2025/11/17

《ゼクシオ 14 シリーズ 誕生STORY VOL.2:ドライバー編》大胆なデザイン変更でイメージ一新。新テクノロジーでゴルファーの飛びへの期待に応える

 前回お伝えしたように、伝統だったブルーのヘッドカラーはブラックに変わり、ソールの大きな“XXIO”のロゴもトウ下側に小さく入れるに留めるなど、外観デザインが大きく変わった『ゼクシオ 14 シリーズ』のドライバー。その中身も、商品企画を担当した佐藤 弘樹が“打って感じる進化”と語る通り、大胆な変更を行った。
 まずは、『ゼクシオ 14』(以下、14)、『ゼクシオ 14+』(以下、14+)に共通する進化について見てみよう。
 前作との違いの中でも、最も大きなものがフェース材料だ。長らく使ってきたチタン材「Super-TIX®51AF」から、「VR-チタン(Super-TIX®52AFS(※1)) 」(以下、VR-チタン) という新たな材料に変更した。
「従来の材料もすぐれていたのですが、これまで以上にヘッドをたわませようとすると、耐久性の点で課題がありました。ボール初速を上げようにも上げられなかったので、それに変わる材料開発に取り組んでいました」
 フェース材料の開発について、ドライバーの開発を担当した加藤 雅敏はそう振り返る。新たな材料を探していた開発チームだったが、ある時、日本製鉄から新素材を提案された。それが「VR-チタン」で、さっそく性能評価を行ったところ、加藤らが求めるボール初速に加え、耐久性を兼ね備えたことから採用するに至った。ゴルフクラブに限らず、工業製品にVR-チタンが使われるのは、ゼクシオが世界初だという。
「一発だけ飛ばそうと思ったら他にも材料はあるかもしれませんが、それで割れてしまったらお客様にご迷惑がかかります。ボール初速を向上させるためにヘッドを効率よくたわませ、なおかつ割れないようにするには、強く粘りのあるVR-チタンが要望によく適合していました」(加藤)
 加藤いわく、高強度ながら靭性(※2)にすぐれたVR-チタンをフェースに採用したことで、クラウンやソールなどボディの設計自由度が向上。フェース、ボディともにたわみが大きくなる「ULTiFLEX(アルチフレックス)」という新構造によってエリアを拡大したことにより、アベレージゴルファーの打点のバラつきをカバーし、ボール初速のアップひいては大きな飛びを生み出すことに成功した。

(※1)Super-TIX®52AFSは日本製鉄(株)のチタン製品です
(※2)金属などの材料の「粘り強さ」を表す性質

佐藤 弘樹(さとう・ひろき)

ゴルフビジネス部 ゴルフクラブビジネスグループ 2008年入社。海外物流やゴルフグローブなどの販売企画などを経て、2018年よりゼクシオのゴルフクラブの商品企画を担当。自身が手がけたゼクシオのモデルとしては今回が4作目となる。

加藤 雅敏(かとう・まさとし)

商品開発部 クラブ技術グループ 2007年入社。シャフト設計、クラブフィッティングシステム開発を経て、2015年よりゼクシオのフェアウェイウッド、ハイブリッドの開発を手がける。13代目モデルからドライバーの開発を担当。

 12代目モデルで初めて採用され、前作にはその改良バージョンが搭載された「New ActivWing(アクティブウイング)」。ヘッドのブレにつながる「遠心力」とは逆方向に発生する「空力」(揚力と抗力)を制御することで、ヘッドの挙動を安定させるというゼクシオ独自のこの機能も、『14』『14+』ともに大きく進化した。
 まず、前作にもあったクラウン上のバック寄りの2つの突起は、構えやすさと空力性能を高めるために、位置をよりヒール側に寄せ、段差を高くして表面積を増やした。それに加え、新たにソール側にも段差を設けた。
「これまでのゼクシオのソールはフラットなデザインが多かったのですが、今回はヒール側からの開口部をあえて大きくして段差を設け、ソールでも空力性能の向上を狙いました」(加藤)
 ただ、ソールデザインはクラブの印象を左右する重要な要素でもある。そのため、加藤は早い段階からデザイン企画チームにソールデザインついて相談。段差について細かな要望を出したという。空力性能に関わる要素も加味してデザインされたソールは、これまでのゼクシオとは一味違う、精悍なイメージに仕上がった。
 さらに、新しいソール形状の採用について加藤は次のように話す。
「ヘッドをバック側まで平たく伸ばせたことで低重心化でき、低スピン化や実打点におけるボール初速のアップも実現できました。その上、アドレス時にヘッドのすわりがよくなるので、構えやすいというメリットもあります」
 ソール形状の大胆なデザイン変更が、飛距離性能にもプラスに働くというわけだ。

