2021/01/31

ダンロップメンバーズテニスメルマガ 2021 1月号

住友ゴムグループの(株)ダンロップスポーツマーケティングでは、ダンロップブランドとなってからの【CX 200】【CX 400】シリーズの第2世代、2モデル7タイプを新規ラインナップします。これまで「きわめてコンベンショナルなスタイル」と評価されてきた同シリーズが、プレーヤーの「もっとコントロールを」というニーズに応え、その味付けについても大きく一歩、踏み出しました。

1984年に発売されたDUNLOP【MAX 200 G】は、その後のダンロップラケットのイメージを決定付けるほど、マイルドな打球感による快適性が評判となり、長く愛用されるモデルでした。しかし、猛烈なハイスピードテニスにも適応しなければならない現代では、より強靭でパワフルなフレームであることが要求されます。

今日のフレームコンストラクション(設計思想)は、日々進化し続けて強靭さを増すカーボン繊維によって構築されるため、その剛性はどんどん高くなり、打球感は硬くなってきています。この基本ラインから逃れることはできないながらも、いかにして「ダンロップらしい」マイルドさ・しなり感を持たせていくかが、開発チームの大きな壁となりますが、そういう時代であるからこそ、ダンロップは「らしさ」を見直し、取り組み、完成させたのが新【CX】シリーズなのです。

打球感をマイルドに感じさせるには、ラケットフレームの剛性を落とし、シャフトのしなりを増すのがいちばんですが、そうすると、どうしてもパワーが低下します。それにブレが生じて、面安定性が低下します。

ほぼすべてのラケットメーカーが「面ブレ低下」を目指しています。それは、面ブレはインパクトのパワーを消費させるだけで、打球への反発パワーへ還元されることなく、メリットがなにひとつないからです。そのうえ、面がブレればコントロール性も低下し、悪いことづくし。

そのため、より強靭なカーボンを使用することで、シャフトの剛性を高め、面ブレを抑えるというのが常道となっていますが、それでは伝統の「ダンロップらしさ」を強調することができません。そこでダンロップ開発チームは、あえて「シャフトのしなりを大きくする」という逆発想を展開。そのスタート地点から、デメリットを克服する未来に挑んだのです。

あらゆる方策を検討し、テストを繰り返し、明るい光を見出していくというプロセスを積み重ね、ついに辿り着いたのが『フレックスブースター』というシステムです。フレーム剛性を5%抑えて、しなりを増しつつも、シャフト部のカーボン積層の間に制振ゴムを配置したことで、面ブレが起こりにくく、パワーロスを抑制できるのが、この『フレックスブースター』なのです。ゴムのことならお任せください! 住友ゴムのダンロップです。

この新システムが実際の打球結果と打球感に及ぼす影響は大きく、しなりが増したために感じられるパワーロス感はなく、ボールがストリング面の上に乗っている感覚「ホールド感」を強く感じながら、振動減衰性も従来モデルよりも約10%も向上させたのです。

フレームの高剛性化が進む現代ラケットコンストラクションに立ち向かった、新【CX】シリーズは、今後のラケットが進むべき新しい方向性を切り拓いたと言えるでしょう。

いまやダンロップラケットの定番テクノロジーといえば『ソニックコア』ですが、これはシステムコンセプトに与えられた名称であって、素材のことを指すものではありません。

19年CXにひきつづき、新【CX】で採用したのが、ドイツのBASF社が開発した高反発ウレタン発泡体材料(E-TPU)である『Infinergy (インフィナジー)』です。

BASF社とは、ドイツの化学素材開発を基幹としながら、農業・建設・自動車・航空機・エネルギー・資源・化学製品・医薬など、あらゆる分野におけるイノベーションを通じ、未来へ向けたソリューションを提供する企業です。

そして『インフィナジー』とは、優れたクッション性、反発性などを備えた、世界初の熱可塑性ポリウレタン発泡粒子。その集合体である高反発ウレタン発泡材は、単なるクッション材とは違い、外部から加えられたエネルギーを吸収せずに蓄え、復元時に高い反発効果を発揮する素材で、フットウェアのクッション材をはじめ、あらゆる分野で活用され始めています。

ダンロップ【CX】シリーズでは、これをフェイス部の「2時&10時」に配置する『ソニックコア』素材として採用したことにより、弾き出す打球のスピン性能が向上し、相手に大きなプレッシャーをかけることになりました。

しなりのマイルドさとコントロール性向上だけでなく、攻撃力も確実に増している武器であることを知ってください。

このところ「密」という言葉には悪いイメージがありますが、ストリングパターンにおける「密」は、ボールを潰す、コントロール性、安定感という機能に通じます。ストリングパターンが細かいほど、ストリング面のたわみ量は少なくなり、反発性能は抑えられますが、ストリング面のたわみが安定し、正確な反発を実現します。

新【CX】シリーズは、たしかにハイパワープレーヤーに向けたラケットですが、どんなプレーヤーもわずかなミスショットはあり、とくに試合での追い込まれた状況では発生しやすくなります。ストリング面のセンターでのインパクトを想定したスイングが、わずかに外れて先に当たってしまう……。こうした状況は避けられないもので、その「わずかなミス」をラケットがリカバリーしてくれるとしたら、プレーヤーの戦闘能力は確実に高まります。

