2023/12/31

ダンロップメンバーズテニスメルマガ 2023 12月号

住友ゴムグループの(株)ダンロップスポーツマーケティングは、テニスを中心としたラケットスポーツを展開し、ダンロップをご愛用くださるテニスプレーヤーのために、「ご満足いただける製品を届けたい!」「快適なテニス環境を整えるお手伝いをしたい」という心で、あらゆる製品を取り扱っています。待望の新型ボックス形状の【CX】シリーズを完成させました。

ダンロップラケットには、多くのテニスプレーヤーによって、長年抱かれている「イメージ」があります。それは『打球感のマイルドさ』『打球を掴んでくれる感覚』です。そのイメージの原点は、1980年代に数多くのトッププレーヤーに愛用され、世界的に大ヒットロングセラーとなった名器【MAX 200G】というラケットにあります。

その独特な打球フィーリングは、Injection molding(射出成形)といって、「カーボン短繊維混入のナイロン樹脂を金型内に射出する」独自の成形法によって構築されました。これはダンロップが持つ、完璧オリジナルな技術です。その、あまりに個性的な打球フィーリングを愛するプレーヤーの期待を裏切らないよう、ダンロップ・プライドとして「マイルドな打球フィーリング」の提供を心掛けてきました。
今日のカーボン繊維は、40年前よりはるかに進化し、テニスラケットの構築に大きな進化をもたらしてきましたが、逆にそれが「柔らかいフィーリングのラケットができにくい」状況となったのも事実です。ダンロップは、長きにわたって、その環境に立ち向かいながら、あらゆる創意工夫で新開発技術に勤しんでまいりました。

そしてその苦心が、本日発表された【NEW CX SERIES】として結実したのです。プレーヤーの高い技術レベルを支えるために引き継がれてきた、ダンロップの伝統的な『ボックス形状フレーム』を構造的側面から見直し、4つの技術をまとめあげたのが『コントロールフレームジオメトリー』です。

「ボックス形状フレームの刷新」「ホールド性を高めたフェイスの構築」「ストリング可動域の拡大」「フレーム全体の安定性向上」という4つの課題をクリアしたことによって、これまでよりもさらに快適な打球フィーリングを実現させつつ、飛びとスピンという「攻撃性」の拡大を、数値的にも達成しました。

「これまでにないマイルドなホールド性能」という言葉で、大きな評価を与えたのは、『鈴木貴男氏』であり、その賛辞に、我々ダンロップスタッフも驚かされました。「テニスをできる期間がスゴく短い北海道から、テニスの強い選手など生まれるはずもない」と言われていたにもかかわらず、札幌に生まれ、16歳で全日本ジュニア18歳以下を制してしまった鈴木氏ですが、14歳で出場した全日本ジュニア北海道大会16歳以下で優勝してしまった頃にはもう、ダンロップ【MAX 200G】を愛用し、最終モデル【MAX 200G PRO III】まで、それを武器に戦い続けました。

その鈴木氏が【CX200】を試打したときの第一声が「これはホールド感が、いままでのモデルとはまるで違う!」。笑顔でNew【CX200】の完成を喜んだのです。

図のタイトルに『NEW BOX SHAPE』とありますが、見た目には「わずかな断面形状変更」です。従来モデルは台形形状をしていましたが、NEW CXはボックス形状(四角)にすることでボールインパクト時に面の外側方向へのフレーム剛性を向上させ、面ブレを抑えパワーアップに貢献しました。ただ、それだけでは硬いラケットになってしまうので、フェイス部の内側方向にたわみやすくするカーボンの積み重ね配置(CARBON LAYUP)を調整しています。
それによりインパクト時におけるフレーム外側(グロメット側)は、面内へ向かって「たわみ」やすくなり「ボールを包む感覚」「ボールをくわえこむ感覚」を、グッと増したのです。

こうした多面的要素を複合して積み重ねることによって「これまで以上のホールド性能」が実現したわけですが、こうなると「打球感が柔らかくなると、攻撃的な性能が低下するんじゃないの?」という意見が聞かれるようになるものです。それに対しても【NEW CX】は対処し、フェイス上部の内側フレームに『CONCAVE AREA』を設けました。

「concave」というのは「くぼんだ」「へこんだ」「凹形の」「凹面の」という意味で、【NEW CX】には、フェイス内側の2時〜10時エリアに渡って「凹み」があります。「グル−ブ」というと、ややカチッとした溝をイメージしてしまいますが、これはまさに『くぼみ』「へこみ」です。これによって、縦ストリングの可動域を長くすることができ、反発性能の向上と、スピン性能の向上を狙いました。

もちろんこれまでにダンロップが培ってきた振動減衰対策も、しっかりと活かされています。おなじみの「ソニックコア・テクノロジー」に加え、振動減衰性に優れた制振ゴム(バイブロシールド)をフレーム両サイドの「3時 & 9時」と「スロート部」のレイアップに組み込み、雑味となる微振動を抑え、打球情報をクリアに伝えるような工夫がなされています。

