2021/03/17

SRIXON製品情報

《スリクソン初! “下打ち”に強い飛び系アイアン》ストロングロフトなのに高弾道『スリクソンZX4アイアン』

住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術グループ
平野智哉(ひらの・ともや)

2001年入社。主にゼクシオのゴルフクラブの設計を担当したのち、2012年から4年間、アメリカ・クリーブランドゴルフ社に出向し、R&Dテクニカルコーディネータ兼プロ対応業務に従事。2016年から再び国内にてゴルフクラブの設計を手掛け、Z85シリーズよりスリクソンモデルの開発責任者を務める。

Q.同じスリクソンZXシリーズのZX7アイアン、ZX5アイアンはアメリカ主導で開発されたそうですが、『ZX4アイアン』(以下、ZX4)の開発はどんな形で行われたのでしょうか?
平野 商品企画は日本からスタートし、開発は日米それぞれの開発チームが協力しながら行い、特に性能評価は日本中心に行いました。というのも、いわゆる飛び系アイアンは日本で生まれたもので、アイアン市場の中で飛び系アイアンが占める割合が次第に高まったのも、日本が先だったからです。

Q.ダンロップには、すでに「ゼクシオクロス」という飛び系アイアンがありましたが、スリクソンブランドでも飛び系アイアンを作ろうというのが、ZX4の企画のきっかけなのでしょうか?
平野 そうですね。市場の大部分を占める、海外ブランドのクラブを好んで使うようなゴルファーについて考えた時、ゼクシオクロスは性能面では満足してもらえるかもしれないものの、アベレージゴルファーにフォーカスしたモデルであるために、外観に関しては満足してもらえないだろうと。そのため、そうしたゴルファーに向けて、スリクソンブランドで作るなら、飛距離性能が高いだけでなく、シャープで精悍な形状・外観にすることが必要だろうと考えました。

Q.開発は具体的にどんなことから始めたのでしょう?
平野 実は、それ以前から開発は進めていました。ご存じの方もいると思いますが、以前、スリクソンには中空構造のユーティリティ「U85」というモデルがあり、その#5や#6は、アマチュアが打っても高さと飛距離が出るので、距離のある池越えのパー3のティショットなどに使えて便利だと、かなり高い評価を得ていました。それをヒントに、「全番手作ってみたらどうなのだろう?」と考え、開発を進めていました。そこに、「スリクソンでも飛び系アイアンを」という企画の話が持ち上がった、というストーリーなのです。

Q.なるほど。飛び系アイアンにつながるアイディアは以前から温めていたということですね。では、ZX4の開発のポイントについておしえてください。
平野 搭載しているテクノロジーについては、ZX5や「スリクソンZX ユーティリティ」と共通のものを盛り込んでいます。たとえば、反発性能に関しては「メインフレーム」構造によってフェースを大きくたわませて、非常に高いボールスピードを実現しています。また、重心を低く、深くするためにトゥ側に入れたタングステンニッケルウエイトや、どんなライでも抜けをよくするために新しいソール形状を採用したのもZX5と同じです。それらに加え、ターゲットとするゴルファーはとにかく飛距離を求めているので、速いボールスピードと上がりやすさを両立させるためにソールの幅を広く設計しています。

Q.飛距離性能とソールの幅はどう関係しているのでしょう?
平野 ZX7やZX5は、しっかり上から打ち込めるゴルファーをイメージしていますが、飛び系アイアンを使うゴルファーは、そういうスイングではなく、払い打つタイプの方が多いだろうと想定しました。ソール幅を広めにしたのは、そんなレベルスイングに対応するためです。また、そうしたゴルファーの打点は上から打ち込む場合より低くなることが想像できます。そのため高反発エリアの位置を低くする必要があるのですが、これについては、低くて深い重心設計に加え、ユーティリティと同じ中空構造を採用することでフェース全面の反発性能を高め、高反発エリアを下部まで広げています。

