2025/12/04

SRIXONツアー情報契約プロレポート

《プロ転向記念・中野 麟太朗 スペシャルインタビュー》男子プロゴルフ界を盛り上げる1人になりたい


《 祝・日本アマ 初優勝!! 中野 麟太朗さん スペシャルインタビュー 》次はプロトーナメントで優勝をめざす。アマとしてマスターズに出るのも夢

 アラブ首長国連邦(アブダビ)、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリス(イングランド、スコットランド)、アメリカ、シンガポール、そして再びアラブ首長国連邦(ドバイ)――。
 中野が今年、アマチュアとして出場した海外競技の開催国である。オーストラリア(4月)では豪州男子ツアーの予選会に挑戦し、見事2025/26シーズンの出場資格を獲得した。だが、中野自身がターニングポイントとして挙げたのはスコットランドでのプレーだった。

「いきなりリンクスに行っても通用しない。その前にセント・アンドリュースで行われる試合に出てみたらどう?」
 6月の「全英アマチュアゴルフ選手権」(以下、全英アマ)の本選への出場が決まっていた中野に、JGAのコーチであるライアン・ラムズデンはそう声をかけた。ラムズデンはスコットランド出身である。中野はそのアドバイスを受け入れ、全英アマの前哨戦として“聖地”での試合に出場した。ところが……。
「もうズタズタにやられました(苦笑)。試合前はもちろん予選通過を考えていたんですけど、1ホールで“大やらかし”をしてしまって……。全然ダメでしたね」
 その結果以上にショックを受けたのが、リンクスの攻め方だった。
 それまでの中野は、常にピンを狙うゴルフだった。それは、ピンの近くに落とせばボールが止まるからだったが、

「ライアンは『ピンを狙っちゃダメだ』と。『手前の地面の傾斜がこうなっているんだから、あそこに落としてピンに向かわせろ』と言われて、僕は『はぁ……』と(苦笑)。ライアンは見ている場所が違うんです。それはティショットでも同じで、低く抑えるのはもちろん、転がりすぎる時にはスピンを入れて止めろと言われたり。1打に関する情報量が多すぎて、慣れるまでは頭の中がパンクしていました(苦笑)」
 また、それまで中野は、どうすれば風に強い球を打てるのかについて、ずっと頭を悩ませていた。それが、ラムズデンとリンクスをプレーするうちに、風に乗るような球を打てばいいのだと気づいたという。

「僕が打つ球は、アゲンストだけでなく、横風にも乗りすぎてしまう感じがありました。それで、風を程よく使うというか、“この風ならこれぐらい流れる”という計算をしやすい球を打てるように練習しました」
 毎回上手くいったわけではないものの、そのショットをマスターしたことで中野のゴルフは大きく変わった。ロイヤル・セントジョージズ(イングランド)で開催された「全英アマ」を勝ち進むうちに、ラムズデンとは、狙いどころに関して意見が一致するようになったという。そして、初出場にしてマッチプレー3回戦まで進み、9位という好成績を収めた。
「日本に帰ってきたら、もうそのショットばかり使っていました(笑)。以前の僕は、“風が吹いたらいいスコアは出ない”とか“風が強いから耐えるしかない”と思っていたし、どこか運任せなところがあったんです。でも、ショットの引き出しが増えたことで、“風が吹いても、いつもと何も変わらない”と思えるようになったのは大きかったですね」。

 海外でプレーする機会が増えたのは、やはり「日本アマ」に勝ったことが深く関わっている。漠然としていた海外志向が、ナショナル・チームへの加入によって「海外に行きたい」という強い願望に変わり、「今のままではダメだ」という焦りも生まれた。
「挑戦できるチャンスは今しかないと思ったし、プロになるなら、アマチュアのうちにナショナル・チームでやっておいた方がいいことがたくさんあることを知れたのは、すごくよかったと思います」。
 その意味では、「日本アマ」も中野のゴルフ人生にとってターニングポイントになった。

 中野のアスリートとしての最大の魅力。それは、185センチ、90キロという堂々とした体格だろう。
 中野自身もそこにゴルファーとしての強みを感じている。
「単に飛距離で見ると、他の選手とあまり変わらないのですが、長い目で見た時には、この体格が生きてくると思っています。この飛距離を長く維持できるんじゃないかと。それに、伸びしろというか、もっと飛距離を伸ばすためにできることは、まだたくさんあると感じています」。
 また、「以前はかなりひどかった(苦笑)」というアイアンショットも、この2年でかなりの進歩があったようだ。