ミスだったはずが攻撃的な打球となって相手コートに突き刺さる。これを目指して採用したのが『POWER GRID STRINGTECH(パワーグリッドストリングテック)』というストリングパターン。横ストリングの本数は従来どおりのままで、センター部の間隔をわずかに狭くして密へ変更。

追い込まれたとき、やっとボールを捉えても、スイートエリアよりも先端側では十分なパワーを与えられていなかったのを、この部分のストリング間隔を広げて、たわみ量を大きくすることで反発性を向上させ、攻撃力を保った打球として「活かしてやる」ことができます。

コンベンショナルで、スタイルを守り続けることが魅力だった【CX】が、今回は思い切った変貌を遂げます。しかしそれは、みなさんの期待を裏切るものではなく、期待以上のものを届けるための進化です。デザインも、ずっと守り抜いてきたイメージカラーの「赤」を全面に押し出したリニューアル。テニスショップでは、真っ先に「ダンロップの赤いヤツ」を手にとってご確認ください。
詳しい商品内容は下記をご覧ください!
https://sports.dunlop.co.jp/tennis/contents/2021cx/index.html

毎月、このコラムのイラストを書いていただいている「もりおゆう」さんと打ち合わせをしながらも、ときにいろんな話題にブッ飛びます。もりおさんは若い頃からのテニス愛好家で、現在でも週に3日くらいはプレーする、自称「日本でもっともテニスするイラストレーター」でらっしゃいます。

いろんな話の中で、彼がとくに憤慨しながら説くのが「一般プレーヤーのマナーの悪さ」についてです。自由気ままにテニスを楽しんでいるイメージのある欧米って、なんだかマナーも悪そうな気がしますが、「自分も主張するが他人も尊重する」という気風があるためか、お互いが不愉快にならないようにという精神が「マナー」というシステムを作りました。

日本にも「行儀作法」という素晴らしいシステムがありますが、それをまったく無視する方が増えているのも事実と思います。「マナー」は「ルール」ほど厳しい制約ではなく、自分と周囲が気持ちよく過ごすための約束事くらいのものです。互いがマナーを守ることで、不必要な摩擦がなく、むしろ気持ちよく過ごすことができる素敵なツールだと思います。

いつも冷静で物静かなもりおさんですが、マナーの話になると、ちょっとだけ語調が強くなります。
「こないだヒドいなぁと思ったのは、転がってきたボールの返し方ですよね。こちらのボールが隣のコートに転がっていったのを、ラケットの先で弾いて返してきたんです。でもそれなんかまだいいほうで、ボールを足で蹴り返してきたヤツがいるんです。べつに相手がポイント中だったわけでもないのにですよ。どうかしてると思いませんか !?」

う〜ん、たしかにテニスプレーヤーとしては、どうかなぁと思います。テニスはそもそもフランス貴族の宮廷内遊戯として生まれ(諸説ありますが)、それが日本の明治期に、英国上流階級のホームパーティーで楽しまれて発展しました。「だからお上品にしなさい」とは言わないまでも、転がってきたボールは、手にとってから、ラケットでポンッと返すのが礼儀です。ラケットでポンポンとピックアップして、そのままラケットで軽く打ち返す……というのがギリだと思います。

もりおさんは、さらに訴えます。
「マナーを無視する輩ってのは、けっこうテニスがうまい・強い人に多いですね。強い=偉いと勘違いしてしまうようです。以前、とても寒い日の草トーで、ひどいヤツがいました。とっても強い若者なんですが、試合が始まるというのにロングコートを脱がないんです。そしてなんと、コートを着たまま試合開始。強い人だから、誰も注意できないようですけど、さすがに傍若無人だと思いませんか? もう自分が言うしかありません。

『もしもご存じないんだったら教えて差し上げますが、試合ではウィンドブレーカーでさえ、着たままのプレーは憚られるのです。せめてコートなどお脱ぎになってはいかがでしょうか』ってね。そしたら彼は、しぶしぶコートを脱ぎましたよ(笑)」

その昔……といっても1880年頃。テニスをする英国紳士は、モーニングコートにシルクハットという出で立ちでした。そのコートと、その若者のコートは違います。たしかに傍若無人、慢心野郎です。いくら「ウマい・強い」からといって、「オレに文句いうヤツはいないだろう」と振る舞ってきたのでしょうが、これはもうヤクザさんと同じ心理ですね。

テニスコートでのマナーは、いろいろあります。みんなが互いに楽しくプレーするために存在する不文律。それらはテニスを習得する段階で身に付けていくものですし、学校やテニススクールでも少しずつ教えてあげてほしいものです。

一度、自分の振る舞いにおかしいところがないか、友達同士で話してみてはいかがでしょう? あなたがウマければウマいほど、強ければ強いほど、みなさんはあなたに遠慮して、言えずにいるはずです。知らぬ間に「テニスコートを歩く裸の王様」にならないよう、テニスのマナーを復習してみてはいかがですか。

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。