2024/10/29

SRIXON製品情報

《スリクソン ZXi シリーズ 誕生への軌跡② フェアウェイウッド&ハイブリッド編》一人でも多くのゴルファーに対応するための新搭載・調角システムと、プロの声を形にした〝やさしさ〟の数々

 プロを含むあらゆるゴルファーが求める「飛距離アップ」と、一人でも多くのゴルファーに選んでもらうための「フィッティングのレベルアップ」。『スリクソン ZXi シリーズ』(以下、ZXi シリーズ)のドライバーが掲げた2つの目標は、フェアウェイウッドの開発においても同じだった。
 飛距離アップには、やはり打ち出し時のボールスピードのアップが必須であり、そのための方法として採用したのが新開発のフェース構造「i-FLEX(アイフレックス)」だ。
「〝フェースの真ん中だけを円形状にたわませつつ、無駄な振動を抑えてボールに効率よくエネルギーを伝える〟というコンセプトと、〝センター部分の肉厚を薄くする一方、トウとヒールには厚い部分を設ける〟というメカニズムはドライバーと同じです。ただ、フェアウェイウッドのヘッドの形状に即して、i-FLEXの効果がより発揮されるよう、ドライバーとは肉厚を変えていますし、トウ、ヒール寄りの厚肉部分のつけ方もドライバーとは違います。その目的に合わせて肉厚と形を変えて配置することで、ボールスピードを上げているのです」
 と、開発を担当した中村 崇は話す。フェアウェイウッドであっても、飛距離アップは、とりわけアマチュアには切なる願いだが、『ZXi』フェアウェイウッドでは、ボールの上がりやすさもめざした。
「それは、前作に対して〝もう少し操作しやすくて、球が上がる方がいい〟という声がプロから聞かれたからです。それを受けて、今回は重心をわずかに下げて、上がりやすい方向に変えました。たんに上がりやすくするだけでは、飛距離への不満が出がちなのですが、『ZXi』は、むしろ距離が伸びて球も上がりやすくなったので、プロから高く評価されています。それはやはりi-FLEXの効果ですね」(中村)
 そうして完成した新しいフェアウェイウッドはどれくらい飛ぶのか。3Wでの実打テストによると、他社の競合モデルにくらべ、平均飛距離で5~8ヤード上回る結果が出た。
「他社のモデルも上がりやすいのですが、『ZXi』は上がりやすさに加えて、ボールが前に向かって強く飛んでいきます。それに、しっかりつかまってくれるので、その分距離が出るのです」(中村)
 付け加えると、その実打テストでは、前作にくらべ左方向へのズレ幅は小さくなり、よりセンター付近にボールが集まった。それだけ方向安定性が高まったというわけだ。

※ドライバーのヘッドスピードを43m/s で想定。

中村 崇(なかむら・たかし)
住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術グループ 課長
2002年入社。タイヤの開発を経て、2005年よりゴルフクラブ開発に従事。スリクソンのアイアンの開発、ゼクシオに関わるスイング解析などを担当したのち、2019年からスリクソンのドライバー、フェアウェイウッドの開発を担当。2022年4月より現職となり、スリクソンのクラブ全体の開発を統括する。


5W(写真・左)と7Wは、前作のヘッド形状に対する「三角形に見えて、ストレート以外の球を打つイメージが湧かない」「もう少し小さくしてほしい」というプロたちの意見を参考に、丸みをもたせ、サイズもわずかに小さく設計。一方、開発陣が〝スマイル〟と呼ぶフェース正面からの見え方(写真・右)も、プロからの要望を受け、底を、丸みを帯びた形状から平たい形状に。2つの変更により、「構えやすい」「ヘッドの座りがいい」と、女子プロを中心に高く評価されている。

