Q:クリーブランドゴルフ『RTZ 2 ウエッジ』(以下、RTZ 2)の開発はいつ、どんなことからスタートしたのでしょうか?
ダスティン ブレッキー(以下、ブレッキー):私たちは継続的に研究開発を行っています。『RTZ 2』の開発に関しても、数年前に本格的にスタートさせ、ソールグラインド(研磨)の研究や打点分布のテスト、製造精度・性能の一貫性を向上させる研究などから着手しました。テストの手法や解析技術についても、前モデルの発売直後からツアープロからのフィードバックを収集し、進化させ続けています。
Q:前モデル「RTZ」との主な違いと、それを実現できた要因を教えてください。
ブレッキー:違いは2つあります。1つ目の違いは新たなグラインド「588」を追加するとともに、従来の「LOW」「MID」「FULL」「ADAPT」というすべてのグラインドを見直したことです。
2025年春に、創業者であるロジャー・クリーブランドがアドバイザーとして復帰し、この『RTZ 2』の開発に加わったのですが、彼が私たち開発スタッフに与えた影響は本当に大きいものでした。彼の分析力と専門知識を活かし、次世代ウエッジのために本格的な進化を遂げることができた最大の領域が、まさにグラインドでした。
ロジャーと一緒にすべてのグラインドを見直し、面取りや曲線、各グラインド要素の位置、バンスなどを更新し、全種類のソールに細かな調整を加えました。
Q:新たに加わったグラインド「588」について詳しく教えてください。
ブレッキー:『RTZ 2』のヘッド形状に、名器「TA(ツアーアクション)588」のグラインドを組み込んだのです。具体的には、かつての588ウエッジをいくつも3Dスキャンして、そのグラインドのバリエーションを『RTZ 2』の全体ラインアップに適合させました。ロジャーにはすべての工程に立ち会ってもらい、グラインドが意図どおりのパフォーマンスを発揮できるよう、曲線の一つひとつに至るまで確認を取ったうえで市販モデルへと落とし込みました。あらゆる意思決定やプロセスに関わってもらい、CADデータもすべて彼自身にチェック、承認してもらいました。彼というエキスパートがチームにいてくれたことは本当に心強かったです。
Q:前モデルとのもう1つの違いというのは?
ブレッキー:「ZIPCORE iQ」です。
私たちは実際のプレーヤーの打点分布データを活用して性能の一貫性を最大化する設計を行ってきました。この設計の目標は、ヒール側の重量を削減し、慣性モーメント(MOI)を向上させることです。従来の「ZIPCORE」は、ネック部分を空洞にし、そこに軽比重のセラミックピンをインサートすることでヒール側の重量を減らすというクリーブランドウエッジの中核技術ですが、今回、ロフト別の最適化をさらに進めました。
具体的には、ロフトが増えるほどフェースを閉じたり開いたりするため、上下への打点のバラつきが大きくなることがわかりました。そのバラつきに対応するため、ロフト/グラインド別にセラミックピンを設計しました。あるロフトでは重量を残す一方、別のロフトではさらに余剰重量を生み出してトウ側などに再配分しています。また、バックフェースもロフトごとに設計し、重量配分を変えています。
この「ZIPCORE iQ」と、前作でウエッジ専用に開発した独自素材「Z-ALLOY」は密接に結びついています。比重の軽い「Z-ALLOY」を採用することで、それまでよりはるかに多くの余剰重量を生み出すことができました。そうして生まれた余剰重量を再配置することでスイートエリアを広く設定することができ、打点ブレに強くなりました。その結果、各ロフトで想定されるショットに対し、より安定したパフォーマンスを発揮することが可能になりました。
Q:『RTZ 2』の開発における最大の課題は何だったのでしょう?
ブレッキー:最も大きな技術的課題は、ロフトごとの打点分布を正確に把握することでした。ご存じのように、ウエッジは非常に多様な状況で使用されるため、ヘッド軌道や打ち出し条件をあらゆるシチュエーションで測定することは容易ではありません。また、それぞれの状況がどれくらいの頻度で発生するかも把握する必要がありました。そうしたデータを基に最適化を行う方法を見つけ出し、最終的に「ZIPCORE iQ」というソリューションにつなげるのは大きな挑戦でした。
Q:ロジャー・クリーブランド氏について、今回の開発で印象に残っていることがあれば教えてください。
ブレッキー:彼と仕事をして特に印象的だったのは、製品や開発プロセスに対する情熱です。彼は決して「完成した」とは考えず、常に改善を追求し続けています。『RTZ 2』の開発においても細部へのこだわりは非常に強く、ツアープロや一般ゴルファーが何を求めているかについての洞察と意見は、私たちにとってとても価値のあるものでした。
また、ウエッジの開発では、統計やデータから一歩抜け出して、ゴルファーが実際にプレーする際、打感のよさやショートゲームの向上への貢献といった〝現実の体験〟に落とし込むことが大切です。ロジャーは、まさにその感覚を大切にしている人で、グラインドがもたらす実際のパフォーマンスを深く理解しています。彼の現場視点と当社の分析・最適化技術が融合したことで、まさに両者の〝いいとこ取り〟をしたウエッジを作ることができました。
Q:『RTZ 2』に対するツアープロからの反応はどんなものだったのでしょうか?
