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「左手で字を書く人」の器用さにはビックリします。アラビア語などは「左←右」と書き進むので、左利きの方にとっても便利でしょうが、ラテン語・英語・日本語……つまりほとんどの世界の文書って「左→右」に書くんです。そうすると、左利きの場合、書いたばかりの文字の上を小指でこすることになって「不便だろうなぁ〜」なんて勝手に思っちゃいます。
では、世界にどのくらい「左利き」の人がいるかというと、「日本:約10%前後」「世界:8~15%(北欧にやや多い)」というのが一般的な比率らしいです。世間のほとんどのものが「右利き向け」にできているので、左利きの方たちは「やりにくくてしょうがねぇ!」と、しかめっ面をするでしょうけど、スポーツの現場では「そりゃこっちのセリフだよ!」と右利き大勢派に言い返されるのです。
とくに日本は「伝統的に右利き社会」です。剣術・武具・弓など、すべてに様式があり、右手優先。武士は「刀は左腰に差し、右手で剣を抜く」「左手で弓を持ち、右手で矢を放つ」が作法・常識であり、馬上弓射すること想定して作られた鎧の構造なども「右利きにとって合理的に」できていて、左利き用の鎧」なんてものはありません。
駅の自動改札機だってそうです。全国津々浦々「右手でタッチ」するように設置されているし、ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、パチンコの球打ち出しハンドルは、かならず右側下にあり、「左利き専用台コーナー」なんてありません。そんな世間ですから、昔の親は「この子、左利きかも?」と思ったら、徹底して「右利きへの矯正」を押し付けたものです。
そんなこんなで、少数派である左利きの方々は、しんどいながらも「右利き社会」に順応せざるを得なく生きてらっしゃるわけですが、ことスポーツに関しては、めちゃめちゃ有利じゃないですか!野球では左バッターのほうが一塁に近いから……という理由で、右利きなのに「左打ち」にしたり、バレーボールの左利きアタッカーは、相手ブロックを抜くのにとても有利ですよね。
『みんなとは逆……というメリット』が、スポーツ界では明らかに存在します。とくにテニスでは、『左利き』だってだけで、圧倒的なプレッシャーを突き付けることができます。なにがって……サーブですよ、サーブ!左利きのサーブ!!!
最近のトッププレーヤーは、左利きの練習相手もたくさんいるおかげで、そんなに混乱する姿を見ることはありませんが、1980年代って、明らかな「左利き有利時代」でした。ジョン・マッケンローやマルチナ・ナブラチロバの「スライスサーブ/キックサーブ」は、トッププレーヤーたちさえも「左のカオス」に引きずり込んでいたものです。
ましてや我ら一般プレーヤーにとっては、大多数の対戦相手が右利きですから、左利きのプレーヤーって「悪夢」です。まず相手が左手で打ってくるビジョン自体が「普通じゃない」のに、回転のかかったサーブなんか、「不条理」な方向へ跳ねるじゃありませんか。
相手が右利きならば、スライスサーブだろうが、激しいキックサーブだろうが、跳ね上がり方は脳の奥深いところに記録されていますから、身体は自動的に反応してくれます……ホントに反応しますよ!ところが、放たれたサーブの弾道が「逆の弧」ってだけで「なんか変だな」って思い、それがコッチへ向かってきたり、アッチへ跳ねていっちゃったり……。脳内のシナプス神経回路がプッツンプッツン切れちゃうんです。
「左利きだから反対に跳ねるんだ!」だとわかっていても、身体の自動反応は制御できないいんです。なんたって「自動」ですから!ましてや、ダブルスで「右利き×左利き」「ペアルックのウェア」との対戦なんて、そりゃもう脳がどうかなっちゃいます。
ですから、左利きの練習相手は「最高レベル」で大切にしなくちゃなりません m(_ _)m

松尾高司氏
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップテニス」のサポーターも務めてもらっています。