2024/10/10

SRIXON製品情報

《スリクソン ZXi シリーズ 誕生への軌跡① ドライバー編》めざしたのは、前作を超える飛びと、より多くのゴルファーにフィットする懐の広さ

※プロの使用クラブに関する情報は10月10日時点のもの。

 国内外のスリクソン契約プロたちが使用し、数多くのツアー優勝をもたらした「スリクソン ZX Mk II シリーズ」ドライバー。ダンロップのもてる技術と知見をすべてつぎ込んだドライバーは、データ上だけでなく、ツアープロが試合で使い飛距離アップを実現した。
 その後継モデルである『スリクソン ZXi シリーズ』(以下、ZXi シリーズ)のドライバーの開発もまた、出発点は同じだった。
「まず〝プロが打って飛ぶ〟というのが大前提でした。それに加えて、どんなプロにもフィットしてより多くのプロに愛用してもらえるよう、フィッティングをしやすくする。この二つを両立させることをめざしました」
 そう語るのは、今回の開発チームの一員で、プロの実打テストにも立ち会い生の声を聞いた中村 崇。また、商品企画を担当した大倉 侑樹も、開発のスタートについてこう振り返る。
「私たち商品企画チームも、ドライバーにまず飛距離を求めるのは、プロだけでなくアマチュアも同じだと考えました。そして、その実現には、やはりボールスピードが重要です。それに加えて、アマチュアに関してもよりターゲットを広げたいと考えました。そこで開発サイドには、ボールスピードのアップと、ターゲット拡大の2点を要望しました」
 企画チームから出された要望のひとつであるボールスピードのさらなるアップのために、中村たち開発チームは、前作と同様、試作してはプロに打ってもらうというサイクルを繰り返した。その結果、新たに開発されたフェース構造が「i-FLEX(アイフレックス)」だ。これは、フェースのセンター部分の肉厚を薄くする一方、トウとヒールには厚い部分を設けるという、前作とは真逆の構造である。
「フェースをよりたわませてボールスピードを上げるには、センターをできるだけ薄くしたほうがよいのですが、たんに薄くするだけだと耐久性が落ちるし、反発性能の規制もあります。それと、ボールがフェースに当たるとどうしても無駄な振動が起きて、それが周辺に波及していきます。そこでi-FLEXでは、センターを薄く、周辺は厚くすることで、真ん中だけを円形状にたわませつつ、無駄な振動を抑えることでボールに効率よくエネルギーを伝えることができるのです」(中村)
 ただし、後述するが、今回の『ZXi シリーズ』ドライバーは、前作の流れをくむ3機種に新機種を加えた4つのモデルで展開する。このラインアップの多さに、開発チームは頭を悩ませることになった。
「形状の異なる4つのヘッドごとに、フェースのたわみを最適化する必要がありました。肉厚がちょっとでも変わると、当然たわみ方は変わるので、シミュレーションをしながら肉厚を微調整しました。モデルごとに少しずつ肉厚の厚い位置を変えるなどした結果、どれも上手くたわませることができたのですが、その調整にはかなり時間を要しました(苦笑)」(中村)
 そんな新しいフェースとともに、ボールスピードの向上に貢献するのが、前作にも搭載された、ボディをたわませてフェースの反発力を最大限に高めるダンロップ独自の技術「REBOUND FRAME(リバウンドフレーム)」だ。i-FLEXの搭載によって、フェースがスムーズに、より大きくたわむことで、ボディのたわみも大きくなった。それによってスイートエリアも拡大し、ボールスピードは平均で1.3m/s※1アップした。
 i-FLEXとREBOUND FRAMEという2つの技術の融合から生まれた「ZXi シリーズ」ドライバーを、初めて試打したプロたちはどう感じたのだろう。
「まず、多くのプロから聞かれたのが、〝打感がすごくやわらかい〟〝ボールがフェースに乗っている感じがする〟という声でした。そして、ショットの計測データを見てみると飛距離は伸びている。打感がやわらかいのに飛んでいることに、プロたちは驚いたり、不思議に感じたりしていましたね」(中村)

※1ドライバーのヘッドスピードを43m/s で想定。

中村 崇(なかむら・たかし、右) 住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術グループ 課長
2002年入社。タイヤの開発を経て、2005年よりゴルフクラブ開発に従事。スリクソンのアイアンの開発、ゼクシオに関わるスイング解析などを担当したのち、2019年からスリクソンのドライバー、フェアウェイウッドの開発を担当。2022年4月より現職となり、スリクソンのクラブ全体の開発を統括する。


