2021/12/31

ダンロップメンバーズテニスメルマガ 2021 12月号

ダンロップの住友ゴム工業(株)は、世界のダンロップの発信地となったときから「わかりやすいラインナップ」「シリーズごとの明確な個性」を目指し、現在の「4シリーズ構成」を完成させました。今回発表した【SX】は、シリーズ第2弾! このラケットが持つ個性は強調され、独特のイメージを崩すことなく進化を遂げています。ぜひご注目ください。

今日のダンロップラケットの特徴は「わかりやすいラインナップ」にあります。性能的個性に注目して4つのシリーズが存在し、プレーヤーが「何を必要としているか」「期待する性能とは」とダイレクトにリンクするシリーズ構成です。

まず「コントロール性能」に着目した【CX】シリーズ。薄めのフレームでしなり感・ホールド感を持たせ、ラケット側のパワーサポートよりも、プレーヤー自身のエネルギーをメインパワーとし、プレーヤー側による調整能力にフォーカスしたシリーズ。

次に「スピン性能」を強化する【SX】シリーズ。フレーム自体は高反発系黄金スペックで、そのパワーを多大なスピン量で相手コートにねじ込むためのシステムを搭載。高反発系ながらしなやかな打球感が特徴的なシリーズ。

そして「圧力&スピード」を武器とするプレーヤーのための【FX】シリーズ。軽快な操作性から打ち出す打球のスピードが、相手から余裕を奪って優位に立たせてくれるメリットを満載したスペック構成で、新シリーズとして加わりました。

極めつけが「魔法のラケット」を騎手とする、軽量・パワー系の【LX】シリーズで、ちょっと非力なプレーヤーでも、相手の打球に圧倒されない反発性能で切り返し、しかも大きなスイートエリアのおかげで、「狙うところへ向けて面を作れば、そこへ向けて確実に飛んでいってくれる」という伝説を生み出したシリーズ。

2017年、住友ゴム工業がワールドワイドで【DUNLOP】のブランド権を獲得した時点をから、新たなシリーズ構築プロジェクトがスタートし、今年の【LX】シリーズの発表によって構築完了。間を置くことなく、【CX】シリーズの第2弾に続いて【SX】シリーズも第2弾の発表を迎えました。

【SX】の【S】は、SPINの【S】。このシリーズ開発に当たって、開発者たちは「トップスピンを武器とするプレーヤーのインパクトの個性」に注目、徹底的に分析しました。その結果、高速で縦方向へスイングされるために、ストリング面に対してボールが真っ直ぐに当たるフラット系よりもインパクト位置がズレやすい……という分析結果を得て、これによって生じる誤差を少しでも小さくするにはどうしたらいいか? を検討し始めたのです。

この問題については「プレーヤー自身が調整するもの」「ラケット側でどうにかできる問題ではない」というのが常識でしたが、開発スタッフは「そこにこそラケットの可能性がある!」と信じ、諦めることなく研究を続けたのです。
そしてついに辿り着いたのが『スピンブーストテクノロジー』でした。

開発陣が着目したのは「インパクト時に中央より高い部分に当たったときと低い部分に当たったときの打球弾道の違い」でした。低い位置に当たった場合、高い位置に当たったときよりもボールが持ち上がらずに弾道が低くなることがデータ化されたのです。

ということは「面の低い部分に当たった場合だけ、弾道が持ち上がりやすくしてやれば、高い位置に当たったときとの差が小さくなる」わけで、そのシステムが『スピンブーストテクノロジー』です。

具体的なシステムは「グロメット孔(あな)の形状」に仕込まれました。一般的なグロメット孔(あな)は「丸型」ですが、これを「細長オーバル」にして、「縦・横・縦・横……」と交互に配置。面の高い位置に当たった場合は、縦ストリングの動きがロックされてスライドが抑制され、打ち出される弾道は低く抑えられます。

逆にストリング面の低い位置に当たると、ストリングはスライドしやすくなってボールを持ち上げ、打球弾道を上方へ引き上げるように機能するのです。

そして新【SX】ではこのシステムがパワーアップされ、横長グロメット孔が「3種の三角形状」へと進化。これまでは「横スライド」だけに注目したものを「たわみ量」にまで観点を広げ、打点が低くなればなるほど、ボールへの喰い付きをよくしてパワーアップも実現したのです。

ようするに、弾道が高くなりがちな部分のインパクトでは「抑え」、低くなりがちな部分では「持ち上げる」という補正効果によって、高い・低い どの位置で当たっても、打ち出し角度&パワーが安定的し、打球弾道を示す曲線が集約するわけです。

この新システムを、我々ダンロップは「打球弾道制御の革命」と自負しています。

もう一つ、【SX】シリーズについて知っておいていただきたいことがあります。それは「高反発系なのに“しなる”シャフト」です。ダンロップのラケットには歴史的に「マイルドな打球感」の基本イメージがあり、現在もそのイメージを大切にしております。

しかしながら、カーボン繊維の発達のおかげで、ラケット性能の潮流は「どんどん硬い打球感」へと流れてきています。だからといってそれに流され、みんなが同じものを作っていたのでは「ダンロップの個性」は埋もれてしまうことになるため、性能的には高反発でありながらも、高速スイングで叩かれるケースを想定した【SX】シリーズには、しなりシャフトを搭載すべきと考えました。

スイングのパワーをロスさせずに、しなりによってパワーを蓄積→戻りによってパワー加速を実現したのが『Vエナジーシャフト』です。シャフトの両サイドに深く切り込まれたグルーブによって、インパクト直後はグルーブの谷が潰れてシャフトはしなり、ボールが打ち出されるタイミングとシンクロして谷の潰れが戻ることで、シャフトは蓄えた反発パワーを一気に解放して打球を加速するのです。

他にも『ソニックコアテクノロジー』や『スピンブーストストリングテクノロジー』など、特別な装備がありますので、その詳細とシリーズラインナップにつきましては、当社WEBサイトをご覧いただきたく存じます。

詳しくは下記をチェック!

