2025/12/18

ダンロップメッセンジャー 2025 12月号

いつもダンロップ並びに弊社テニス用品をご愛用いただき、誠にありがとうございます。
【ダンロップメッセンジャー】は、みなさまへ特別な情報提供をすることで、【ダンロップ】をより身近に感じていただくためのものです。
みなさまと一緒に良い商品を作り、ダンロップからの情報発信を目指すものです。

住友ゴム工業の【ダンロップ】といえば、日本のテニスファンによって長い間、圧倒的な支持を得てきた【ダンロップ フォート】がイメージされるでしょう。日本人の「ものつくりに対する基本的観念と技術力の高さ」が生み出した傑作【ダンロップ フォート】は、幅広い層から圧倒的支持を受け、「日本人が選ぶボールは【ダンロップ フォート】が基準」とまで言われたモンスターボールでした。公式大会の試合球であり、クラブやスクールでも使用され、世界へ羽ばたいたジュニアたちも【ダンロップ フォート】で育ったのです。

その後、時代が進むにつれ、テニスと向き合うスタイルの多様化、道具に求める考え方の違いなどによって、ボールにも性能的個性が求められるようになります。競技テニスへまっしぐらプレーヤーは、試合で勝つために、つねに本番仕様の「試合球」を使いますが、基本的に「試合に出ることを中心に考えてはいない」一般プレーヤーのみなさんは、多彩な関わり方をします。

◎テニススクールに通う(そのなかでも目的はそれぞれ)
◎自分たちでサークルを作り練習会に参加して楽しむ
◎学校の部活としてテニスに向き合う
いずれも「グループでテニスをする」プレーヤーで、そこに参加するみなさんは、同じボールを使うことになります。

選ばれるのは、いわゆる「練習球」。公式大会に使われる「試合球」とナニが違うのか?ですが、「試合球としての公認を受けているかどうか」ということもあり、販売価格は練習球のほうが安価に抑えられています。また、今では「練習球にもタイプによる多彩化」が進んで、プレーヤーのみなさんは、自分たちが必要とする「クオリティ」や「タイプ」を、ボールの素材や製法の違いなどのバリエーションを選べる時代になっています。

ただ、「ナニが違うの?」を、あまりよくご存じなく使われている方たちも少なくないので、この機会にちょっと知っていただけると嬉しいです。

いろんなスタイルでテニスと向き合う、われら一般プレーヤーですが、選んでいる練習球にはタイプ的な違いがあります。まず「練習球」に求められる要素として重要と考えられているのが『価格的な安さ・長持ち感』ですね。そこを押さえたうえで、ダンロップ練習球は3つの選択肢を用意しています。

ダンロップ フォートの打球感を練習球に落し込んだのが【セント・ジェームス】

【セント・ジェームス】の性能寿命を延ばした【セント・ジェームス・プレミアム】

現代の高速化テニスに対応して、味わいよりも「速さ」を個性としたのが【HD】

この3つをわかりやすく分類配置すると、大きく2つに括ることができます。「A・B」をコンベンショナルなコントロール系に愛される『セント・ジェームス 一族』。「C」を急進若手派が好んで使う現代的なスピード系『HD』。

ベテランプレーヤーの絶対的好みは【フォート】であるわけですが、これに馴染みを感じる層の練習球としては『セント・ジェームス 一族』が幅広く選ばれています。打球感がもっちりマイルドで、いわゆる「コントロール系」の練習球と言えます。

いっぽう、ハードなプレースタイルでスピード系のボールに親しみのある若手が練習球として好むのが『HD』。現代的な高速感があり、安い練習球のうちでもさらにコスト的なメリットがあるというのがウケています。

いったいナニが、この2種の違いを生むのでしょう? もっとも影響を与えているのが「フェルトの製法・構造」です。『セント・ジェームス 一族』は、【ダンロップ フォート】と同じタイプの「ウーブンフェルト」を使っています。これは、ウールやナイロン、コットンで紡いで糸を作り、それを「織物にした布」を起毛させて作るフェルトのことです。

ウーブンフェルトは特殊な織り方をしているため伸縮性に優れているので「マイルドな打球感」「もっちりした打ち味」となり、打球フィーリングを重要視するベテランプレーヤーや、広く共通感覚を得られやすいところから、サークルやスクールの練習球として選ばれることが多いですね。

