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テニス専門誌の編集部でペーペーの新人だった頃、上司に当たる方とテニスをする機会がありました。ボクがサーブを打とうとすると、コートの向こうで「またダブルフォールトかな」「ミスしないでよ」「フットフォールトじゃない?」とニヤニヤ顔で言うのです。
「こんなヤツとは二度とテニスするもんか!」と不機嫌顔でいると、「あの程度のことで動揺するようじゃね」だって……。ずいぶんとくだらんことをするもんです。こっちは、楽しくテニスしたいだけなのにっ!
相手のプレーを邪魔したり、侮辱するような行為は、「スポーツマンシップに反する」として国際ルールでも禁じられていますが、そんな真剣ではない「日常テニス」においてだって、言葉によって相手の気持ちを動揺させようとしたり、イヤな気分にさせようとするのは、「紳士淑女のスポーツ」という歴史を持つテニスには、あってほしくないシーンです。
「どんな手を使ってでも勝ちたい!」と思う方は、あまりテニスには向かない気がします。そもそもテニスは「遊び」なんです。ゲーム性が強くなり、スポーツ・競技となっても、本質を忘れてはダメでしょ。勝っても負けても、楽しくなくちゃいけないんです。テニスで勝つことを生業としているプロに向かって「楽しくやってね」なんて言えませんが、姑息なことをして勝とうとするのは、プロスポーツにこそ、あってはならないでしょう。
プロは、「自分の行ないを見ている子供たちがいる」ことを忘れるべきではありません。
ちょっと前に、こんなシーンを見ました。あるトッププロがサーブ動作に入ろうとすると、相手レシーバーがラケットでコートを叩いて「カツッ、カツッ」、シューズの裏を叩いて「パンッ、パンッ」と音を出します。明らかにサーブのリズムを狂わせて邪魔しようとする行為だと、サーバーが審判に訴えても、審判は「プレーを続けるように」と言い、相手レシーバーは、ふたたびラケットでカツカツ音を出します。
結局、妨害を受けても、審判がその妨害行為をやめさせなくても、そのトッププロは見事に勝ってみせましたが、あの行為を止めなかった審判は、世界じゅうのジュニアプレーヤーに「やってもいいこと」と思わせてしまったのを悔やむべきだと思います。
……「音」といえば、昔は「小さな声を発することもない」静寂の中で、美しい打球音が響いていたものでした(まだボールが白い時代ですけど)。なのに昨今は、世界の範たるトップ女子プロが、「ウォーッ」「ギャアー」と、まるで獣のような声を発しながら打ち合います。それを目にするたびに「あぁ……もうあの麗しきテニスは戻ってこないんだな」と溜め息が出ます。
テニスにとって「音」は、プレーするうえで重要な「判断情報」です。自分の打球音もかき消すような絶叫は、相手の情報収拾に対する妨害行為じゃないでしょうか。幸い、日本人プロには、獣のような声を発する女子選手はいません。我々は、男らしさとか女らしさという「たしなみ」を持っている……とオジサンは思っているのです。
コートに立つたび「スポーツマンシップとは何か?」を胸に持ち、「自分は正々堂々とプレーできたか?」を問いかけながら、テニスを楽しんでください。テニスは「相手があってこそ成立するスポーツ」です。終わったとき、互いに笑顔でいられるように務めたいですね。

松尾高司氏
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップテニス」のサポーターも務めてもらっています。