アンダーソン選手との出会いは2013年。ダンロップの担当者が、まだまだ粗削りだが伸びしろのある選手ということで目を付けたのが契約のきっかけでした。もちろんそれだけでは、契約には至りません。選手にとって一番大事な武器であるラケットがうまくフィットするかどうかが肝でした。
当時スリクソンブランドで販売していた「REVO CX 2.0 TOUR 18×20」をテスト。破壊力(パワー)とコントロール性能、フィーリングが気に入り、アンダーソン選手と2014年シーズン最初から契約をスタートさせました(契約当時20位)。
心配していたラケット切り替え1年目の戦績は順調に推移し、ランキングも16位にまで上昇。グランドスラムではコンスタントにベスト16に入り、安定した実力を見せてくれていました。
そして迎えた2018年「ウィンブルドン」。これまで「ウィンブルドン」ではベスト16が最高成績でした。
4回戦では苦手とするモンフィス選手に競り勝ち、ベスト8進出。
準々決勝では、昨年覇者でMr.ウィンブルドン、R.フェデラー選手との対戦に。セットカウント0-2ダウン。誰もがダメかと思いマッチポイントも握られました。ただそこからのアンダーソン選手が凄かったのです。ベースラインからの打ち合いでもフェデラー選手を圧倒。そしてついに私たちはその信じられない光景を目のあたりにすることになる…芝の王者フェデラー選手から勝星をつかみ取ったのです!フェデラー選手はこれまで芝で17連勝記録を保持していた絶対王者。アンダーソン選手のこのときの強さは光っていました。
準決勝では、J.イズナー選手を相手に過去2番目の最長試合記録(6時間36分)の死闘を繰り広げました。イズナー選手は今大会準決勝まで95ゲーム連続サービスキープをしていた屈指のビッグサーバー。そのイズナー選手に勝利し、テニスの聖地で決勝の舞台に立ちました。決勝戦ではジョコビッチ選手に敗れたものの、「ウィンブルドンファイナリスト」という称号を手に入れました。
大会後のランキングでトップ5入りを果たしたアンダーソン選手。ダンロップ・スリクソンとともに歩んできたこの5年間。ラケットとともに自身のプレーも進化させました。
2018年8月、ダンロップブランド価値向上の取り組みの一環で、「USオープン」開幕前のNYでお披露目イベントが開催されました。その翌月には東京で記者発表会を実施。「楽天ジャパンオープン」で来日していたアンダーソン選手にも出席していただき、発表会も盛り上がりました。
2018年10月にはツアー5勝目を挙げ、自身初の「ATP Finals」出場を確定させました。ブランドがスリクソンからダンロップへチェンジし、初タイトルでした。「ATP Finals」では、準決勝に進出しましたが、またもジョコビッチ選手に敗退となりました。
そんな矢先、2022年4月、ダンロップの担当者にアンダーソン選手から1本の電話が入りました。
「引退したいんだ。なんで戦っているのかわからない。」「今コートに戻りたいという気持ちにもならない」という内容でした。2人とも泣きそうになりながら話しました。
「ダンロップにはすごくお世話になったから、ダンロップと一緒に引退のことを公表したい。」アンダーソン選手はそう言ってくれました。思いやりを大切にしてくれるアンダーソン選手。今思えばこういうアンダーソン選手の人柄もアンダーソン選手契約のきっかけでした。
引退後は半年ほど休養し、その間に今後についてのことを考えるというアンダーソン選手。第2の人生、もしテニスに関わるのであれば、もちろんダンロップとしては応援していきたいと思っています。ぜひテニスコートに戻ってきてほしいと思っています。
今までダンロップの看板選手として、たくさん活躍をしてくれたアンダーソン選手には感謝しかありません。
本当にありがとう。
彼の引退を聞いて大変驚いています。
昨年は復活のツアー優勝も果たし、また強いケビンが見れるかな?と思っていた矢先の出来事でした。ここ2年近くコロナ禍ということで、彼と一緒にあまり時間を過ごすことが出来なかったことは今となっては悔いが残るところです。
選手1人で毎日同じルーティンをこなすことはモチベーションを保つ上で大変な困難があろうことは想像に難くありません。ケビンも格下の相手に敗れた時や、自分の納得のいくプレーが出来なかったことも多々あったと思います。今回そんな状況も重なりモチベーションがぷっつりと切れてしまったのかもしれません。
これからはダンロップツアーチームのリーダーとして、引き続きダンロップを牽引していってほしいと思います。
これだけの選手に、もう自分は巡りあうことは出来ないかもしれませんが、ケビンに経験させてもらったことを引き継いでいくことが自分の責任だと思っています。
最後に、ウィンブルドン決勝の舞台に連れて行ってくれてありがとう!
チームのメンバーは皆ケビンを誇りに思っています。
住友ゴム工業(株) スポーツ事業本部 テニスビジネス部 ツアー・プロ担当 課長代理 戸田公平
生年月日:1986年5月18日(35歳)
プロ転向:2007年
「第5回USオープンスポーツマンシップ賞」受賞(2015年9月)
ATP選手会副会長(2016年9月~)
ツアー優勝:シングルス7勝(7勝のうち5勝ダンロップ・スリクソンラケット)、ダブルス1勝
グランドスラムの主な戦績:US OPEN(2017)準優勝、ウィンブルドン(2018)準優勝
その他:ATP FINALS 準決勝進出(2018)
キャリアハイランキング:5位(2018年7月16日)