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だれでも「強い打球」「スゴい打球」に憧れます。「自分もプロ選手のような打球を打ちたい!」と願い、注目のプロが使っているのと同じラケットを買って、同じストリングを張ります。その気持ちはよくわかりますし、そうした「憧れ」が、上達ブースターとなるケースは、いくらもありますよね。
しっかり身体を作り上げているようなプレーヤーの中には、市販品を調整しバランスや重さをカスタマイズする場合がありますね。これにより我々一般人とは別世界の超高速剛球ラリーでも打ち負けないような武器になりますが、もしそれらを我ら一般プレーヤーが振り回せば、5分もしないうちに身体はバキバキ、グリップから握力が消えているでしょう。
プロや学生以上の競技プレーヤーたちは、このようなフレームに、ポリエステル系のストリングを合わせることが多いです。こうした「プレーヤー自身のスーパーパワー」+「重厚感」が揃ってこそ、「ポリエステル系ストリング(以降:ポリ系)」から『伸縮』を引きずり出すことができます。軽量ラケットにスイングスピードのそれほど早くない方にとってはポリ系を使うメリットはあまりない……ということです。むしろ「長期間張り続けても切れにくい」ことからその状態のストリングを使い続けることで、身体への負担にもなりかねません。
さて、ポリ系はポリエステル素材の単純な1本構造。ポリエステルとは、変形に対して強靭な素材で、これがストリングになると、とても大きな力がかからないと伸縮は発生しませんが、これを伸縮させることができれば、えげつないパワーを瞬間的に発生させます。
つまり、競技者たちの過激な打ち合いによる、とてつもなく大きな「衝突エネルギー」があって初めて、本来の「伸縮」が顔を覗かせるのです。逆に言えば、そんな激烈インパクトできないプレーヤーは、ポリ系ストリングが持つパフォーマンスも引き出せない……ということです。まるで「一般道を走るのにF1マシンを使う」みたいな感じでしょうか。
かつて源為朝(頼朝の父)は「強弓を引く強者」として名を馳せました。『強弓』とは、非常に強い弓のことで、普通の人が引いても、少しもしならせることができません。弓に弦を張るときも、五人がかりでなければ、弓をしならせて張ることができなかった……といいます。
そんな強靭な弓を「ぐい」と引いて放たれる矢は、遠く離れた敵兵の身体を鎧ごと撃ち抜き、さらに後ろにいた兵の鎧に突き刺さったのだとか。みなさんが「なんとなく選んでいるトッププロが好んで使用するようなポリ系」というのは、こういう強者が使ってこそ本領を発揮する道具なのです。
ポリ系が全て悪い! なんて言っているのではなく、「自分の力量にマッチしたストリングを選べば」もっと楽しく軽快にテニスを楽しめるでしょう……ということです。「プロが使っているから」とか「先輩に薦められたから」とか「店頭で『人気モデル』のPOPが付いていたから」とかではなくて、「本当に自分に適したストリングはどれか?」と向き合ってみてください。

松尾高司氏
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップテニス」のサポーターも務めてもらっています。