さらに、これまでのストリングパターンが「中央部が密・周辺部が疎」だったのに対し、【NEW CX】は「マス目の大きさを全体的に平均化して、中央部のマス目を2mmずつ拡大」したのです。これにより、中央部のたわみ量を増して、ホールド性能向上へと結びつけました。

ダンロップのラケットは「長年の愛用プレーヤーを裏切らない範囲での進歩」を常としてきましたが、【NEW CX】は「裏切ってしまう」かもしれません。みなさんが期待してきたことについて、期待以上の成果を上げてしまったからです。でもきっと、誰もがこれを「ヨシっ!」と受け容れていただけると、我々ダンロップは信じています。

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先日、Facebook を意識なく閲覧していたら、ある映像に目が釘付けになりました。
草原の中に、草を刈り、きれいに土を露出して、平らにならされた長方形の地面。その真ん中に簡易なネットが張られています。センターストラップなどない……ちょうどソフトテニスのネットのように一直線。

そこはおそらくアフリカでしょう。草原の中に突如として土のコートが切り拓かれています。うっすらと白い線が描かれた土の上には、多少の枯れ草が散らばっていて、クレーコートと呼べるような代物ではありませんが、これはもうまさしく「テニスコート」です。

大きさは、ちょうど『TENNIS PLAY & STAY』(プレイ・アンド・ステイ)の「ステージ オレンジ」(推奨年齢目安:8歳〜10歳)で使われる、横が6.5m〜8.23mのコートサイズより、ちょっと小さいくらいでしょうか。普通のテニスコートの半分くらいかなぁ。

そこで、現地の少年と思われる2人が、ミニテニスのようなラリーをしています。飛んでくるボールに対して素早く横向きになり、膝をしっかり曲げてのテイクバック。小さなコートでも確実に入るよう、しっかり下から上へのスウィングで、必要なだけのトップスピンをかけています。

まさにテニス黄金期に「基本フォーム」として確立された、お手本のようなスウィングで、ミスすることなくラリーが続けられます。使用しているボールは、すっかりエアが抜けてしまったボールか、もしかしたらプレイ・アンド・ステイ用の「跳ね具合が抑えられた柔らかいボール」なのかもしれません。

そして彼らのフォームが、我々がすでに忘れてしまっていた「懐かしさ」、いやもはや「郷愁」を感じさせてくれるのです。

今日、一般的となっている「オープンスタンス」ではなく、すべてのボールに対して「横向き」を作る「完全クローズドスタンス」。それを見ていると、「たしかに昔はこうやって習ったよなぁ〜」と、テニスの基本というものに、改めて感じ入ってしまうのです。

その少年たちのフォームに魅入っているうち、「あれっ、なんか変なかんじ」……。
気が付くと、彼らはシューズを履いていません。完全な裸足なんです。服装は、完全な普段着で、シャツに短パン。そこから伸びた黒い足は、土を確実に踏みしめ、飛んでくるボールに対して、ベストな位置に自分の身体を運びます。

わずか20秒ほどの映像ですが、何十回も繰り返し見ているうち、なぜか胸の奥がジーンとしてくるのを感じました。
「あぁ、この子たちはテニスが好きでたまらないんだろうなぁ」
「草原の中でも、テニスできるよね」
「ラケットは必要だけど、シューズはなくてもテニスはできるんだね」

あまりにも素朴で、豊かではないけれど、世界のどこにでも「テニスは存在する」。
「あれがほしい」「これが必要だから買ってぇっ!」というのとは、まるで別の世界にも、テニスは存在するんです。サッカーが「ボールひとつあれば、どんなところででもできる」ことで、全世界に深くファンを根付かせました。

テニスだって、できるんじゃないでしょうか?
映像を見ているうち、草原のコートには「金網がない」ことにハッとしました。
そっか……だからこの子たちは、ボールがどこかへ飛んでいってしまわないように、ひたすら基本に忠実なフォームで、確実なラリーを続けるんだ……。草むらに飛び込んだボールを探すのは容易なことじゃありませんものね。

世界にはまだ、貧しい国はいくらもあります。でも彼らは彼らなりの方法で、テニスを楽しんでいるわけです。新製品のラケットをほしがるわけでもなく、シューズなんて履かなくてもいい。
ただひたすら……『LOVE TENNIS』
テニスのことが好きでたまらない!
ボールを打てるのが楽しくてしかたない!

この動画を投稿したのは、世界の最強・最先端プロを育てる「パトリック・ムラトグルー」氏で、「このビデオは私に、たくさんの『テニスへの愛』を感じさせてくれる」と添えています。彼が、世界を目指すジュニアやトッププレーヤーたちに教えるテニスとは、まるで違う世界のものだけど……
「これもテニス、それもテニス」

この平らな土の上が「テニスコート」なのは、二人の少年が、そこでテニスをしているから。壁やネットに囲まれたのだけがテニスコートじゃないんですね。
『LOVE TENNIS』さえあれば、どこにでもテニスコートは存在するのだと知りました。

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。