2025/08/29

ダンロップメッセンジャー 2025 8月号 小ネタコラム

いつもダンロップ並びに弊社テニス用品をご愛用いただき、誠にありがとうございます。
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先日、テニス雑誌の連載を担当している企画で「ボール」を取り上げたため、改めてテニスボールのことを考えてみたんですが、テニス道具の中で、もっとも気の毒なのが「ボール」ですよね。

ラケットもシューズも、時代とともにどんどん新しくなって、40年前とは「同じもの」と思えないほど様子を変えています。でも、テニスボールって「おっ、進化したね!」って思われたことないんじゃないかな。ずーーーっと同じ「黄色いモジャモジャ」。素材も製造方法も……もちろん進化してるんですけど、それが「姿として」表われない。こんな気の毒なテニス道具って、他にありませんよ。

それでいて、今のボールは、間違いなく、昔よりも酷使されるようになっていますね。シバかれまくり、こすられまくって、何も言わずに転がっている彼らの、こんな会話が聴こえてくるようです。

「昔は『いくわよぉ〜』『ハァーイ』って、ネットのあっちとこっちを優雅に行ったり来たり。あの頃は、飛んでる間も楽しかったよなぁ……。みんな僕らボールのことを大切に扱ってくれたし」

「今なんかさぁ、プロの試合球にされちゃったりすると、筋肉モリモリの女子プロにもシバかれまくり、打たれた後は、ケダモノみたいな声でドヤされるし」

「でさぁ、プロの試合だと、僕らの生涯って、たった11ゲームじゃん。御用済みになると、あとは捨てられるだけだもんなぁ」

「こないだ聞いたけど、プロの試合で使われた後に、また売られちゃったりすることもあるらしいよ。こっちは身も心もボロボロなのに……。僕らの生涯って、そうやって転がされまくるわけ……まっ、ボールだからしょうがないか(笑)」

こんなふうに、テニスボールは辛いわけです。とくに昔と今を比べると、気の毒なくらいに痛めつけられています。
負担増1:カーボン自体の進歩のおかげで、ラケットの軽量化に伴うスイング速度アップにより、ボールにとってはよりシビアな条件で叩かれることになり「負担増」。
負担増2:伸縮が起きにくくて硬いポリエステルストリングのせいで、ボールは潰されるため、コアボールの圧縮・復元力が疲弊させられて「負担増」。
負担増3:角ばったストリングが、フェルトに引っかかってこすり上げるから、フェルトが切れて摩耗して「負担増」。
負担増4:プレーヤー側のスイングスピードの高速化、インパクトパワーがはるかに強烈になったせいで、ボールを潰すわ・こするわで、ボールはクタクタになるほど「負担増」。

原材料の高騰や物価の上昇などにより、ラケットの価格は1.5倍。シューズは3倍という値上がり具合なのに、ボールだけはラケットやシューズの価格に比べると値上げ幅は小さいのです。他の要素が変化してしまったために、ボールへの負担は何倍にもなっています。シバかれまくるテニスボールって、本当に大変なんです。

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップテニス」のサポーターも務めてもらっています。