2024/04/30

ダンロップメンバーズテニスメルマガ 2024 4月号

住友ゴムグループの(株)ダンロップスポーツマーケティングは、テニスを中心としたラケットスポーツを展開し、ダンロップをご愛用くださるテニスプレーヤーのために、「ご満足いただける製品を届けたい!」「快適なテニス環境を整えるお手伝いをしたい」という心で、あらゆる製品を取り扱っています。今回は、ダンロップラケットの各シリーズに設けられている【285g】というスペックに注目しました。本格競技系のイメージが強いダンロップですが、じつは【285g】スペックも大人気なんです。

【ダンロップ】……と聞くと、「競技志向ブランドだよね」とイメージなさる方が多いと思われがちですが、各シリーズともさまざまなニーズに対応すべく、本気の競技志向モデルから、初中級・ベテランも楽しめるモデルまで、幅広い選択肢をラインナップしています。

2007年に『黄金スペック』という言葉が生まれ、「100sq.in.・300g・26mm厚」というスペックの組み合わせがラケット市場を席巻しました。プロも使い、一般プレーヤーから初中級まで、このスペックの黄金比に取り憑かれていました。

あれから17年、ラケット界で大きく変化したのは「重量のバリエーション」です。300gを中心に、さらに圧倒的推進パワーを秘めた315gの重量モデルがあり、取り扱いが容易で、軽快にテニスを楽しめる265gの軽量モデルまで、重量スペックの選択幅が多彩に広がったのです。

まずラケットフレームの重量について、基本的なことをお話ししましょう。
重さは「推進パワー」に深く関係します。簡潔に表現するならば「重いフレームほどボールを弾き返す力が大きい」が「スイングを始めるのに大きな力が必要」。
逆に「軽いフレームほど、弾き返す力は小さい」。でも「スイングを始めやすく、高速スイングもしやすい」。

「ラケットの潜在パワー」と「スイングのしやすさ」は、相反する関係にあります。重いフレームは、いったん振り出してしまえば、ラケットの重さがボールを弾き返してくれるのですが、ビュンビュン振り回すのはむずかしい。軽いフレームは、簡単に降り始めることはできるが、重さでボールを押し返してくれる感じではない。

打球/インパクトは、物理的には「ラケットとボールとの衝突」です。衝突という現象を支配する要素は「重さ(質量)」と「衝突速度」であり、それによって弾き返す力が違ってきます。そんなインパクトの違いを、プレーヤーの体力やパフォーマンスに応じて選択できるように、テニスラケットは重量やバランスなどのスペックにバリエーションが設けられているわけです。

もしプレーヤー自身に強力なスイングパワーがあれば、300g以上の重量モデルが威力を発揮するでしょう。またそれほど強烈なスイングをしないのなら、200g台の軽量モデルが、スイングしやすくて楽しくプレーできるでしょう。ラケットフレームの基本的なコンセプト:味付けには統一感を保ちながら、プレーヤーのスイングパワーに対応してラインナップされるのがダンロップ【CX】【SX】【FX】【LX】などの「各シリーズモデル」なのです。

一世を風靡した黄金スペック「300g」ですが、カーボン繊維の進化や、フレーム構造技術の進化によって、もう少し軽くても打球にパワーを与えることができるようになり、最近では、全メーカーを通じて『285g』というスペックが重宝されるようになってきています。

ダンロップユーザーでは、やはり「300g」モデルに対する信頼感や安心感が強く、全モデルの中でもっとも多い「25.8%」の出荷数を占めています。ただ「285g」モデルも「17.9%→18.5%→22.6%」と、年々、人気が上がって、「300g」モデルに迫る勢いです。

これはラケットフレームの進化もありますが、プレースタイルの変化も関係しているでしょう。今日、フラット系の打球でグイグイ圧力をかけるスタイルよりも、強烈なスピンをかけたり、適度なスピン量でコントロールするというスタイルへと移行し、「スピンのかけやすさ」→「スイングスピード」が重視されているからと思われます。

こうした傾向には、ラケット機能の進化によって、打球スピードが増したことが関連しています。高速打球のメリットを活かしつつ、それをコート内に収めるにスピン量を増やすスタイルが多く見られるようになってきました。スピン量増加のためにはスイングのスピードアップが必要となり、スイングしやすく、体力も温存しやすい「ちょっとだけ軽量フレーム」に注目が集まったのでしょう。

ラケット選びにおいては、木製フレームの時代から言われてきた「不文律」があります。
「競技志向の強いモデルは重い」
「快適さを重視したモデルは軽い」
しかしながら近年では、「285g」くらいの重さでも、フレーム内部の構造や、多彩なパワーアシストシステムによって、十分な反発性能を発揮させることができるようになってきました。

つまり「軽量のデメリット」を補うに足るパワーアシストによって、「操作性向上のメリット」「スイングスピード向上のメリット」が抜きん出るようになってきたのです。スイングスピードが速くなることは、多量のスピンをかけるプレーヤーにとっても大きな魅力ですね。

