「フェアウェイウッドとハイブリッドは、ドライバー以上に、ターゲットをより正確に狙っていくクラブです。そのため、飛ばすこととのバランスは難しいものの、やはり『スリクソン ZXi RKT シリーズ』(以下、『RKT シリーズ』では、ドライバーと同様、〝ロケット〟をコンセプトにして飛距離にこだわって開発してほしいとお願いしました」
商品企画を担当した大倉は語る。その要望に応えるべく、『RKT シリーズ』は前作に比べフェアウェイウッドの#3でプラス4.3ヤード、ハイブリッドの#4でプラス1.3ヤードという飛距離アップに成功した。いずれもドライバーのヘッドスピードで 46m/s相当という、プロ・上級者を想定したマシンテストの結果だ。
飛距離アップできた要因について、開発を担当した福泉はこう話す。
「フェアウェイウッド、ハイブリッドともに、『REBOUND FRAME』構造の改良が効いています。フェースの一部やフェース~ソールにかけて肉厚設計を変え、たわみを生む構造をブラッシュアップしていった結果、ボールスピードをアップさせることができました」
さらに、商品企画チームが開発チームに出したもう一つの要望が、脱着式ウエイトの搭載だった。スリクソンのフェアウェイウッド、ハイブリッドとしては初の試みだ。大倉によれば、スリクソンのターゲットユーザーは、フェアウェイウッドとハイブリッドについても、フィッティングをして購入するケースが増えている。また、リシャフトするユーザーも多いが、その際、自分が望むバランスが出ないと悩むユーザーもいるという。
「そうした一般ユーザーに加え、プロトーナメントの現場でも、シャフトを変更した際に容易にバランスを調整できるよう、脱着ウエイトを搭載して、フィッティング性能を向上させたいと依頼しました」(大倉)
また、ドライバーと同様、フェアウェイウッドとハイブリッドでも開発に時間をかけたのが構えやすさ。PGAツアーのプロを対象にテストを実施した結果、彼らの多くが想像以上に構えやすさを重視していることがわかったからだという。
「PGAツアーのプロに使ってもらうために、まずはプロにとっての構えやすさにこだわって作ろうと。たとえばFW#3は、前作ではフェース近くのクラウンに段差を設けていたのですが、それに対して〝ヘッドが膨らんで見える〟〝やや球を拾いにくいイメージがある〟といった意見が聞かれました。そのため新しいモデルでは、クラウンをフラットにして、クリーンで雑味のないルックスにして、プロがアドレスしやすいようにしています」(福泉)
その形状は、厚み自体は前作から変えていないものの、アドレスでの見た目はシャローになり、地面にあるボールを拾いやすいイメージが増した。
また、プロの多くがトップラインをターゲットに合わせて構えることから、今回、トップラインがまっすぐターゲットに向けられることを開発テーマの一つに設定。フェアウェイウッド、ハイブリッドともに、トップラインの形状で見え方を調整することで、プロにとっての構えやすさを実現した。
スリクソンのアイアンに負けず劣らず、PGAツアーのプロたちに愛用者が多いのがユーティリティアイアン(以下、ユーティリティ)だ。飛距離性能に加え、打ちたいショットのイメージが湧く〝顔〟や操作性の高さから、非契約のプロも多く使用している。そして近年、日本でもユーティリティを使うプロが増える傾向にあるという。
「近年、アイアンのロフトがどんどん立ってきている傾向もあり、プロであっても、ロングアイアンで毎回ナイスショットを打つのが難しくなっています。すでに#3や#4をバッグに入れていないプロは多いですし、#5でさえ入れないプロもいて、中空構造のユーティリティがそれに代わる選択肢になっています」(大倉)
「ロングアイアンをやさしく打ちたいという要望は女子プロからも多く、ユーティリティの#3や#4を愛用しているプロは少なくありません。女子プロにとっての打ちやすさは、アマチュアのみなさんにも通じると思います」(福泉)
そんなユーティリティのスリクソンの最新モデルが『ZXiU ユーティリティ』(以下、ZXiU)だ。
「私としては、ユーティリティもアイアンの番手の一つだととらえています。そのためアイアンと同じで、打感などの感性に関わる部分を大事にしながら、スリクソンらしい端正なフォルムにしてほしいという要望を出しました。これは、スリクソンのユーティリティの不変のコンセプトでもあります」(大倉)
アイアンと同じく、やわらかく心地よい打感を実現するために、『ZXiU』では前作に続き軟鉄鍛造ボディを採用。そして今回、フェースを新たに開発した。「MAINFRAME iQ」がそれだ。
その裏側を見ると、トゥからトップブレード、そしてヒールと、フェースを囲むように浅い溝が設けられ、溝の一部は二重になっている。
「何千回という打点シミュレーションを行うことで、設計図に人間の手では到底描けないような不連続な線を引き、反発を高めるのにベストな肉厚分布を導き出しました」(福泉)