 プロからの要望を参考に、『ZXi』フェアウェイウッドが新たに採用したことは他にもある。
 これまで、ドライバーと同様、フェアウェイウッドについても「フェースラインを入れてほしい」という要望はプロから多く聞かれた。プロいわく、ラインが入っていないと、ウエット時にボールが滑るイメージがあるためだ。だが、ラインすなわち溝を入れることでフェースの耐久性が落ちる懸念から、開発チームでは採用を見送ってきた。とはいえ、フェアウェイウッドは地面から打つことの方が多いため、フェースとボールの間に芝が入る可能性が高く、ボールが濡れているケースも少なくないことから、フェースの溝はあったほうがよい。
 ボールスピードを高めつつ、フェースにラインを入れることはできないか。その実現にも、新しいフェース構造である「i-FLEX」が一役買っている。
「i-FLEXがインパクト時のフェースのムダな振動を防いで、たわみをスムーズにすることで、フェースの耐久性を保ちます。なおかつ、今回、フェース高をわずかに高くしているので、それによりたわみしろを大きくなるため反発性能が上がります。つまり、フェースラインを入れても耐久性を落とすことなく、ボールスピードも高めることができました」(中村)
 3W、5W、7Wと全番手にフェースラインを入れたことで、ウエット時やラフでも、水や芝が溝に入ることでボールがフェース面に食いつき、しっかりスピンが入る。それにより、飛距離のバラつきを抑えることに成功した。
 さらに『ZXi』フェアウェイウッドには、前作からの大きな変更点がもうひとつある。これまで全番手に設けていたクラウンの段差を、3Wにだけつけ、5Wと7Wはフラットな形状に変えたのだ。
 そもそもクラウンに段差をつけるメリットは何なのか。それは、段差があることでブレードがしっかりするため、その分ボールを押し込むことができ、球が強くなって飛距離が出る、というもの。
「ただ、いろいろなプロに意見を聞いてみると、3Wは飛ばし重視の人が多い一方で、それ以下の番手は、〝セカンドショットで狙った距離を飛ばせて、ターゲットを点で狙う〟という意識が強いプロが多かったのです。さらに前作の5Wと7Wに対して〝もっと球を上げたい〟〝もっとめくれるような球筋にしてほしい〟という声がありました。そこで、3Wはクラウンに段差があるほうが飛ばせるので継承し、5Wと7Wは〝狙う番手〟だからという理由で段差をなくしました」(中村)
 こうして形状を変更した5Wと7Wは、プロたちからは「球が高くなった」「操作しやすくなって、狙うイメージが湧く」と高く評価された。

『ZXi』フェアウェイウッドを開発するにあたり、飛距離アップとともに目標に掲げたフィッティングのレベルアップ。それを達成するために、今回新たに搭載したのが「QTSスリーブフィッティングシステム」である。
 実は前作「スリクソン ZX Mk II シリーズ」でも、プロ用の3WにのみQTSスリーブフィッティングシステムを採用していた。それは、プロの幅広いニーズや多様なスイングタイプにきめ細かく対応するためだった。
「ただ、アマチュアの場合、フェアウェイウッドのシャフト交換はプロほどしません。構造をできるだけシンプルにするためにも、市販モデルでは採用しませんでした。それを『ZXi』では、プロだけでなく一般アマチュアに対してもフィッティングの幅を広げることを最大の目標に掲げたので、〝市販モデルでも、フェアウェイやハイブリッド、それも全番手にQTSスリーブフィッティングシステムをつけてほしい〟と開発チームにお願いしました」
 と、商品企画担当の大倉 侑樹は語る。さらに、QTSスリーブフィッティングシステムに関して、大倉たち商品企画チームは、開発チームにもうひとつ要望を出した。それは、ロフト角・フェース角・ライ角を調角するスリーブの調整幅についてだった。
 前作のドライバーに搭載していたQTSスリーブフィッティングシステムでは、調角できたのは最大でロフト角が±1度まで、フェース角とライ角は±2.0度までだった。それを、『ZXi シリーズ』のドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドでは、最大でロフト角が±1.5度まで、フェース角とライ角はともに±3.0度まで調角できるようにしたのだ。
 このアイデアは、一般ゴルファーからヒントを得たと大倉は言う。
「プロや、アマチュアでも上級者なら、ロフト角やライ角のわずかな違いをセンシティブに感じることができるのでしょうが、一般アマチュアでは、その違いを感じにくい……。私は試打会でお客様と話をするたびにそう感じました。だから、もっと角度を変えられるようにすれば、一般アマチュアでも違いを明確に感じられるはずだと。それを『ZXi』では実際に形にできました」
 商品企画チームの要望の通り、新しいQTSスリーブフィッティングシステムは、フェアウェイウッド、ハイブリッドの全番手に搭載。調角による弾道や捕まり具合の違いを、手軽に体感することができる。

