いつもダンロップ並びに弊社テニス用品をご愛用いただき、誠にありがとうございます。
【ダンロップメッセンジャー】は、みなさまへ特別な情報提供をすることで、【ダンロップ】をより身近に感じていただくためのものです。
みなさまと一緒に良い商品を作り、ダンロップからの情報発信を目指すものです。
近年のラケット市場には「変なヤツ」とか「飛び抜けた性能を持ってそう」なんてのを見かける機会は、まぁほとんどありません。われわれ人間でも「秀でた才能を持ったヤツ」というのは、変人扱いされたり、どこか風貌が尋常じゃなかったりするものですけど、ラケットも同じです。デカラケ然り、アツラケ然り、長ラケ然り。登場時には「こんなもの使えるかよ!」「みっともないじゃん!」と、散々なお言葉をいただきます……が、
そんなラケットでテニスを覚えたジュニアがプロになって活躍したりすると、世界の目が変わります。「あれ……いいかも???」ってね。そして実際に使ってみると、「これまでの自分になかったスピード、弾道、打球感」という恩恵を受けるのです。
そうなれば、メーカーはイケイケで、さらにトンガったものを売り出すわけですが、しばらくたつと、『待った!』がかかるわけでして、そこで初めて『規制・ルール=レギュレーション』ができるんです。
「競技者の技量の違いを競うのがスポーツ」という考え方が基本にありますから、ある特定の道具を使うことで「著しく特殊な性能を発揮しうる」ものについては、競技本来の目的を邪魔することになる!ということで、「使ってはイカン!」となるわけです。
こうした考え方が「競技としての均等性・公平性」であり、それを守るために存在するのが「ルール=レギュレーション」なのです。
完全使用禁止もありましたし、サイズや機能に制限を設ける……というパターンもあります。有名なのは「スパゲティラケット」で、縦糸と横糸の交差点で「編まず」、縦横それぞれが自由に動く「ストリングの張り方」です。こうすると、インパクトのときに縦糸が大きく横ズレして、猛烈なスナップバック現象を生むという仕掛け。
いろんな仕組みがありましたけど、狙いはすべて「猛烈なスピン」です。かつてランキング100位以下のプロがこれを使って、それまで絶対に歯が立たなかったトップランカーに勝ってしまい、トップたちも「それならオレたちも使ってやる!」となって、テニスが変な方向へいっちゃいそうになるという事件が起きました。
そこでテニス連盟が乗り出し、「使用まかりならん!」の御触書を出したわけです。
デカラケだって、超体格のいい選手は、ものすごくデカいラケットを振れますが、小柄な選手には無理ですよね。単なる体格差の問題ではなく、使える道具にまでギャップを生むことになるので、ストリング面の「縦×横」サイズに規制がかかり、フレームの長さにも上限が設けられました。
メーカー側は、こうした規制をすり抜けて、よりハイパフォーマンスなものを開発してきました。その賜物が、ダンロップ【スペースフィールプライムEX】→現在の【LX1000】です。縦ストリングが極端に長いことが、「あれはルールから逸脱している!」と批判を受けるんですが、ダンロップは「ストリングは長くても、ダンパーブリッジよりも下側は打球面ではないので、ルール違反ではない!」と主張し、認められました。
「ルールが先にあった」ことはありません。画期的開発とルールは、つねに「追いかけっこ」。そこに「進歩」が生まれ、不可能を可能にしてきたんですね。テニスを楽しく、面白いものにするため。テニスをより多くの人に楽しんでもらうため。すべてのラケット開発者には『タマシイ』を忘れないでほしいものです。
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松尾高司氏
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップテニス」のサポーターも務めてもらっています。