最近よくSNSで「ポリは飛ぶ」というカキコミを見かけます。はたしてそうでしょうか?
我々、テニス道具のプロにとっては「ポリは飛ばない」というのが常識。言い方を変えれば「飛びが抑えられている」。

筆者の個人的な感覚では「ボールとの接触時間」が、噂の元のような気がします。接触時間が長く、ボールをホールドする感覚が強いほど「飛ばない」と感じ「ボールを押し出すアクションをしなくちゃ」と思う傾向があります。逆に接触時間が短くて、ボールが早くストリング面から離れるほどスパーンっと飛ぶという感覚なのだと思います。

また、多角形断面のポリ系だとボールへ引っかかりやすく、弾道が持ち上がるので飛距離が伸びるという効果もあるでしょう。

そもそもポリエステル製ストリングは、高反発化が進むラケットフレームに対して、強打しても相手コートに収まる……という理由で、2000年頃からプロに愛用されるようになったものです。

ポリ系登場当時、メーカーによる打ち出し方が誤解の元でした。
『耐久性が高い!』……
それはあくまで「切れにくい」という意味であって、ストリングの本質的性能である「反発性能」の持続性を完全に無視した主張でした。「切れにくい」を「耐久性」という言葉に置き換えてしまったため、「ポリは長持ちする」という誤解を生んだわけです。

現代のプロたちは、ポリ系張りたてのラケットを多数コートに持ち込み、だいたい「1セットでラケットを交換」しています。あれは「ラケットを交換」しているのではなく、「ストリングを交換」しているのです。

彼らのプレーレベルでは、ポリ系ストリングは「1セットが寿命」。期待する反発力を発揮できなくなるため、それまでのストリング面は「お役御免」で、新しいストリング面でプレー再開なんですね。

ようするに「パンツのゴム紐」なんです。

パンツのゴム紐は、細〜いゴム紐を束ねて1本にしていますが、使っているうちに中の細ゴム紐が1本、2本と切れていき、最後には全部切れてまるで伸縮性がなくなってしまいます。だけど「ゴム紐自体が消えてなくなるわけじゃない」。形としてはそのまま存在際しているけれど、事実上の性能は終了しているということです。

だからといってポリ系を否定するわけじゃありませんよ。ストリングが頻繁に切れてどうしようもないという方や、ナイロン系ではコートに収まらないというような、必要な方には必要であり、これだけ需要が広がれば、「どういうものか?」をきちんと知ったうえで、「どう使うのがいいのか?」を考えるべきです。

たとえば「とてもパワフル」「強烈スピン系プレーヤー」には、ポリ系ストリングは非常に適合性が高いです。その理由の第一が「ストリング表面が硬くてストリング同士が滑りやすい」ことで、交差点で食い込み合う「ノッチング」が起きにくく、スナップバックが起きやすいためにスピンがかかりやすい。

また、ポリ系は単一構造であるため、ストリングを射出するノズルの形によって、断面構造を自在にコントロールすることができます。丸型にも多角形にもすることができ、ダンロップストリングでいえば丸型の【エクスプロッシブ・ツアー】や【エクスプロッシブ・スピード】、六角形の【エクスプロッシブ・スピン】や突起付属型の【エクスプロッシブ・バイト】など、多彩なバリエーションを生みやすいのが特徴です。

ただし誤解しないでいただきたいのは、スピン系ストリングを使えば、誰でもスピンがかかるというわけではないということです。あくまで「スピンがかかるスイングをすれば」なんです。また、スイングスピードやスイング軌道などが十人十色すぎ、打球スピードとスピン量の組み合わせもそれぞれであるため、最適ストリングをドンピシャで導き出すのはむずかしいですね。まずはいろいろ試してみることです。

また、打球を楽に飛ばしたいのなら「細いポリ系にする」だけでなく、「ナイロン系を張ってみる」のもいいでしょう。太めのナイロンを選べば、切れやすいと悩むこともないでしょうし、性能寿命が長いのは嬉しいですね。

ポリ系の使い続ける、できるかぎり張り替えのタイミングを早くしましょう。そりゃお金はかかります。でもポリとはそういうものなのです。ですから、できるだけ短期間でどんどん張り替えて使うには、同レベルのパフォーマンスでも価格が抑えられているダンロップのポリ系はありがたい存在です。

「自分にとってどれがベストなのか?」を見つけるためには、開発技術が進んでいるポリ系の中から、いろんなタイプを試してみるべきだと思います。いろいろなものを試し、それを自分の好みだけでなく、パートナーやコーチから客観的に見てもらうことで、自分に適しているかどうかを冷静に判断するのが上達の秘訣なのです!

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。