Q.なるほど。その結果、飛距離が出るだけでなく、高い弾道のショットが打てるということですね。
平野 はい。ただ、先ほどもお話ししたように、当初はユーティリティを短い番手にまで広めることをめざしていて、飛距離を最優先していたわけではなかったんです。そのため、何人かの女子プロに試作モデルを打ってもらったところ、「形はすごくいいんですけど、あまり飛ばないですね」「上がりやすいけど、ボールが前に行かないです」と言われてしまいまして(苦笑)。でも、その言葉を聞いて、「高さが出て、スピンも入るのだから、適正なロフトに立てれば飛距離も出るはずだ」という考えに辿り着きました。

Q.冒頭で、ゼクシオクロスの外観との違いのお話がありましたが、そこもZX4の大きな特長なのでしょうね。
平野 おっしゃる通りで、アドレスでの見え方は、ZX5と同じように、ヘッドはあまり大きくせず、上級者モデルのような雰囲気を出しながら、実際に打ってみるとやさしい、という形状をめざしました。ポイントはトップラインの後ろ側で、端をミラー仕上げにすることで、トップラインが厚く見えないように工夫しています。また、キャディバッグに挿した時のヘッドの見え方も、スリクソンが好きなゴルファーであれば重視するだろうと考えて、仕上げを工夫しています。具体的には、ソールに、光る部分とそうでない部分を設けて、あまりボテッとした感じに見えないようにしました。それにより、他の人が見た時にも「この人は上手いのかな?」「上級者が使っていそう」という印象を持ってもらえると思います。

Q.先ほど女子プロのテストのお話がありましたが、ZX4はプロも使うのでしょうか?
平野 おそらく女子プロになるとは思いますが、すでに淺井咲希プロと安田祐香プロは、沖縄での今年の初戦から#5を使っています。他の選手についても、たとえばZX5などを愛用している場合は、#4や#5のロングアイアンをZX4に替えるというケースはあり得ると思いますね。

Q.シャフトも、ZX7、ZX5とはバリエーションが異なるようですね。
平野 はい。ユーザーとして、レベルに振るアベレージゴルファーを想定しているので、ZX5と同じDiamana ZX、N.S.PRO 950GH neoに加え、さらに軽いスチールシャフトのN.S.PRO ZEROS 8をラインアップしました。これはZX4だけの設定です。

Q.アイアンというのは、ドライバーにくらべて大きく変えるのが難しいようにも思いますが、ZX4の開発で苦心された点はあるのでしょうか?
平野 はい。今回のモデルがターゲットとしたのは、これまでスリクソンがユーザーとして想定してこなかった層のゴルファーであり、先ほどからお話ししているレベルに振るタイプのプレーヤーです。そんなゴルファーに対し、いくら飛距離重視とはいえ、たんにロフトを立てるだけでは弾道が低くなってしまってキャリーが稼げず、結局は“使えない”アイアンになってしまいます。ですから、どんなゴルファーがターゲットなのかをしっかり押さえて、その特性やプレースタイル、そしてニーズをきちんと見極めるというのが、今回苦心した点かもしれません。ただ、それができた結果、重心を低く、深くすることにより、高反発エリアの位置を下げ、いわゆる下打ちに強い設計にできました。それがZX4の大きな特長であり、海外ブランドの飛び系アイアンとの差別化ができた部分だと思っています。

Q.ZX4が加わったことで、スリクソンのアイアンのラインアップは3つになりました。改めて、それぞれどんなゴルファーに使ってほしいのか教えてください。
平野 精悍な顔つきにしているのは3つのモデルの共通点ですが、性能面でいうと、スリクソンのクラブは、モデル名の番号が小さくなるほどやさしく、寛容性が高くなっています。そのため、飛距離よりも操作性とコントロール性能、打感を重視する方にはZX7を選んでいただければと思いますし、ZX5は、操作性も欲しいけれど、それ以上に飛距離が欲しいというゴルファーにオススメです。そしていちばんやさしいZX4ですが、何よりも飛距離が優先で、とにかくやさしく飛ばしたいというゴルファーに選んでいただきたいですね。また、コンボアイアンとしても様々な組み合わせが可能なので、スイングタイプやプレースタイルに合わせて、幅広い選択肢の中から選んでいただければと思います。

■『スリクソン ZX4アイアン』の製品情報はこちらをご覧ください。
https://sports.dunlop.co.jp/golf/srixon/zx/iron/zx4/