 ここからは2つのドライバーのそれぞれの進化についてチェックしてみよう。まずは『14』から。
 前回述べたレギュラーモデルへのQuick Tune System (シャフト脱着機構、以下QTS)の初採用。QTS自体、今では一般的だが、採用するのが軽量を特長とするゼクシオであるところに難しさがあった。
「QTSを搭載することで重量が取られることが問題でした。しかもQTSは、ヘッドの中でも高い位置に搭載されるため重心が上がってしまいます。QTSで重くなる重量をホーゼル周辺で軽量化することが大きな課題でした」(加藤)
 その解決方法として加藤ら開発チームが考え出したのが、ショートホーゼル構造の採用だ。それによって重心を低くしつつ軽量化に成功したのだが、今度は別の問題が持ち上がった。最初に作ったプロトタイプのヘッドに対し、「構えた時に違和感がある」という意見が出たのだ。
「ひと言でいうと、ネックからクラウンへの繋がりがスムーズではなかったのだと思います」
 と佐藤が解説する。
 ホーゼルを短くしても構えやすく見せるにはどうすればいいのか。開発チームは、クラウンからネックがスムーズに立ち上がるよう、ネック周辺の丸みの太さや長さを調整したヘッドのモックアップを3Dプリンタで作製。それを社内のトップアマチュアや関係者に見てもらうということを繰り返し、理想の形状を探った。
 さらにヘッド自体の形状についても、前作から変更を加えた。ゼクシオでは、伝統的につかまりがよく、やさしく見せるために、ややフックフェースを採用してきた。ところがその形状だと、QTSをつけて構えた時に、やはり違和感があるという声が聞かれたという。そこで加藤たちは次のような対策を講じた。
「QTSにはフェース角の調節機能もあります。それにより、フェースを閉じることも開くこともできるので、ターゲットに対してスッと構えられるよう、スクエアなフェースにしました。さらに、構えやすさを考慮して、ヘッド後方に丸みをつけ、ネックからフェースに繋がる部分の形状も変えました。前作と並べて構えたら、その違いは一目瞭然だと思います」(加藤)
 そうして完成した『14』ドライバーのヘッドは、社内外から「いいものができましたね」と高評価を得たという。

『14』に装着された「MP1400カーボンシャフト」では、14代目にして初となる試みを行った。
「“しなやかに走る”というコンセプト自体は変えていないのですが、今回はシャフトでもしっかりつかまる設計にするために先中調子を採用しました。これはゼクシオでは初めてです。手元をしっかりめにして先端が走るようにして、最後にしっかりつかまえられるイメージですね。それには強度が必要なのですが、高強度の素材に新しい樹脂を加えることで強度を高めて、やわらかいフレックスでもしなり感がありながら、走りとつかまりがいいフィーリングになったと思います」(佐藤)
 そのデザインについても前作からは大きく変わった。MPシリーズで初めて、マット加工を採用したのだ。それについて、デザイン企画チームの後藤 夏穂は次のように話す。
「マット加工のシャフトは硬そうに見えることが多いので、今回、レギュラーモデルに装着することを考えて、グラデーションにして硬く見えすぎないような色味に調整しています。それと、歴代のゼクシオは、カラフルで鮮やかな色味を採用してきたのですが、今回は色彩を抑え、ヘッドからシャフト、グリップまでワントーンにすることをデザインコンテンツの目標にしました。他の番手やレディスについても、クラブ全体としての統一感はかなり大事にしました」
 こうして話を聞けば聞くほど、『14』ドライバーが外観、中身ともに大きく変化、進化したのが分かる。
「ゼクシオでは初代からずっと“1球目からナイスショット”というコンセプトを掲げてきました。これは“飛び・打ちやすさ・爽快感”をひと言で表現したものなのですが、それは今回のシリーズ全体にも共通しています。その中でも、『14』にはやはりゼクシオならではのやさしさに対するお客様のニーズがあります。なので、『14』は、VR-チタンを始め、飛ばすための新しいテクノロジーを採用しつつも、やはり気持ちよく球が上がってドローするような、やさしいクラブになっています」(佐藤)

