感触なのか、打球スピードなのか、スピンのかかり方なのか……。どこに注目するか? さらにどう期待するか?によって、ぜひ「2本めのダンロップ」をお選びください。ダンロップストリングのラインナップは、それぞれの個性を明確に提示して、「○○をそうしたいなら、これ!」という『次の方向性』を選びやすいようにできています。

他社ブランド同士の比較は、ストリングのプロであるストリンガーでもむずかしいですが、マトリクスが明確化されているダンロップの中で選ぶことによって、自分が期待するパフォーマンスに早く到達できる……つまり「選びやすい」のです。

さらに、それぞれのモデルに「ストリングの太さ」バリエーションがあります。最近は「細めのポリ」が大流行していますが、トレンドに流されてしまうことなく、自分のスイングスタイルと期待値に最適の1本を「ストリングタイプ×太さの調整」で見極めていってください。

ダンロップストリングの詳し情報は下記よりチェック!
https://sports.dunlop.co.jp/tennis/products/string/

ルールブックって、じつは「読み物」として面白いんです。日本テニス協会のルールブックの巻頭には『RULE OF TENNIS』、つまり国際テニス連盟が定める国際ルールの日本語訳が記されています。これには「規則」の条文があり、その状況別説明として「ケース1〜○」や『付則』として、もっと細かい状況別の記載があります。そして第6部コートオフィシャルの手引きに「チェアアンパイアがつかない試合方法」などのページがあって、こいつが面白い! 知っているのと知らないのとでは大違いなのです。

たとえば「試合中にストリングが切れたときの対処法」は、みなさん意外にご存じありません。まず「ストリングが切れたままの状態で、次のポイントをプレーできるか?」については、認められているトーナメントと、認められていないトーナメントがありますから、まず試合前に、どちらであるかを確認することが肝心です。認められていれば、ストリングが切れたままのラケットでも試合の最後まで戦うことができますが、認められていない場合は、微妙な状況がいくつか生じるので、解釈例を挙げましょう。

Q1. 自分の 1st サーブでストリングが切れたとき、どうなる?
 A1. 1st サーブ が入った場合は、そのポイントが終わるまでプレーは続行される
 A2. 1st サーブがフォルトしたときは、切れたままの状態で 2nd サーブを打ってもいいし、ラケットを交換して(2nd サーブを)打ってもOK

Q2. 相手のサーブをリターンしたときに、レシーバーのストリングが切れたらどうする?
 A1. リターンが返ったときは、その時点でポイントは成立し、ポイントが終わるまでプレーを続行し、ポイントを中断してラケットを交換することはできない

Q3. フォルトした相手の 1st サーブを、反射的に打ち返してしまい、そのときにストリングが切れた場合はどうする?
 A1. レシーバーはそのままのラケットで、相手の 2nd サーブをリターンしてもかまわないし、交換してもかまわない
 A2. ただし 2nd サーブの前に、レシーバーがラケットを交換した場合は、相手サーバーは 1st サーブからやり直せる

これらの解釈には、基本的なルール理念が2つあり、これを理解していれば、容易に理解できます。
1つめは「いったんサーブが打たれたら(ポイントがスタートしたら)、フォルトになるかそのポイントが終わるまで続行される」
2つめは「サーバーは自分のリズムで2本のサーブを打つことができ、レシーバーによってそのリズムが狂わされるようなことが生じれば、最初からやり直すことができる」
ということです。

「Q1」「Q2」では、相手サーブが入った段階でそのポイントはスタートしていますから、レシーブしたときにストリングが切れてもポイントは続行され、それを止めてラケット交換することは認められません。もちろんラリー中に切れた場合も、そのままの状態でポイントが終わるまで続行しなければなりません。

ところが「Q3」では、サーバーの 1st サーブがフォルトした時点で、ポイントが中断します。ストリングが切れてしまったのは、ポイントが中断中のボールを打ち返してしまったせいですから、そのためにラケットを交換するのは、レシーバーの勝手な都合です。サーバーは本来、自分のリズムで 2nd サーブを打つことができるのに、相手の「ラケット交換」によってリズムを狂わされたわけですから、1st サーブからのやり直し……つまりポイントレットとなるわけです。

ただ微妙なのは「Q3-A1」で、「そのままでもいいし、交換してもいい」と言っているところです。ポイントが中断中ですから、交換してもいい……いやむしろ、中断中は交換しても交換しなくても良いが、次のポイントは交換しなければならないとしているわけだから、交換させるべきじゃないか! となるわけですね。

そこはこう解釈します。「本来ならば交換しなければならないけれども、相手サーバーのリズムを優先して考えましょうね。交換したいならしてもいいけど、そのかわり相手サーブは最初からやり直しね」ということです。

また「Q1-A2」は、自分のサーブですから、2本のリズムを優先してもいいし、交換してもいい。しかし自分のサーブでは「ラケットを交換したんだから 1st サーブからやり直しね」とはなりません。ようするに「レシーバーの都合ならば最初からやり直し、サーバーの都合ならばそのまま 2nd サーブ」というわけです。

っていうか、交換できるラケットを持っていなければ、試合続行不能として負けちゃいますよぉ〜。試合にはかならず2本以上持っていきましょう。同じラケットであることはもちろん、できればストリングも同じタイミングで張り替えたものをね!

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。