ブレッキー:当社との契約の有無に関係なく、前モデルは当社史上最速のスピードでPGAツアーのプレーヤーたちに定着したので、『RTZ 2』の開発は、最初からツアープロを直接巻き込んだアプローチになりました。新しいグラインドの開発をはじめ、このモデルで実現したいすべての要素について、ツアープロたちと一緒に作り上げてきたので、プロたちへの導入時に問題は一切なかったですし、『RTZ 2』への移行はとても順調に進みました。ツアープロは、私たちが重視している打感、性能、一貫性を高く評価してくれています。また、新たに追加されたグラインド「588」は多くのプレーヤーから高い支持を受け、歓迎されています。
Q:最後に『RTZ 2』の購入を検討しているゴルファーにメッセージをお願いします。
ブレッキー:『RTZ 2』では、「588」を含めたすべてのグラインドでロジャー・クリーブランドのこだわりが反映され、進化しています。また、「ZIPCORE iQ」とロフト別最適設計により、これまで以上に高い一貫性を実現しています。さらに、「Z-ALLOY」を採用し、すぐれた打感とパフォーマンスを提供します。形状、性能、その性能の安定性と持続性が進化した『RTZ 2』をぜひ試していただきたいですね。
ゴルフでは誰もがグリーンを外します。トッププロでも1ラウンド平均4~5回は外しますが、それでもパーかそれ以上をマークします。アマチュアが外す回数は確実にそれ以上でしょう。ピンまで40ヤード以内の距離……それこそが、プロがパーをキープするカギであり、アベレージゴルファーが差を縮められるのも、このショートゲームなのです。
アプローチショットで上達するには、適切な技術と自分に合ったすぐれたウエッジが必要ですが、パワーは要りません。ウエッジのソールやバンスを適切に使う方法を学ぶことです。つまり、力任せではなく正しい技術を身につけるのです。
クリーブランドウエッジの特長。それはアドレス時のバランスと対称性、そしてバンスをソール中央部は多く、ヒール部は少なくした設計にあります。これにより、フェースを開いてもリーディングエッジが低く保たれ、ボールの下に入り込むことが可能になるのです。
前作「RTZ」では、新素材「Z-ALLOY」を採用しました。些細なことに思えるかもしれませんが、これはかなり大きな変化であり、プレーヤーにとっては40年以上ぶりに有益なウエッジに関する変更ととらえています。「Z-ALLOY」によって溝の寿命が延び、ソフトな打感を実現できたのは、ウエッジにおける非常に重要な要素です。
私は、ウエッジにおいては〝劇的な進化〟という言葉は使いたくありません。小さな改良の積み重ねが大きな前進につながるのですが、「Z-ALLOY」 の開発は、私たちにとって大きなイノベーションと言えるものでした。スピン性能が長く続き、しかもソフトな打感を提供できることはゴルファーにとって非常に価値がありますし、競合モデルとの差別化にもつながるはずです。
これまで、クリーブランドウエッジは、モデルチェンジのたびに大きなリスクを冒し、その結果、大きな進化を遂げてきました。
ネック部分にセラミックピンを入れ、それで生じた余剰重量を再配分して、狙いどおりの重心設計を実現した「ZIPCORE」がそうです。また、かつてウエッジ素材は軟鉄が一般的でしたが、前作「RTZ ウエッジ」では、シミュレーションを数多く繰り返して開発した独自素材「Z-ALLOY」を採用しました。ウエッジの素材自体をガラリと変えるという大きな挑戦をした結果、そのリターンとして、やわらかい打感、重量が軽いため余剰配分を創出できることによる重量設計の最適化、耐久性の大幅なアップといった大きな恩恵を得ることができました。それにより、国内外のツアープロをはじめ多くの一般ゴルファーにも支持されたことで、日本を含め、世界的に前作を上回るセールスを達成しました。
そのため『RTZ 2』の開発に当たっては、モデルチェンジだからといってすべてを刷新するのではなく、前作までに培ってきたすぐれた部分は継承しつつ、ツアープロからの意見をヒントに改善、進化させました。特にソールグラインドについては、日米のプロたちからの前作へのフィードバックを製品に反映させていますが、ツアープロとの関わりが深いロジャー・クリーブランド氏の意見はそれにも増して貴重です。ロジャー氏がずっと積み重ねてきた知識、経験、感性も一つのフィードバックとして『RTZ 2』に反映されています。
開発チームの先進技術と、細部にまで宿った名匠の魂の結晶である『RTZ 2』の性能をぜひご体感いただければと思います。