2026/07/23

ダンロップメッセンジャー 2026 7月号

いつもダンロップ並びに弊社テニス用品をご愛用いただき、誠にありがとうございます。
【ダンロップメッセンジャー】は、みなさまへ特別な情報提供をすることで、【ダンロップ】をより身近に感じていただくためのものです。
みなさまと一緒に良い商品を作り、ダンロップからの情報発信を目指すものです。

テニスラケットが大きく進化したのは1980年代。まず「素材革命」によって、木製フレームの時代が終わり、「CFRP(カーボン繊維強化プラスチック)」がフレームの主素材となって、反発性能と耐久性、そして軽量性が飛躍的に向上します。この時期に大活躍したスーパースター:ジョン・マッケンローは、ダンロップの名品ウッド【マックスプライフォート】→【マックスプライマッケンロー】、そしてナイロン+カーボン短繊維の【MAX200G】を相棒に、フレーム素材の過渡期にスポットライトを浴びます。

次が「ラージサイズ革命」で、それまで不文律的に「70平方インチ」だったフェイスサイズが、1.5倍サイズの「110平方インチ」が登場。これによって、レギュラーサイズはほぼ消滅して、中庸的サイズである「85平方インチ:ミッドサイズ」が主流となります。

こうした流れに1988年の「厚ラケ革命」が続いたことで、ラケットは高反発化へ向かって一気に加速して、たったその10年間で、「習得するのは難しいテニス」から、「お年寄りでもラリーを楽しめるテニス」へと進化しました。「木製+レギュラー」はほぼ完全に消え、「カーボン+大型フェイス+軽量+高反発厚ラケ」などが登場して、ダンロップ【XL MEGA IMPEDANCE TITANIUM】という「125平方インチ+32mm厚」というスーパーモデルも生み出します。

こうした急激で派手な革新時代の陰に隠れながら、地味に生まれ変わったのが「グリップ」でした。第二次世界大戦前は、木肌が剥き出しだったグリップでしたが、戦後は「天然皮革」が巻かれて、手のひらに馴染みやすく、手汗も吸ってくれるようになりました。ただそんな天然皮革も、表面は汗を吸って時間とともに硬化して、ゴツゴツして滑るようになってしまいます。

フレーム素材・フェイスサイズなどが「変化の波」に乗るテニスラケット形態は、地味なところで「シンセティックグリップ」なるものを生み出します。厚手の不織布ベースの表面にウレタンコーティングすることで、クッション感のある握り具合と、手のひらに吸い付くようなグリップ感が与えられ、当初は「フワフワしすぎて気持ち悪いし、不安定」と揶揄されながらも、各ラケットメーカーが「天然皮革よりもはるかに安価なシンセティックグリップ」へいっせいにシフトしたことで、テニスショップの壁の風景が、完全に変わったのです。

昔の天然レザーグリップ時代から、「グリップが滑らないように」という「手汗対策」には、さまざまな方法がありました。手汗をいちいち拭うために「腰にタオルをぶら下げる」とか、「手のひらにネバネバ液を塗る」とか、逆に「サラサラパウダーを振りかける」とか、いろんな滑り止めがありましたが、結果的に多くの需要があったのが『オーバーグリップ』というスタイルでした。

天然レザーグリップ時代の1980年代初頭には、包帯のような布テープを巻いていたのが、粘着剤を沁み込ませた紙メッシュテープなどに進化し、さらに不織布基材テープの表面に大きな気孔を設けた状態でウレタンを重ねて、「ドライタイプ」が生まれます。これを多くのプロが愛用したことで世界的に認知されて広まり、「テニス通」たちも、こぞって「ドライタイプ」を巻くようになって、今日も「汗を吸ってくれる感じが好き」という愛用者が少なくありません。

しばらくして登場したのが「ウェットタイプ」のグリップテープで、これが爆発的な人気を獲得。各テニスメーカーがラインナップし、グリップテープ中心のアクセサリーブランドまで登場して、世界中に広まっていきました。「手に吸い付くようで滑らない」「しっとりして握り心地がいい」など、「ドライタイプ」を押しのけて、「ウェットタイプ」は大人気を博し、今日ではグリップテープの大多数を占めるようになりました。

しかし、天然皮革製グリップを駆逐した「シンセティックグリップ」も「ウェットタイプ」と同タイプの握り心地。それなのに「グリップテープと同様の効果」があるシンセティックグリップに「さらにその上から巻く」のが当たり前のようになったのは、なぜでしょう?