後藤 夏穂(ごとう・なつほ)

商品開発部 デザイン企画グループ 2022年入社。前職のスポーツメーカーでは研究、開発などを担当。現在は、ゼクシオブランドのクラブ、ボール全般のデザインを手がける。

 続いて『14+』ドライバー。そのターゲットユーザーについて、佐藤はこう話す。
「“1球目からナイスショット”というコンセプトは『14』と同じですが、つかまりは適度に抑えています。スピン量も同様で、シャフト設計も含めて、しっかり振って、強い、直線的な弾道で飛ばしたいゴルファーです」
 ヘッドを『14』と比較すると、次のような違いがある。
「フェースはややオープン気味にしています。重心距離も『14』とは変えていて、『14』が“よくつかまる”としたら、『14+』は“ほどよくつかまる”という感じの設計ですね。ネックも、『14+』ではショートホーゼルを採用していないのですが、それは『ゼクシオ エックス』のユーザーだった上級者やプロが、違和感なくスムーズに構えられるようにするためです。打球音も、『14』の伸びやかな爽快な音に対し、『14+』は抑え気味にしていて、ややソリッドな打球音になるようチューニングしています」(加藤)
 そしてシャフトは、ゼクシオの純正カーボンシャフトとしては初めてシャフトメーカーと共同開発を実施。それが藤倉コンポジットとのコラボシャフト『SPEEDER NX DST for XXIOカーボンシャフト』だ。
「純正カーボンシャフトは、シャフトメーカーのブランド名を冠したものも多くなってきており、より多くのゴルファーに新しいゼクシオを体感していただくには、コラボシャフトの方が手に取りやすくていいだろうと考えました。ただ、我々にはDSTという、いわゆる手元重心化による飛ばしのためのテクノロジーがあり、その開発思想はこのシャフトにも加えています。やはりマッチングが一番大事ですし、コラボだろうが内作だろうが、純正シャフトとしてのパフォーマンスが大事だという考え方は変わらないので、今回もパフォーマンスには自信を持っています」(佐藤)
 VR-チタンのフェース搭載によるULTiFLEX構造やNew ActivWingがもたらす飛距離性能、さらにコラボシャフトの初採用により、実打テストでの『14+』ドライバーの飛距離は前作に比べ3.0ヤード伸びた(※)。
「これは何球もテストした上での平均値で、今回“一撃の飛び”と謳っているように、最大飛距離もしっかり伸びていました。ポテンシャルが向上した感じです」
 と加藤は話す。そして、ゼクシオ 14の2本のドライバーへの思いをこう語る。
「今、マーケットで人気のドライバーをテストしてみると、つかまりが悪くなっている傾向が強く、私としては“やさしいクラブ”と呼べるのは新しいゼクシオの2本だけだと思っています。飛距離はもちろんですが、つかまりのよさや打球音など、トータルで評価してもらえば、妥協せずに作り上げたゼクシオは間違いなく他社のモデルに負けないと思っています」。

(※)ロフト10.5度。Sシャフト。ヘッドスピードを42m/s で想定。



◇『ゼクシオ 14 シリーズ』の特設サイトはこちらをご覧ください。


《ゼクシオ 14 シリーズ 誕生STORY VOL.1:コンセプト編》はこちら


《ゼクシオ 14 シリーズ 誕生STORY VOL.3:フェアウェイウッド・ハイブリッド・アイアン編》はこちら