2025/10/31

ダンロップメッセンジャー 2025 10月号 小ネタコラム

いつもダンロップ並びに弊社テニス用品をご愛用いただき、誠にありがとうございます。
【ダンロップメッセンジャー】は、みなさまへ特別な情報提供をすることで、【ダンロップ】をより身近に感じていただくためのものです。
みなさまと一緒に良い商品を作り、ダンロップからの情報発信を目指すものです。

今回はテニスシューズの話です。先日、日本でもっとも多くのテニスシューズを売るショップのシューズ担当者たちと雑談をしていたところ、「売り上げランキングのトップは、ずっとワイドモデル」という話題になりました。昨今のテニスシューズ市場において、『ワイド』を謳うモデルは、そんなに多くはないはず……かと思っていたんですが、『○○』のワイドタイプ! ということで、けっこうあるんです。

みなさん気付いていないと思いますが、『○○ワイド』というモデル設定があるのは、日本企画のブランドだけです。海外ブランドのシューズは、「こいつはちょっと幅広かな」というのはあっても、モデル名に『○○ワイド』と付くものはありません。なのに、『○○ワイド』が、つねに売り上げ上位を占めるとは?

昔、日本人の足は「コウダカ・ダンビロ」……つまり「甲が高くて・足幅が広い」ものだとされてました。欧米の「朝起きて〜夜ベッドに入るまで」靴を履いている生活スタイルと、つい150年前まで、草履と下駄生活の日本とでは、足型だって違って当然ですよね。

でも昨今の日本人の足は徐々に細身になっています。それなのに、その店でシューズを探すお客さんの多くが最初に口にするのは「ワイドモデルを!」「自分はワイドモデルじゃなきゃダメ」なんですって。筆者に言わせりゃ「んなわけねぇだろっ!」なんですけど、売上順位の上位はかならずワイドモデル……という現実があります。その店のシューズ売り場では、丁寧な接客・アドバイスを行ない、試履きもたくさん行なってもらっているのですが、やっぱり選ばれるのは『○○ワイド』なんです。

でもね、ショップでの試履きは「動いてないときの感覚」です。そしてテニスシューズが必要なのは「コートでプレーしているとき」です!これって「違う」んです!

試履きしたうえでワイドを選ばれるお客さんのうち、「たしかに幅広いッスね!」「こりゃ幅広じゃなきゃダメだわ」という方もいらっしゃいますが、「自分はワイド」と思い込んでしまってる方が多いです。それから「とにかくラクにテニスしたい」という方もとーっても多いです。いや……それがわかってるんならいいんですよ。

でもテニスの競技者は「練習・試合のときに使うのがテニスシューズ」という特別な意識を持っていて、「プレーするときだけに履くバトルブーツ」という考え方をします。彼らは「緩いシューズ」では、素早い切り返しができず、踏み込み時のパワーロスが大きくて「中ズレすると、かえって疲れる」ということをわかってますから、だいたいが「タイトめのフィット感」を選びます。逆に「そんなに真剣じゃないし」「一日履きっぱなしでも平気なのがいい」という方は、アタマっから「ワイド、ワイド……」と探されます。

ただね……試履きのときは、プレー中のことをイメージして選んでください。最初に足を入れた(だけの)ときは、ちょっとタイトかなと感じても、「それが試合のときに効いてくれる」んです。「どのくらい勝ちたいか?」vs「どのくらいラクでいたいか?」を天秤にかけてみて、まず「自分の足を疑って」みてください。これまではワイドという謳い文句しか目に入らなかった方も、じつは「本当にワイドが必要なケースって、そんなに多くない」ということも知ってください。

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップテニス」のサポーターも務めてもらっています。