2023/08/31

ダンロップメンバーズテニスメルマガ 2023 8月号

住友ゴムグループの(株)ダンロップスポーツマーケティングは、テニスを中心としたラケットスポーツを展開し、ダンロップをご愛用くださるテニスプレーヤーのために、「ご満足いただける製品を届けたい!」「快適なテニス環境を整えるお手伝いをしたい」という心で、あらゆる製品を取り扱っています。

現在、世界中のあらゆる分野で、『SDGs』の取り組みが行なわれています。『SDGs』とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字による略称で、国連で採択された世界共通の目標です。



住友ゴムでも、中期計画のバリュードライバーの一つとして「ESG経営の推進」を掲げ、サステナビリティ長期方針として「はずむ未来チャレンジ2050」 を策定し、さまざまな取り組みを行なっています。「ESG」とは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」を意味し、企業としてこれらの経営に取り組むことを「ESG経営」と呼びます。その一環で、ダンロップは地球環境に配慮したサステナブルな取り組みとして、テニスボールに使用しているプラスチック製包装材の削減を進めています。

スポーツ事業においては、2030年までにパッケージなど包装材に使用されるプラスチックの使用量を半減(当社比)させることを目指しており、昨年には、その取り組みの一環として、全豪オープンに使用するボールパッケージの「プラスチック製ふた」を廃止。

今年は販売用にも、同様の販売方式を拡大させました。将来的には包装材だけでなく、テニスボールそのものについても、CO2削減に寄与するサステナブルな原材料へ切り替えるべく、研究・開発を進めています。

試合球として使用され、多くのテニスプレーヤーにご愛用いただいているテニスボール「DUNLOP FORT(ダンロップ フォート)」、「Dunlop Australian Open」は、まだ「ボール缶によって保管」されるお客様も多く、必要不可欠というご意見があり、ふたをプラスチック製から紙製へと変更としました。

練習球の「St. James Premium(セント・ジェームス・プレミアム)」、「St. James(セント・ジェームス)」、「DUNLOP HD(ダンロップ・エイチディー)」については、プラスチック製のふたを廃止し、ラベルをプラスチック製シュリンク包装から紙製に変更しました。

(切替時期は商品によって異なります。年内に全ての商品が切替予定です。)
これらの取り組みにより、ダンロップでは、日本国内で年間約20トン以上のプラスティック使用量の削減を見込んでいます。また海外でも、2024年以降、国・地域の特性に合わせた同様の対応を進めていく予定です。

もし「どうしてもプラスチックふたが必要」とお考えのお客様は、現在使用中のふたを大切に保管・ご使用くださるようお願いいたします。

ほとんどの一般プレーヤーが「天然芝コート」を経験したことがありません。
昔からいろんなメディアで「グラスコートは滑る」「グラスコートは速い」と表現されてきて、みなさん「ふぅん、そうなのかぁ」って頷いてきたと思いますが、実際に体験すると、そうした言葉がどうも適切に伝わっていないだろうな……と思ってきました。

「滑る」「速い」というよりも、「弾まない」んですね。ハードコートでは、ボールはいきなり硬い面にバウンドしますが、天然芝では、芝がクッションとなってしまい、ボールの「跳ねようとする力」を削いでしまうんです。その結果として、バウンドが「低く」なるわけです。

またハードやクレーでは、バウンドするときに「推進方向への大きな摩擦抵抗」が発生し、打球速度は急激にダウンします。でも天然芝クッションは「鉛直方向への押し返しエネルギー」は削減するけれど、推進方向への摩擦抵抗が少なく、推進エネルギーの低下率が低い……。

プレーヤーには「高くバウンドするボールは遅く、低いバウンドのバールは速い」という感覚があります(スライスは別ですよ)。天然芝コートでは、打球速度は減速されず、しかもバウンドが低いため、ハードコートよりも速いタイミングで手元にきてしまって、その感覚を「滑る」「速い」と表現するのです。

そうそう、天然芝の「普通じゃないところ」が、もう一つあります。天然芝で普通のシューズを履くと「滑ってしまって」まるでグリップできません。だから選手たちは、小さなスタッドをソール前面に配置した芝用特別シューズを履くことで、スリップを回避します。

近年のウィンブルドンで見かける「ベースラインあたりだけが極端に芝の摩耗が激しい」という状況は、そんな特別シューズのせいでもあります。

ウィンブルドンでは、シューズのソールパターンについて、非常に、非常に厳格な規定があり、通常のオールコート用のパターンとは違い、ソール全面が「均一なスタッドパターン」と定められています。しかも、スタッドの配置密度、スタッドの高さ、スタッドのラバー硬度が厳密に規程され、それに適合しないシューズでプレーすることを固く禁止しているのです。

天然芝で滑らないようにできるソールは、いくらでも開発できます。でも、ウィンブルドンは「グリップ性能」と「芝を傷めすぎない」究極のバランスとして、厳格な規制遵守を義務化しています。

それでも芝は傷み、剥げてきます。
天然芝がフレッシュなうちはいいですが、二週めに入ると、ベースラインあたりが摩耗して、土が露出し始めます。その部分ではスタッドパターンのソールは、急激にグリップ力が増して止まりすぎるようになり、「芝エリア」と「土エリア」との「止まりギャップ」が顕著になります。

それに、芝の下の地面も、ベースラインあたりだけが極端に踏み固められるため、硬いサーフェスとなって、ボールは高く弾むことになります。

近年はネットプレーヤーが激減し、ベースラインあたりは、まるでクレーコート。そこを外れるといきなりグラスコートというわけです。

一面のコートに、真逆の性質の2種類のサーフェスが出現。プレーヤーは、そんな状況差を把握したうえで、フットワークを調整し、「芝上を滑りながら止まる場所」と「土に食い込ませて止まる場所」とのギャップを使い分けなければならないのです。

それに、プチ困ったこともあります。土が露出したベースラインあたりでは、スタッドの間に土が入り込んでしまい、スタッドパターンは詰まって平面化してしまうんです。こうなると、スタッドが芝に食い込まず、いっそう極端にスリッピーになってしまう……とまぁ、まるで三重苦です。

このギャップが「同じ一面の上」で起こってしまうため、ベースラインあたりの芝が剥げた「二週めの天然芝」は『魔性のサーフェス』となります。
でも皮肉なことに、参加選手の「3/4」は、その魔性に立ち向かうことなく、ロンドンを去らなければならないのでした。

松尾高司氏

松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。