2025/01/27

SRIXON製品情報

《 NEW『スリクソン Z-STARシリーズ』 誕生STORY VOL.2 》新たな技術によってプロからの要望に応え、3つの個性を確立

 ゴルフの実力やキャリアにかかわらず、ゴルフを楽しみ、自分の目標に向かって挑戦し続けるゴルファーのためのボール――。そんなコンセプトで商品企画をスタートさせたNEW『スリクソン Z-STARシリーズ』は、ターゲットを拡大しヘッドスピードがあまり速くないゴルファーにも対応することをめざした。もちろん、数多くのユーザーがいるプロ・上級者からの要求に応えることも必要だった。
「開発チームとしては、ユーザーからのフィードバックを収集しつつ、国内外の契約プロに対しヒアリングを集中的に行いました。その結果、多くのプロが前作に満足しているものの、やはり3モデルそれぞれに対し何らかの要望を持っていました。具体的には、『Z-STAR』(以下、Z-STAR)は、特長である〝やわらかさ〟、『Z-STAR ♦︎ DIAMOND』(以下、DIAMOND)は、ミドルレンジでの高スピンを維持しつつアプローチでのさらなるスピンコントロール性能、そして『Z-STAR XV』(以下、XV)は、強みである大きな飛びを実現しつつショートゲームでのスピン性能を、それぞれ向上させてほしいというものでした。それらの課題を克服するため方策を、各部材の設計にどのように盛り込むかについて検討を始めました」
 と、開発を担当した橘 康介は語る。
 検討の結果、開発チームがすべてのモデルで欠かせないと考え、掲げた目標のひとつがアプローチスピン性能の向上だ。そして、その達成のために採用したのが第1回でも登場した新開発「高スピン バイオウレタンカバー」である。
「従来も採用してきた原材料の中のポリオールの分子設計を変化させることで、カバーの硬度は同じでもスピンが増えることが分かりました。ただし、変えすぎると、アプローチスピンだけでなくドライバーでのスピンまで増加して飛距離をロスしてしまうので、変化させる最適な度合いを探るために多くの時間を費やしました」(橘、以下同)
 そうして完成したのが、ロングショットでのスピンはそのままに、アプローチではスピンが増えるカバー。それに新たに使用したのがトウモロコシ由来の素材「バイオポリオール」だ。前作までは石油由来のポリオールを使用してきたが、今作では環境面に配慮し、その一部を植物由来のものに置き換えた。
「アプローチ性能のアップと、スリクソン・ボールとしてめざすSDGsを両立するための手段として、まずはカバー材料として植物由来の原材料に着目し、その分子設計と評価を行いました。数ある植物由来の材料の中から、性能面や商品化までの期間を検討した結果、安定的な供給が可能なトウモロコシ由来のバイオポリオールを選んだのです」
 新しいカバーの搭載により、アプローチでのスピン性能は3機種すべてで向上させることに成功。真っ先に試打をしたプロたちからも高い評価を得た。

橘 康介(たちばな・こうすけ)
住友ゴム工業(株) スポーツ事業本部 商品開発部 ゴルフボール技術グループ 課長代理
2009年入社。以来、2016年まで『スリクソン Z-STARシリーズ』の開発に従事。その後、ゴルフクラブの開発、「Roger Cleveland Golf社」への出向(アメリカ駐在)を経て、2023年より再び『スリクソン Z-STARシリーズ』の開発を担当。

