VOL.1で述べたように、“転換と革新”をデザインテーマに据え、外観デザインの大幅な変更を行った『ゼクシオ 14 シリーズ』。レディスモデル『ゼクシオ 14 レディス』(以下、14 レディス)では、これまでのブルー(第1カラー)、ボルドー(第2カラー)というカラーバリエーションのうち、第2カラーをホワイトに変えた。
その理由について、デザインを担当した後藤 夏穂は話す。
「これまでホワイトは、第3カラーとして数量限定で販売してきたのですが、12代目の“エクリュホワイト”というカラーがかなりの人気で、前作の“パールホワイト”も国内だけでなく海外でも好評でした。そこで、次のホワイトも確実に受け入れていただけるだろうと判断して、ゼクシオが変わったということをアピールするためにも、第2カラーはホワイトをベースにしました」
さらに、第1カラーのブルーについても変更。これまでのビビッドなブルーに代えて、トレンドでもある彩色を抑えた色合いのブルーを採用した。
「クラブが主人公であることに変わりはないのですが、女性ゴルファーがウエアやバッグとのコーディネートを考えた時に、クラブが目立ちすぎずに調和するようにしたかったので、同じブルーでも中間色を選びました」(後藤)
また、これまで純正シャフトのカラーは、ブルー、ボルドーともにヘッドと同系色にしていた。それを『14 レディス』では、ブルー、ホワイトともにホワイト系のシャフトを採用した。
「ブルーのヘッドにホワイトのシャフトを組み合わせてみるとシックに見えますし、実際に多くの女性に見てもらった調査でも評価が高かったので、思い切って採用しました。ヘッドのカラーはシャフトに差し色として効かせています」(後藤)
このように『14 レディス』では、クラブ全体としてのコーディネートを図った。
このように『14 レディス』では、外観デザインが大きく変化した。では、中身はどんな進化を遂げたのか。それについて、商品企画を担当した佐藤 弘樹は次のように話す。
「飛距離性能などの技術に関しては、基本的にはメンズモデルと連動させています。それにプラスして、女性専用設計という要素を盛り込んで、細部にまで様々な工夫をこらしています」
工夫の1つが、ウッドの肉厚設計。女性の小さなパワーでもボール初速が出るよう、打点がヒール側に集中するのに合わせて、その部分の肉厚をできるだけ極限まで薄くし、ヘッドがたわむようにしている。
また、男性とのスイングの違いも開発のポイントになった。
「女性はアウトサイドインになる傾向が男性よりも強くなります。アイアンでは、それほど差がないのですが、クラブが長くなればなるほど、その差が広がっていきます。そのため特にドライバーでは重心の作り方をメンズとは変え、重心距離を短くしてつかまりをよくしています」
ドライバー開発担当の加藤 雅敏はそう話す。その結果、『14 レディス ドライバー』では前作から3ヤードの飛距離アップに成功した。
さらに女性専用という点では、女性が大事にする感性についても工夫をこらした。
「特に女性が重要視するのが打球音です。低いヘッドスピードでやわらかいボールを打っても、いかにいい音を出すか。それを探るために、ヘッド内の突起であるサウンドリブについて、どこかどれだけ揺れてどんな音が出るのかを、スーパーコンピューターを使って何度もシミュレーションしました」(加藤)
ただ、そうして作った試作品を打ってみたものの、期待したような音ではなかったため作り直すということを繰り返したという。
「雑音を消していき、消した部分にナイスショットに感じる音の成分を乗せていくイメージですね。伸びのある金属音で、いかにも“飛んでいるな”と感じさせる音に設計できたと思います」
加藤がそう話す打球音は、ゼクシオらしい、高く伸びて爽快な音に仕上がった。
「フェアウェイウッドとハイブリッドは地面にあるボールを打つことが多いクラブなので、ヘッドスピードが遅く非力な女性はやはり球が上がりにくくなります。そのため、『14 レディス』では、女性の方でもやさしく球が上がるようにお願いしました」(佐藤)
そんな商品企画チームの要望を受け、メンズと同じく、フェアウェイウッドでは「New CANNON SOLE(キャノンソール)」、ハイブリッドでは「WING CANNON SOLE(ウィングキャノンソール)」というヘッド内部のウエイトをそれぞれ改良、新設。前作よりも重心を低くすることに成功した。
また、フェアウェイウッド、ハイブリッドともに従来のカップ状のフェースをバージョンアップさせた「Edge Cup Face(エッジカップフェース)」がもたらす「REBOUND FRAME(リバウンドフレーム)」の進化により、ボディの変形とフェースのたわみが大きくなり、ボール初速がアップしたのもメンズと同様だ。
それらに加え、フェアウェイウッド、ハイブリッドでも、感性を大切にする女性のためにメンズとは仕様を変えた。その開発を担当した小野 貴士が解説する。