大倉 侑樹(おおくら・ゆうき、左) 住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 ゴルフビジネス部 ゴルフクラブビジネスグループ 課長代理
2010年入社。物流部でのボール需給や工場の生産管理、販売会社に出向してのボール販売企画、営業を経て、2021年より現職。『スリクソン ZXi シリーズ』では、前作に引き続き商品企画を担当。

 企画チームが要望し、開発チームが実現をめざしたもうひとつのテーマが、ターゲットの拡大である。その実現のための方法が、スリーブフィッティングシステムの踏襲であり、交換可能なチューニングウエイトの改良だった。
「冒頭でもお話ししましたが、より多くのプロに使ってもらえるよう、フィッティングのレベルを上げようと考えました。そのために、たとえば前作ではバック側に1つだけだったウエイトをトウ、ヒールの2カ所につけたり、フロントに1つだけだったウエイトを前後2カ所に変えたりしています」(中村)
 さらに、前作からの最大の変更点であり、ターゲットを広げるために取った手法が、新機種の『ZXi MAX』ドライバーを加えたことである。その背景について大倉はこう話す。
「『ZXi MAX』は、私たち企画チームの要望から生まれたモデルです。スリクソンというブランドは、プロ発信のものづくりを続けてきたために、市場調査をすると、〝難しい〟とか〝プロ仕様だからアマチュアには使えないよね〟というイメージが定着しているのが分かります。もちろん、他のモデルもアマチュアが使うことはできるのですが、『ZXi MAX』という、よりやさしいモデルを加えることで、〝スリクソン=難しい〟というイメージを持っているアマチュアのみなさんにアプローチできるのではないかと考えました」
 では、ここからは4つのモデルについて、前作からの変更点を中心に見ていこう。

 前作「ZX5 Mk II」ドライバーの後継となるのが『ZXi』ドライバーだ。
 前作ではバック側に1個だけだったウエイトをトウ、ヒールに2個につけた。さらに、ヘッドはアドレス時には一回り大きく見えるようにした。
「見え方を変えたのは、前作のヘッドに対して〝難しそうに見える〟という声があったからです。一回り大きく見せることで、さらにやさしくするとともに、もっとつかまってほしい人と、少しつかまりを抑えたい人の両方に対応するために、つかまり具合を調整できるようウエイトを2つつけました」(中村)

つかまり具合を自分で調整できるよう、チューニングウエイトをトウとヒールの2カ所に搭載。ヘッドと体積は前作と同じ460cm3だが、バック側に広げて投影面積が拡大。わずかにシャローにしたことでボールがより上がりやすいイメージが湧く。

 前作「ZX7 Mk II」ドライバーの後継モデル『ZXi TR』。名称の〝TR〟は〝TOUR〟に由来する。
小ぶりで450cm3の体積は前作と同じだが、より操作性を重視したことを強調するために、前作よりもやや縦長に、より洋梨形らしい形状に変更した。
「トウ~ヒールの幅をわずかに狭くして、フェースが少しだけ小さく見えるようにしています。それにより、操作性がよく、つかまえに行くイメージが湧きやすい顔になったと思います。形状を変更したのは、スタンダードモデルである『ZXi』との違いを分かりやすくしたかった、という意図もあります」(中村)

ウエイトは前作と同じだが、「前作では〝つかまりにくい〟という声があったので、少しだけつかまりやすくしています。重心をヒールに寄せた、より操作性重視の設計です」(中村)。顔は縦長にしつつ、バックを高くして、より叩きやすい印象に。

〝LS(Low Spin)〟というその名の通り、前作「ZX5 Mk II LS」の流れを汲むモデルだ。
 変更点はやはりチューニングウエイトに関してで、フェース側に1個だけだったのを、前後に2つ搭載することにした。
「きっかけは、前作をプロにフィッティングする際に、〝(ZX5 Mk IIとZX5 Mk II LSの)中間はないの?〟という意見が多く聞かれたことです。LSにすると急につかまらなくなるとか、打てなくなる、あるいは〝振り味〟が違いすぎて打てないというプロが少なからずいました。そこで、中間のモデルを作るよりは、その人に合うよう、つかまりとスピン量をウエイトで調整できるようにするほうが、プロには喜ばれるのではないかと考えました」(中村)
 まだ調整中のプロもいるが、事実、現時点では、このモデルをチョイスするプロが最も多いという。

「ウエイトを交換して、もっと重心を深くできたらいいのに」という前作への要望を受けて、チューニングウエイトを2つに増やしトウとヒールに搭載。つかまり具合とスピン、振り味の調整が可能になった。ヘッド形状はほぼ同じだが、クラウンの頂点を中央に寄せることでアップライトに見えすぎないよう工夫している。