その答はズバリ、「安価で交換できる」というメリットがあるからです。「元グリ」と呼ばれるようになったシンセティックグリップは、表面のウレタンコーティングが剥がれても、気軽に巻き替えるには手間も、コストもかかります。でも「その上から巻くグリップテープならば、ダメになったら巻き替えられる」わけで、使い手にとってはフレッシュな握り心地をキープすることができるのです。

この頃から「グリップテープ」は『オーバーグリップ』と呼ばれるようになります。元グリの「さらに上から巻く」というイメージですし、機能的には「天然レザーもシンセティックの元グリもグリップテープ」と呼べるわけですから、それらとの差別化のために便利な呼び名として多用されるようになります。

つまり「どんどん巻き替えながら使う」のがオーバーグリップなわけで、その存在意義は『グリップ機能』です。プロ選手たちは、ラケットの唯一の接点であるグリップに、つねに100%のグリップ性能を与えるために、試合本番の前には、すべて新しいオーバーグリップに巻き替えます。彼らにとっては「1回使ったら終了!」なわけです。ただ一般プレーヤーには「毎回、プレーするごとに」というのはキビしいですよね。

そもそもオーバーグリップの機能的耐久性とは……とくにウェットタイプの場合……表面のツヤツヤ光沢が消えた時点で、「あの」オリジナルの感覚はなくなってしまいます。オーバーグリップの機能は『表面が命!』「ツヤツヤ光沢がなくなる」→「ザラザラ感が増す」→「ボロボロになる」……こうなっては巻いている意味などありませんし、汚れて清潔さを失ったオーバーグリップは、見栄えを悪くするだけでなく、汗を吸って雑菌の温床となります。それを握った手で試合後の握手を求めるのは、対戦相手に対しても失礼ですよね。

「オーバーグリップは、どんどん巻き替えて使う!」……だから「安い!」オーバーグリップの単価は、1本あたり「300円〜400円」です。テニスギアの中で、もっとも安価な「機能アクセサリー」です。「汚れたな……」と感じたら、いつでも巻き替えられるように、テニスバッグに常備したい、ナンバーワン・アイテムですね。

ここまでオーバーグリップについて話してきましたが、なにか忘れてはいませんか?そう!元グリだって汗を吸うんです。オーバーグリップの下にあるので、汗が乾きにくく、清潔な状態を保つのが、より難しいと言えます。ただ、オーバーグリップの下に隠れて見えないから、気が付かないだけです。それを目にするのは「オーバーグリップを巻き替えるとき」だけで、巻き替えを人任せにするプレーヤーは、オーバーグリップの下の世界を、まるで知らないわけです。

ですから、元グリも「定期的に巻き替えが必要」です。元グリの巻き替え用は『リプレイスメントグリップ』として販売されています。多くの汗を吸った元グリには、汗が蓄積されて、菌が増殖するだけでなく、潰れて劣化してしまうことで、本来備わっている「クッション効果」が激減してしまいます。オーバーグリップを巻いていると、元グリのクッション性が失われていることに気付きにくいかもしれませんが、「グリップサイズが細くなった気がする」と感じたことはありませんか?「気がする」ではなく、実際に「細くなっている」のです。

元グリは、グリップへのパワー伝達、手のひらへのクッション機能などを担う、グリップの土台となる重要な存在です。「見えないから気にしない」ではなく、ラケットを大切にする気持ちがあるのなら、「せめて1年に1回」「できれば半年に1回」、普段は見えない機能に目を向けて……『リプレイスメントグリップだって交換しよう!』