「前作では、クラウンの塗装領域とフェース領域の間にショットブラストを入れていました。今回、メンズでは真っ直ぐ構えやすいようにと採用しなかったのですが、女性ゴルファーにショットブラスト無しを見せたところ、“ロフトが立って見えて難しく感じる”という意見が出まして。そのため、『14 レディス』ではショットブラストを残して、よりフェースが見えて球が上がりやすいイメージが湧くようにしました」
球の上がりやすさという意味では、ハイブリッドに新たにロフト35°の#8を設定したのも大きな変更だ。それについては、加藤が関係者向けの展示会でのこんなエピソードを明かしてくれた。
「ある女性のお客様が、試打スペースで#8を打ったところ、向かいのネットの高いところまでボールが飛びました。その瞬間、その方はすごい笑顔になって、『今まで100ヤードを何で打つか困っていたんです。アイアンだと球が上がらないし……。絶対にこの#8を買います!』と(笑)。あの笑顔は忘れられないですね」
その話を受けて、佐藤はこう話す。
「グースがある=やさしいというイメージがあるかもしれませんが、ボールの上がりやすさで言うと、実はグースが少ない方が上がるのです。そのため『14 レディス』ではグースを抑えています。先ほどのショットブラストによる視覚効果も含めて、主要メーカーのモデルの中では、実打テストでの飛び姿を見ても『14 レディス』が一番やさしく上がると言っていいほど、上がりやすさには自信を持っています」。
そして『14 レディス アイアン』だが、フェースに新素材「VR-チタン」を採用した点や、余剰重量の創出による低重心化、2枚のボディ間のL字型の溝の拡大によるボディとフェースのたわみ拡大といったテクノロジーは『14 アイアン』と同じ。また、女性を意識した部分では、楽にボールが上がりそうな形状を実現している。その開発の過程では、これまでにも増して女性の意見を取り入れただけでなく、女性の技術スタッフも深く関わったという。
「ウッドもそうなのですが、今回は女性スタッフが、女性による実打テストにたびたび立ち合って、女性同士のやりとりの中で意見を引き出してくれました。さらに本人も実打テストに加わり、自分自身にとっての打ちやすさを考え、性能として取り入れています。そうした細かな作業を積み重ねてできたのが『14 レディス アイアン』です」(小野)
また、『14 レディス』では、ドライバーからアイアンまで標準装着される純正カーボンシャフトについて、シリーズ史上初めて2つのラインアップを用意した。これまでの流れを汲む『MP1400L カーボンシャフト』と、藤倉コンポジットとのコラボシャフト『SPEEDER NX DST for XXIO カーボンシャフト』である。
「従来のレディスのMPカーボンシャフトは、L、A、それにレディスのRという3フレックスで展開してきました。ただ、ドライバーでRを選ぶのは、比較的パワーがあってメンズを使うかどうか迷っているような女性であり、真剣にプレーして上達をめざしている方が多い傾向があります。そういう方には、『14+』と同様にコラボシャフトのコンセプトのほうが、お客様に対してメリットがあるのではと考え、Rシャフトに代わるものとして採用しました」(佐藤)
やさしさを追求する一方で、メンズに近いスペックを求める女性ゴルファーの要望に応えたのもまた、女性専用設計と言えるだろう。
初代から24年連続でレディス部門のゴルフクラブの年間売上No.1(※)という人気モデルにもかかわらず、変化と進化を試みた『14 レディス』。
「メンズ、レディスともに、これまでのそれぞれの制約を取り除き、本当に大きく変えました。今回は、ユーザー、販売会社の意見も汲み取りながら、私自身の意見、それに思いもすべてデザインに反映できたので、自信を持ってお薦めしたいです」(後藤)
「今回のモデルチェンジでは、これまで“ゼクシオとして変えてはいけない”と考えてきたことでも、お客様にとって新鮮なワクワクを感じていただけると思えることは変えるというチャレンジをしました。レディスで言えば、ヘッドのカラーのラインアップを変えたのもその1つです。“一撃の飛び”と謳っている飛距離性能についても開発チームが頑張ってくれたので、いい意味でお客様の期待を裏切って、ワクワクしていただけるクラブになっていればいいなと思います」(佐藤)
2人が自信を持って語る『ゼクシオ 14 レディス』の変化と進化。まず実物を見て、そして実際に打ってみて確かめていただきたい。
(※)2001年~2024年レディス用ゴルフクラブブランドシリーズ別 ウッド+アイアン計における年間国内販売金額ベース
出典:株式会社矢野経済研究所小売店実売動向調査「YPSゴルフデータ」2025年1月現在
◇『ゼクシオ 14 シリーズ』の特設サイトはこちらをご覧ください。