「適度な重さを利用してパワフルに!」
「振りやすさを利用して高速スピンに!」
両方の要素を兼ね備えながら、じつにいいところでバランスがとれた「285g」というスペックは、これまで必死に「300g」を振っていた競技系プレーヤーが「十分これで戦えるかも!」と感じさせることもあります。反応性向上・スピン量増加・戦闘力持続のために、競技者が「285g」スペックを活用するケースも増えているようです。

ダンロップではこうした動きを重視して、「自分は300gじゃなきゃダメ!」と決めてらっしゃるプレーヤーにも、ぜひ「285g」の世界を知っていただきたく『285gスペックモデル 試打キャンペーン』を企画しました。

4月中旬から『#推しラケはダンロップ285』と銘打ち、【CX400】【SX300 LS】【FX500 LS】という、すべて285gスペックの3モデルをセットにして、10名の方に試打用ラケットを貸し出させていただきます。

DUNLOP CX 400

DUNLOP CX 400

ダンロップ CX 400 レッド×ブラック

DUNLOP SX 300 LS

DUNLOP SX 300 LS

ダンロップ SX 300 LS イエロー×ブラック

DUNLOP FX 500 LS

DUNLOP FX 500 LS

ダンロップ FX 500 LS ブルー×ブラック

まず、自分のプレーに対する先入観をいったんゼロにしてみて、「コントロール系」「スピン系」「ドライブパワー系」という、機能の異なる3モデルを、285gというスペックで打ち比べてみてください!

1980年代、世界中を巻き込んだ「黄金のテニスブーム」が到来。
若者たちの多くが「テニスボーイ」でした。テニスラケットを持って、渋谷の街を闊歩するのが、当時の若者のスタイルだったのです。

彼らの情報源は、テニス専門誌や若者向けの情報誌。それらを読みあさりつつ、グランドスラム中継が流れるブラウン管(液晶画面以前のテレビ画面は、みんなこれ)に釘付け。プロがカッコよく黄色いボールを打ち返す姿を、羨望の眼差しで見つめていました。

当時の日本では、そんなテニスファンの多さに対して、テニスコートの数が絶対的に足りなかったため、テニスコートでプレーしたい学生たちは、同好会やサークルに入って練習に参加するしかありません。下級生は、公営コートを確保するため、月イチの抽選会のために徹夜で並ばされました。

そんな団体が驚くほどたくさんあって、真剣に強くなりたい競技志向同好会もあれば、少~し軟派なサークルもありましたよ。「夏はテニス、冬はスキーだ!」みたいに、とにかく「遊びたいだけ」のみなさんたちね。

彼らにとってオンコートでの練習は檜舞台。たいがいの団体は「男女混合」ですから、ちょっとでもみんなより上手く見せたいという男子メンバーは、ひとりコソコソ練習に励みます。テニスコート以外で、練習をできるところを求め、Tシャツ&ジョギングパンツ姿で、ラケット片手に、広い公園へ通うわけです。

もちろん、目指すのは『壁』!
当時の単独テニスマンたちが集まったのは「壁のある場所」で、彼らは無言の壁を相手にひたすら打ち返すのです。

横にドワーッと広い壁を探すわけですが、建物の壁はNG。「ドンドンうるさい!」と苦情がきます。だから公園の階段脇とか、土手になっている脇の壁。歩道橋の橋桁とかね……。

だれかが始めると、徐々に人数が増え、そのうち「時間制・順番待ち」なんてローカルルールも自然発生したりします。

そのうち誰かが、壁に「ネットの高さの白テープ」を貼り、ターゲットにする四角枠なんか、断りもなく描いちゃうわけ。それで「壁打ちのメッカ」だなんて情報誌で紹介されたりするもんだから、まぁ〜 集まること集まること!

近所の学生はもちろんですが、原チャリで通う学生もいたし、遠くからクルマでやってくるオジサンも混じっていました。みなさん「ラケット1本・ボール2個」。あとはタオル1枚くらいの気軽な持ち物スタイルですが、気持ちは超真剣でした。

超真剣……なんですけど、壁に集まるみなさんは、それなりに発展途上プレーヤーですから、ものすごく上手い人はいないので、ちょっとくらいドタバタしても恥ずかしくなんかありません。

自分が打ったボールが「いい感じ」だと、壁は素直に自分へ向かって戻してくれますが、左右へとっ散らかったり、長くなったり短くなったりで、4~5球続けばいいほうです。
10球以上続いたりする人は注目の的になっちゃいます。

そのうち「あいつ、ここに来なくてもいいんじゃねーの?」「フンっ、カッコつけたいだけだろ!」なんて囁かれたりしてね。
自分たちだって、コートでカッコつけたいから、わざわざ壁打ちに通ってるってのを、忘れさせてしまう団体意識。

とまぁ、とにかく「壁打ち」は「修行の場」なんです。かつて達磨大師が悟りを求めて、壁に向かって9年間も座り続けた無言の行……『面壁九年』という逸話がありますが、テニスでも壁は自分に問い返します。

黄色いボールは自分の心。素直な打球には素直に。じゃじゃ馬な打球には「暴れ馬」となってテニスマンを翻弄します。

それでも壁打ちマンたちは、無言で、ひたすら、自分の煩悩と向き合っていたのです。

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。