大倉 侑樹(おおくら・ゆうき)
住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 ゴルフビジネス部 ゴルフクラブビジネスグループ 課長代理
2010年入社。物流部でのボール需給や工場の生産管理、販売会社に出向してのボール販売企画、営業を経て、2021年より現職。『スリクソン ZXi シリーズ』では、前作に引き続き商品企画を担当。


 そして、『ZXi』ハイブリッドも、フェアウェイウッドと同じく、新たなフェース構造「i-FLEX」を採用。ヘッド形状に合わせて肉厚分布を最適化し、フェースを効率よくたわませることで、前作にくらべボールスピードは+0.8ヤード、飛距離も+4.7ヤードという大幅なアップに成功した(※)
 この飛距離アップには、ヘッドの大きさの変更も関係していると中村は言う。
「『ZXi』ハイブリッドでは、ヘッドを前作よりひと回り大きくしているのですが、一般的に、ヘッドは大きいほうがボールスピードは出やすいのです。ヘッドのサイズアップとi-FLEX。二つの相乗効果で、ボールスピードが大きくアップしました」
 ただ、ヘッドを大きくしたのには別の理由もあった。実は、スリクソンのハイブリッドは、モデルチェンジのたびにヘッドを小さくしてきた。それは、「アイアンのように打ちたい」というプロの声を受けてのことだった。
「ただ、開発チームの中で、〝そもそもハイブリッドを使いたいのはどんなゴルファーなのか?〟という話になった時に〝ある程度やさしくないと打てないのでは?〟〝アイアンのイメージに寄せすぎると難しくなる〟という意見が出ました。そこで、サイズを元に戻して、ひと回り大きくしようと」(中村)
 また、前作には、「時々強すぎる球が出る」「セカンドショットでグリーンに止めにくい」というプロの声も聞かれた。そこで『ZXi』ハイブリッドでは、サイズアップに加えて、よりボールを上がりやすくする仕様をめざした。
「そのために、重心を少し下げて、深くしました。それにより、球の上がりやすさは明らかに前作を上回っています。ボールスピードが出るのにプラスして、上に向かってしっかり飛んで高い球でグリーンに止めやすくなったということで、元々ハイブリッドの愛用者が多い女子プロはいち早く使い始めています」(中村)
 さらに、フィッティングのレベルを上げ、より多くのゴルファーにフィットさせようという開発意図は、ドライバーからハイブリッドにまで標準装着される専用設計のカーボンシャフトのラインアップにも表れている。前作に標準装着された「Diamana」に、今回新たに「VENTUS」が加わったのだ。
 それについて、大倉は「市場で人気の高い2ブランドを採用することで、幅広いニーズに応えることを狙いました」と話す。さらに、ラインアップを2つに増やしたもうひとつの理由について、次のように語る。
「前作では、Diamanaを標準装着することで、より広いターゲットの方々に使ってもらいたいと考えたのですが、スリクソンのユーザーからは、〝少し軟らかすぎる〟〝頼りない〟という意見が聞かれました。そこで今回の『Diamana-ZXi』は、前作に比べしっかり目に仕上げました。また、『VENTUS-ZXi』はそれより剛性を高く設定して両者の剛性に差をつけ、50g台は『Diamana-ZXi』、60g台は『VENTUS-ZXi』をメインに据えることで、幅広い層のユーザーが使いやすいシャフトラインナップとなっています」
 このように、「i-FLEX」の搭載で飛距離アップを達成しつつ、QTSスリーブフィッティングシステムの全番手への採用とシャフトのバリエーション増により、フィッティングのレベルアップを実現。そこに、プロが求める構えやすさや球の上がりやすさをプラスした『ZXi』フェアウェイウッド・ハイブリッドは、どんなゴルファーも受け入れてくれる〝懐の広い〟モデルと言えるのだ。

※HB#3での比較。ドライバーのヘッドスピードを43m/s で想定。

フェアウェイウッドとは反対に、前作からヘッドをひと回り大きくしたハイブリッド(写真は#3)。重心を低く、深くしたことで、球の上がりやすさと直進性が向上。外観、性能ともに、よりやさしくなった。

ダンロップの「ゴルフ科学センター」で『ZXi』ハイブリッドを試打する畑岡 奈紗プロ。「サイズが大きくなって安心感が増した」「高打ち出しでしっかりスピンも入るのでピンをデッドに狙える」「スリーブで調整できるのがいい」と、その性能を高く評価。





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