対して、現代的な感覚を生む『HD』に使われるフェルトは、繊維素材は同様でありながら、フェルト自体の製法がまるで違っています。こちらは「織物を使う」のではなく、ウールとナイロンの繊維を混ぜて綿状にしたものをたくさんの針(華道に使う剣山をイメージしてください)でコットン生地に打ち込むことで、繊維同士を絡ませます。これを「ニードルパンチ製法」、一般に「ニードルフェルト」と呼ばれてもいます。

「ニードルフェルト」の特徴は、織物ではなく、伸縮性があまりないため、ウーブンフェルトよりもカチッとした打球感となることです。繊維がほつれにくいため、ボールとしての形状維持効果が高く、打球感は軽くなって、シャープに飛び出していく感じがあります。そのため打球のスピード感は増し、高速で打ち合うプレーヤーや、速い展開が求められる競技系プレーヤーの練習球に用いられるケースも多く、耐久性が高いのもメリットです。

「使用するフェルトの違い」は、その言葉以上に「大きな個性の差」を生みますから、どちらが自分に適しているかの判断をしやすいですね。ここでわれわれが心掛けるべきことは、違う個性のものがある!ということを「知る」ことです。なぜテニスショップにいろんな種類のボールが並んでいるのか? 同じダンロップボールなんだけど、どこがどのように違っているのか? を知ろうとしてください。

次に『セント・ジェームス 一族』の関係を分析してみましょう。「一族」の主流は【セント・ジェームス】で、日本における練習球の代表的存在として認知され、多くのプレーヤーに幅広くご愛用いただいています。

これには「親戚」がありまして、【セント・ジェームス・プレミアム】といいます。「プレミアム」の称号のおかげで「豪華な」「高貴な」と思われがちですが、それだったら【ダンロップ フォート】が君臨していますよね。

じつはこの「プレミアム」の特別さは「性能的に長持ちする」ことを意味しています。基本的な打球感や飛び性能は【セント・ジェームス】のオリジナルさを引き継ぎながら、フェルトの下に隠れている「コアボール」が特別誂えとなっているのです。

一般的に使用されるテニスボールの多くは「プレッシャーライズドボール」といって、コアボールの中に閉じ込められた「ガス内圧」が生む反発機能と、コアボール自体のゴム復元機能の両方によって反発力を維持しています。ただ、ゴム製コアボールにもミクロの微細孔があり、「打球によって」「時間経過によって」内部のガスは少しずつ漏れ、内圧は低下して、元の反発力が維持できなくなっていきますし、コアボール自体のゴム弾性も劣化します。

これをカバーしようというのが「プレミアム化ミッション」で、コアボールの中にダンロップタイヤ技術にも使われている「扁平タルク」を練り込みました。これは「扁平状の特殊構造を持つ柔らかな鉱物」で、ゴムとの接着性が高い素材。それがゴムの中で規則的に並ぶことで「たくさんの小塀」を作り、微細な孔からガスが抜けるのをブロックしてくれるという、プレミアム「ガスバリア作戦」です。

そのうえ扁平タルクは、ゴムとの高い接着性のおかげで、コアボールのゴム弾性を補強強化してくれて、コアボール自体の強さも維持力アップにもつながります。こうしたすべてによって、ボールの反発力を維持するのに貢献するのが「プレミアム」ということです。

【セント・ジェームス・プレミアム】は、【セント・ジェームス】よりもわずかに高価になってしまいますが、「プレーする頻度が少ない」「ボールの摩耗が少ないプレースタイル」のユーザーにとっては、大きな「耐久メリット」となります。近年では、【セント・ジェームス】→【セント・ジェームス・プレミアム】採用に踏み切るテニススクールが多くなっていることにも注目しています。それは「交換頻度を少なくしよう」という狙いではなく、「クールの終わりまで、生徒さんに快適な感覚でプレーしてもらえるように!」という心配りによるものです。

3タイプの練習球、それぞれに個性があり、お客様のプレー環境によって選び分けいただけるラインナップです。「ずっと同じダンロップボールを使っている!」という方も「もっと自分たちにベストなボールがあるかもしれない」と考え、ぜひ一度、いつもとは違うダンロップ練習球もお試しいただき、充実したテニスライフを満喫してください。