 新たなカバーの開発に加え、橘たち開発陣が3機種それぞれ課題を解消し、より特長を分かりやすくするために行ったのがコアの変更だ。
 橘いわく、一般的に、アプローチでのスピンを増やそうとして単にカバーを変えるだけでは、ロングショットのスピンも増えてしまう。そこでNEW『Z-STARシリーズ』では、ロングショットでのスピンを抑えるためにコアをチューニングした。その方法は3モデルでそれぞれ異なり、硬度分布を少しずつ変えて各ショットのバランスがよくなるように調整している。
「今回、カバーばかりが注目されがちなのですが、3モデルそれぞれのトータルの性能は、実は中身の中間層やコアの微妙なチューニングによって決めています。コアの原材料の配合だけでなく、コアをプレスする際の条件を変えるだけでかなり性能が変わるので、最適なチューニングをするのは、地味ですがかなり大変な作業でした(苦笑)」
 そして、コアのチューニングには別の目的もあった。
「ごく簡単に言うと、ボールのコンプレッションというのは大半はコアの硬さで決まります。3モデルのうちNEW『Z-STAR』は、ヘッドスピードのあまり速くない人が打ってもソフトに感じる打感と高い直進性を実現するために、従来にも増してやわらかさが際立つように設計することになりました。そのために、コアだけでなく中間層も少しやわらかくするという合わせ技でコンプレッションを下げています」
 ヘッドスピードのあまり速くないゴルファーが、コンプレッションの低いボールを使うメリットは他にもあるという。
「ロングショットの場合、コンプレッションの低いボールはヘッドスピードにかかわらずスピンが減ります。直進性が高くなるのはそのためです。それと、ボールを遠くに飛ばすには〝高初速・高打ち出し・低スピン〟という3要素が必要ですが、ヘッドスピードがあまり速くない方が飛ばすには、スピンを減らすのがより効果的です」
 では、NEW『XV』のコンプレッションはどうなのか?
「『XV』は、ご存じのように飛びに特化したボールで、〝しっかりした打感〟をブレずに追求してきたので今回もやわらかくすることはしていません。ただ、ドライバーの飛距離は維持しながらも、アイアンでもスピン性能が上がるように設計、チューニングしています。実際、アイアンのスピンが増えたことは、シェーン・ローリー選手(2019年全英オープン優勝)をはじめPGAツアーの多くのプロたちに実感してもらっています」
 そして第1回で紹介したように、飛距離・アプローチのスピン量・フィーリングが3モデルの中で真ん中に位置するNEW『DIAMOND』。
「コンプレッションは、前作ではXVと同じでしたが、今作では少しだけやわらかく設計しています。実は前作は契約プロたちからの評価が非常に高く、〝あまり変えすぎないでほしい〟という声が多く聞かれました(苦笑)。そのため、長めの距離でもアイアンでしっかりグリーンを狙っていけるスピン量という最大の強みとドライバーの飛距離は維持しつつ、アプローチ性能を上げるためにコアをチューニングしました」
 このように、三者三様のコアのチューニングによって、3モデルの個性と強みを際立たせることに成功した。

 NEW『Z-STARシリーズ』を打った契約プロたちが口を揃えるのが、アゲンストや横方向からの風に対する強さだ。弾道の頂点から着地までの飛行時間が長いのも特長で、ショット後半でスキージャンプのようにボールがひと伸びする。
 プロたちが高く評価する〝飛び姿〟を生み出すのが、前作から踏襲した「強弾道 338 スピードディンプル」である。このディンプルの優位性については、ブルックス・ケプカ選手のこんなエピソードがある。ケプカ選手がまだ他社のボールを使用していた頃のことだ。
「ケプカ選手は、松山プロと同じ組でプレーした時に〝ヒデキのショットは球が力強く見える〟と感じたそうです。そこでケプカ選手に、試作段階だった前作の『DIAMOND』をテストしてもらう際に自身のボールも打ってもらいデータを比較しました。それを見ると、スピン量などはあまり変わりませんでした。それなのにスリクソンのボールのほうが球が力強く見えるのはなぜなのか?〝それはディンプルの効果としか考えられない〟とケプカ選手は言ったそうです」
 ケプカ選手の指摘は、橘たち開発陣の実験でも明らかになっていたことであり、これが一つのきっかけとなりケプカ選手はTEAMスリクソンの一員となった。
 NEW『Z-STARシリーズ』は、すでに契約プロの多くが昨シーズン途中から実戦に投入している。そのトップを切ったのが松山プロで、昨シーズンのPGAツアーでの2勝(ザ・ジェネシス招待、フェデックス・セントジュード選手権)もNEW『XV』で挙げたもの。また国内女子ツアーでも岩井 明愛、千怜の両プロがNEW『XV』を使い、既に1勝ずつしている。
 プロ・上級者からの高い評価に満足することなく、新たな層のユーザー獲得をめざして開発されたNEW『スリクソン Z-STARシリーズ』は、環境への対応という点でも画期的と言える。それについて橘は次のように話す。
「これまでは、主に飛距離やスピンコントロールなどの性能や打感の向上をめざして開発してきましたが、今回は“サステナブル”という要素も開発の新しい軸に加わりました。環境対応には以前から開発として取り組んできていて、現時点でできること、少なくとも他のトップメーカーがやっていないことをやろうと、カバーに植物由来の原材料を取り入れました。ですので、NEW『スリクソン Z-STARシリーズ』では、性能面の進化を体感いただくのと同時にサステナブルという視点も選択の基準に加えていただけたらうれしいです」。






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