「今回は“一目見て分かる変化”と“打って感じる進化”をコンセプトに設定しました。その2つをめざして、1つのクラブを作り上げたということです」
2年ぶりにリニューアルして登場する最新モデル『ゼクシオ 14 シリーズ』のコンセプトについて、そう語るのは商品企画を担当した佐藤 弘樹。
佐藤によれば、前作からNEWモデルへの“一目で分かる変化”は3つある。「シリーズの統合」と「外観デザインのコンセプト変更」、そして「メンズシリーズ全てにQuick Tune System (シャフト脱着機構、以下QTS)を採用」だ。
よりヘッドスピードの速いゴルファー向けモデルとして、11代目からラインアップに加わった「ゼクシオ エックス」。同モデルは、30~40代やゼクシオの使用経験がないゴルファーを中心に、性能とデザインの両面で高い評価を得た。このモデルの登場によって、「ゼクシオブランドに対するイメージが変わった」という声も聞かれたという。
「『ゼクシオ エックス』が得た高い評価やゼクシオに対する新しいイメージを生かして、今回は、より多くのお客様に“ゼクシオが変わった”ということを、認知、体感いただきたい……そう考えて、私たちがレギュラーモデルと呼んできたモデル1本に統合しました」(佐藤)
「ゼクシオ エックス」の実質的な後継モデルである『ゼクシオ 14+(プラス)』(以下、14+)のドライバーを見ると、『ゼクシオ 14』(以下、14)との違いは、前者がマット加工、後者が光沢のあるグロス加工という仕上げだけで、ソールなどのデザインは同じだ。
また、佐藤たち企画チームでは、“ゼクシオが変わった”ということを分かりやすく伝えるために、7代目以降モデル名に冠してきた数字についても議論したという。
「ゼクシオの商品企画では、“変えるべきところと、変えてはいけないところ”をずっと意識してきたのですが、今回は、“変えられるものは変えに行く”というスタンスで企画しました。そのためネーミングについても、数字に代わる具体案まで考えました。ただ、実際に商品づくりを進めていくうちに、性能、外観、コスメ、広告など様々な点で変化を遂げました。その中で、変化が多いからこそネーミングはお客様に分かりやすいものにしようと、これまでと同じ“数字”に落ち着きました」(佐藤)
佐藤によれば、これまでのモデルでは、ゼクシオが与える“安心感”や“らしさ”をデザインコンセプトの中心に据えて継承してきた。
それを今回は、トレンドを取り入れつつ、ユーザーがクラブを見た時に、“ゼクシオが変わった”ということを直感してもらい、その変化を楽しんでもらおうと、外観デザインを変えることを強く意図したという。
「ゼクシオブランドとしての価値そのものは大事にしながらも、これまでのゼクシオとは違う新鮮さやワクワク感をお客様に感じていただけたらいいな、と。そのために、デザイン企画チームには、『これまでの安心感や“らしさ”に縛られずにお願いします』とリクエストしました」(佐藤)
たしかにこれまでのゼクシオと言えば、性能だけでなく、外観デザインでも“安心感”は重要なワードだった。それをゼロベースにするとなると、代わりに何を外観デザインのテーマに据えたのか。
「“転換と革新”です。佐藤から、『次のゼクシオはガラッと変えるから』と最初に言われたので、デザイン企画でも、それに合う2つのワードを掲げました」
そう話すのは、前作に引き続きデザインを担当した後藤 夏穂。
そもそもゼクシオらしいデザインとは何なのか。後藤たちデザイン企画チームは、まずそれについて検討した。
「ゼクシオのドライバーと言えば、ネイビーカラーと、ソールに入った“XXIO”という大きなロゴをイメージする方が多いのかなと思い、まずそれを変えることを考えました。細かい部分で言うと、これまでのロゴは2つ目の“X”のアローと呼んでいる部分にゴールドを入れていましたが、そこも変えてみようと」(後藤)
そうした意図でデザイン変更が行われたドライバーのヘッド。まず、レギュラーと呼んできたモデルの光沢のあるカラーは精悍な印象のブラックに変わった。
また、「最初の段階で、デザイナーには、強調せず、控え目にするように依頼した」(後藤)というロゴはソールから消え、トウに小さく入れた(※14、14+共通)。そのロゴのカラーもシルバー単色で統一した。