「このモデルの何が〝MAX〟なのか。それは寛容性がマックスなのであり、すなわちMOI(慣性モーメント)がマックスだと考えていただいていいと思います」
 と大倉は話す。ただし、そこにはダンロップならではのこだわりがある。
「他社のモデルの中には、MOIを追求するあまり、全然つかまらないものもあります、でも、スリクソンのドライバーである以上、ある程度の操作性を担保することはとても大事です。このモデルは、そういったところも含めた寛容性がマックスなのです」(大倉)
 チューニングウエイトはバック側の1カ所のみ。重心をできるだけ低く、深くして、MOIをできるだけ大きくした。
 寛容性が特長の『ZXi MAX』ドライバーだが、プロにフィッティングしてみると、高く評価する声が想像していた以上に多かったという。
「構えた時に〝(ヘッドが)ちょっと大きいね〟と一瞬ひるむプロも多かったのですが、打ってみたら、上がりやすいし曲がりにくいので、思った以上にいい球が出るんです。そのため、〝形にさえ慣れれば、むしろこっちの方がいいかも〟と評価してくれたプロも一定数いました」(中村)
 なお、MOIに加え、投影面積と重心の深さもシリーズの中では『ZXi MAX』が最大となっている。

「ウエイトには、納めるためのポートが必要で、どうしても重量が取られます。それは無駄な重さでもったいないので、ウエイトをバック1カ所に集約しました」(中村)。ヘッドは『ZXi』のヒール寄りのバックをわずかに大きくした形状で、重心位置もわずかに深くなっている。

 さらに『ZXi シリーズ』ドライバーが、プロの要求に応えるために搭載した新たな機能がある。それが「フェースレーザーミーリング」である。
 プロいわく、従来のドライバーは、雨の日などフェースが濡れた状態で打つと、ボールが右に抜けたり、フェースに乗らずに滑ったりするような感覚があった。そのため中村たち開発陣に対し、「フェースラインを入れてほしい」という要望がたびたびあったのだという。
「我々としては反発を高めるためにフェースはできるだけ薄くしたいんです。でも、フェースに溝を入れてしまうと、そこを起点に割れてしまう危険があります。だから、フェースラインは入れたくなかったのですが、考えてみれば、ティアップするドライバーは、フェースとボールの間に水が入ることはあっても芝は入りません。ならば、フェースラインまでは必要ないだろうと。そこでフェースラインの代わりになるものとして、レーザーで非常に細い溝を入れることにしました」(中村)
 このミーリングの働きにより、ウエット時でも確実にフェースがボールに食いつくため、飛距離が安定する。ミーリングはまた、商品企画チームの要望にも沿うものだった。
「今回のドライバーに搭載されたi-FLEXもREBOUND FRAMEも、すごいテクノロジーなのですが、どちらも見た目ではわかりません。そのため企画チームとしては、お客様が見て、いかにも性能的によさそうだと感じられる機能が欲しかったのです。その点、フェースレーザーミーリングは、目で見てその機能がはっきりと分かりますし、ボールがしっかり食いつきそうだと感じていただけるものになったと思います」(大倉)
 多くのプロを満足させる性能と機能を搭載した『ZXi シリーズ』ドライバーを、いち早く実戦投入したのが松山 英樹プロだ。
 今年8月下旬に開催された2024年のPGAツアー・プレーオフシリーズ最終戦「ツアーチャンピオンシップ」。松山プロは初日から『ZXi LS』ドライバーを使用し、第3ラウンドの最終18番ホールのティショットでは、340ヤードというビッグドライブを披露した。
 競技で使用するために必要なR&A適合クラブリストに掲載されるや否や、ツアー最終戦という大事な試合でさっそく投入したのは、新しいドライバーの飛距離アップを確信し、一刻も早く実戦で打ちたいという松山プロの気持ちの表れだった。
 苦心しながらも新たな技術を開発し、ボールスピードや飛距離においてたしかな進化を遂げた『ZXi シリーズ』ドライバー。最後に、開発担当者である中村に、ターゲットとするゴルファーへのメッセージをお願いした。
「最初にお伝えした通り、すべてのモデルにおいてフィッティング幅を広げ、プロをはじめ、より多くのゴルファーが使えるようにすることが、ドライバーからアイアンまで一貫した開発テーマでした。ドライバーに『ZXi MAX』を新たに加えたのもそのためです。ですから、一人でも多くの方に打っていただいて、ウエイトなどでフィッティングをしながら、〝これだ!〟という一本を見つける体験をしていただきたいと思います」。

最終仕様が固まった『ZXi シリーズ』ドライバーをテストする松山 英樹プロ。「すげー飛ぶ!」「弾きがいい」「自信を持って振っていける」といったコメントを残したほか、『ZXi MAX』について、「ボールがラクに上がってくれそうな見た目なので、余計な力が入らず打てる」と絶賛。