「大学2年までは、“飛んで曲がらないドライバーショットが自分の武器”と言っていました。ただ、当時は、ドライバーでいい球を打っても、セカンドのアイアンでミスをして、ティショットを台無しにしてしまうことが結構多かったんです。それに比べると、今はアイアンでもいいショットがかなり打てるようになりましたね」。

 プロデビュー戦となった「三井住友VISA太平洋マスターズ」の予選ラウンドを同組でプレーした石川遼は、中野のスピード、パワーのポテンシャルに加えて、アイアンショットの精度の高さを絶賛した。それについて中野は「たしかにアイアンショットの調子はよかったです」と笑顔を見せたが、海外でのプレーがレベルアップにつながったのはたしかだろう。
 さらに、ショートゲームに関しては、「世界には、こんなに上手い選手が、しかもこんなにたくさんいるのか」と驚いたというものの、「僕は発展途上で、潜在能力はまだ相当あるのかなと思います」と、ここでも自身の伸びしろを感じている。

 そんな中野は、小学校高学年からスリクソンのボールを、中学に進学してからはクラブも愛用し、プロとしても引き続きスリクソンのギアで戦うことを決めた。
「どのギアもすごく信頼しています。先に使い始めたアイアンは群を抜いて素晴らしいですし、あとから使うようになったドライバーも“飛ぶ”というイメージがあります。スリクソンのドライバーがあったからこそ、僕のドライバーショットがよくなったのだと感じるし、スリクソンのドライバーの進化のすごさを感じます」
 中野は、先述したプロデビュー戦のドライビングディスタンス(4日間平均)で308.75ヤードを記録し、5位にランクイン。早くもツアーで飛ばし屋ぶりを発揮している。

「日本アマ」で優勝したあと、中野は次の目標として、“アマチュアとしてのマスターズ出場”を掲げた。
 だが、優勝者に翌年のマスターズ出場権が与えられる「アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権」(以下、アジアアマ)では、昨年、今年と2年連続で3位に終わり、目標達成は叶わなかった。

「マスターズには、やっぱりアマチュアとして行きたかったですね。『アジアアマ』は、マスターズに出られる可能性が一番高いと言っても過言ではない大会。それに、あの大会には、アメリカの強豪大学の学生も出ます。そういう選手と戦って、デカいタイトルを獲りたかったという思いは正直強くあります」。

 また、「アマチュアとして国内ツアー優勝」というもう一つの目標も達成できなかったが、
「今年のアジアアマですべて出し切って、それでダメならアマチュアとしてやるべきことはもう全部やったと割り切って、プロの世界に行こうと思っていました。だから、悔いはないです。マスターズには、プロとして出ます」
 と、その視線はすでに未来を向いている。
 デビュー戦翌週にはホストプロとして「ダンロップフェニックストーナメント」にも出場した中野。改めてプロになったことについて聞くと、

「スリクソンと共に、これからプロとしての歩んでいくわけですが、まず職業としてゴルフができることに感謝しています。アマチュアの時からそうですけど、ギャラリーやファンの皆さんの応援があってこそだと思います」
 と感謝の言葉を口にし、さらに、こう続ける。
「男子プロゴルフ界をアマチュアの立場からずっと見ていて、寂しいというか、もっと盛り上がっていいはずなのに、女子に負けてしまっている部分があると思います。僕もプロになったので、一員として男子ツアーを盛り上げる発端になれればいいし、発展に寄与したいなという思いがあります」。

 有望なアスリートを形容する“期待の大型ルーキー”というフレーズがあるが、まさに中野にはそれがふさわしい。プロとしてもビッグタイトルを手にする日を楽しみに待ちたい。



中野 麟太朗(なかの・りんたろう)
2003年東京都生まれ。8歳でゴルフを始め、明治大学付属中野高校3年生だった21年「関東アマチュアゴルフ選手権」「全国高等学校ゴルフ選手権(個人の部)」で優勝。卒業後、早稲田大学に進学し、大学2年時の23年「日本アマチュアゴルフ選手権」で優勝。翌24年の「全国大学ゴルフ対抗戦」では同大ゴルフ部初の全国制覇に貢献。「アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権」で24年、25年と2年連続3位に入賞。身長185cm、体重90kg。血液型O。早稲田大学スポーツ科学部4年在学中。