「ヘッドのネイビーもそうですが、ソールの大きなロゴはゼクシオらしさの一部になっていたので、そこが変わったのは、分かりやすい変化だと思います。私自身、トウにさりげなく入った単色のロゴを最初に見た時には新鮮味を感じました」(佐藤)
これらは、これまでのゼクシオを知るユーザーからすれば、どれも大きなチェンジだろう。
外観デザインのコンセプト変更に関しては、メンズとレディスの違いについても触れておこう。
これまでのモデルでは、ウッドのソールデザインはヘッドのカラーを除けば、メンズとレディスはほぼ同じだった。それを、今回のモデルチェンジに際し、佐藤は「男女で明確な違いを出しても構わない」とデザイン企画チームに伝えた。その結果、メンズのデザインが大きく変わったのに対し、レディスのNEWモデル『ゼクシオ 14 レディス』(以下、14 レディス)は従来のソールのロゴを踏襲した。
その理由について後藤はこう話す。
「ユーザー調査で、女性ゴルファーのみなさんの中にはゼクシオのブランド価値を高く評価してくださっている方が多いこと、それに、ゼクシオに対して、男性よりも“安心感”を重視されていることが分かったからです。実はロゴについては、途中まではメンズと同じ転写で進めていたのですが、安心感とゼクシオのブランド価値を表現するために、レディスでは立体的な彫り込みにしました」
さらに、レディスモデルは、これまでカラーバリエーションを第1カラー:ブルー、第2カラー:ボルドーとしてきたが、『14 レディス』へのモデルチェンジに際し、第2カラーをホワイトに変えた。これもまた、かなり大きな変更と言える(※詳細はVOL.4参照)。
これこそ、外観デザインだけでなく、性能にも関わる大きなチェンジと言えるだろう。ただ、「ゼクシオ エックス」では2代目、3代目と採用してきたのに対し、これまでレギュラーと呼んできたシリーズでは取り入れてこなかったのはなぜだろう。その理由について、
「それは、これまで私たちは、反発性能や重心設計、打球音など、ゼクシオとして大事だと思う要素に関して様々な工夫をこらし、ヘッドからグリップまで1本のクラブとして完成しているのが、いいクラブなのだと考え、お客様にもそう答えてきたからです」
と佐藤は話す。そして、『ゼクシオ 14』に今回初めてQTSの採用を決めたことについて、こう続ける。
「新しいゼクシオも、画期的な新素材である『VR-チタン』を採用し、重心設計を含めて飛びの部分で目標をクリアできました。一方で、トレンドとして、ゼクシオのファンを含め市場のユーザーのQTSに対するニーズが高まってきていることも私たちの調査から分かってきました。今回、私たちが“これが新しいゼクシオです”と自信を持って言えるものを作ることができましたが、その上でお客様がQTSを望んでいるのであれば、それも取り入れようという判断をしました」
さらに佐藤は、『ゼクシオ 14』にQTSを採用した意味合いについて、次のように説明する。
「1本の完成されたクラブとして、『ゼクシオ 14 シリーズ』に私たちが自信を持っていること自体は変わりません。もちろん、お客様にとってはカスタムシャフトへのシャフト交換によってフィッティングの幅も広がるので、その点はメリットです。ですが、これまで純正スペックをお使いになってきたゼクシオユーザーの方には、弾道調節機構によって、弾道の変化やヘッドの見え方の違いを体感いただき、ノーマルポジションを含めてご自身のベストな位置を探すことを楽しんでいただければと私たち商品企画チームは考えています」
佐藤の口からたびたび聞かれた《トレンド》という言葉。それをかつてないほど意識し、よくも悪くも“いかにもゼクシオ”というデザインからの脱却を図ったのが『ゼクシオ 14 シリーズ』と言えるだろう。
「もちろん若いゴルファーやこれまでゼクシオを使ったことのないゴルファーのみなさんに手に取っていただきたいという思いもあるのですが、これまでのゼクシオファンの方々にも、こういう現代的なエッセンスを取り入れていくことは歓迎していただけるのではないかと考えています。そして、その方々が『ゼクシオ 14 シリーズ』を使っているのを見た周囲の人たちが、『えっ!これゼクシオなの?』『いいね!』と言ってくださるとうれしく思います」(佐藤)
では、『ゼクシオ 14 シリーズ』のもう一つのコンセプトである“打って感じる進化”とは、いったいどんなものなのか? 次回以降で詳しくご紹介する。