新構造のフェースにより、プロが求める打感を実現できただけでなく、飛距離アップにも成功した。ただ、「MAINFRAME iQ」がもたらす最大の効果はほかにあるという大倉は言う。
「寛容性の向上に最も寄与しているのがMAINFRAME iQです。最適なフェース設計によって余剰重量が生まれたことで、さらにヘッドを低重心化できました。それにより、ユーティリティに求められる球の上がりやすさが向上しています」
また、今回のモデルチェンジに際し、標準装着されるカーボンシャフトのラインアップも強化した。ユーティリティ用の「VENTUS TR ZXi-Ⅱ」に新たに80g台を追加したのだ(ハイブリッド用も同様)。
「前作のドライバーのシャフトに、60g台のしっかりしたVENTUSを選んだものの、〝重量フロー的に合うハイブリッドとユーティリティがない〟という声が一部のお客様から聞かれました。ドライバーで、しっかりしたシャフトを選ばれる方が想定以上に多かったこともあり、今回その重量帯を厚くしました」(大倉)
歴代モデルがプロ・上級者から高く評価されてきたスリクソンのアイアン。前作の『ZXi7 アイアン』もヒットし、『ZXi5 アイアン』に至っては「日本国内でいちばん売れたと言っても過言ではないほど」(大倉)というセールスを記録した。
そんな大人気アイアンの後継は、いずれもモデル名は前作を踏襲して登場。では、両モデルは何をコンセプトに掲げたのだろうか。
「アスリートゴルファー向けアイアンとして市民権を得た今では、大きくは変えづらいというのが本音なのですが(苦笑)、それでも進化させることは必須でした。それにプラスして、より多くのお客様にスリクソンのアイアンのよさを感じていただきたいと考えました」(大倉)
そして当然のことながら、両モデルの前作は世界中のツアープロにも愛用された。
「アイアンは劇的な変化を起こしにくいアイテムである上に、前作では高い評価をいただきました。そのため、よい部分は踏襲しつつ、いかにブラッシュアップするかが開発のテーマになりました。そのために、アメリカと日本、両ツアーのプロを対象にテストを行いました」(福泉)
では、まずNEW『ZXi7 アイアン』の進化、改良点について見ていこう。前作とは明らかに変わったのがバックフェースの肉厚部で、広くなだらかな形状になった。
「ターゲットユーザーに対して必要な分だけ、すなわち打感に効く部分だけを厚くし、余分なところを削ることで出る余剰重量を下部に配分しました。『ZXi7』というと、操作性が高くて上級者向けアイアンだと思われがちですが、低重心化することで球上がりもよくなって寛容性も手に入れたということです」(大倉)
「バックフェースの肉厚分布を決めるに当たっては、シミュレーションとAIによる計算を繰り返し行いました。いろいろなパターンを引き出して計算し、その比較からベストな分布、形状を探し出すというプロセスを経ています」(福泉)
「PUREFRAME iQ」と名付けたこの新技術により、プロが好むやわらかい打感はそのままに、前作に比べ打出し角が上がり、スピンを増やすことに成功したのだ。
また、打感を左右する鍛造技術についても新たな製法を開発した。
前作では、軟鉄の中でも特にやわらかい「S15C」を、初めてアイアンヘッドに採用した。それは、ネック部分を強化する「コンデンス(濃縮)鍛造」という独自技術によって実現したのだが、今回、従来のネック部分に加えて、フェース部分にも〝冷間コンデンス鍛造〟という形で応用した。熱処理のタイミングを工夫することで、打感に影響すると言われる深い部分はソフトに、スピン性能を決める表面はしっかり硬くすることで、耐久性を上げることに成功したのだ。
「やわらかい素材を使うと、フェース面が削れやすいとか、溝の摩耗が早いといったデメリットが出てくる可能性があります。それを今回、冷間コンデンス鍛造によってフェース面もしっかりフォローすることで、素材そのもののやわらかさを感じるような打感のよさはそのままに、スピン性能を長く安定して維持できるアイアンになりました」(福泉)
次に、国内の女子プロに愛用者の多いNEW『ZXi5 アイアン』。LPGAツアーのプロの中には、ショートアイアンを「ZXi7 アイアン」、ミドルアイアンを『ZXi5 アイアン』というコンボセットで使用するプロもいる。その最新モデルには「ZXiU ユーティリティ」と同じフェース肉厚設計の新技術「MAINFRAME iQ」を搭載した。
フェース裏を見ると、「ZXiU」に輪をかけて溝は複雑に入り組んでいて、一部は4層になっている。
「『ZXiU』と同様、新しいフェース構造のおかげで反発性能が上がって飛距離が伸びていますが、それにも増してMAINFRAME iQは低重心化に貢献しています。それによって、打ち出しが上がってスピンが増えるので、前作よりさらに寛容度がアップしています」(大倉)
「『ZXi7』もそうですが、新しい『ZXi5』は、前作を使っている方にも性能の違いがわかるアイアンに仕上がっていると思います。そのため、まだスリクソンのアイアンを使ったことがないという方はもちろん、今まで愛用してくださっている方にも、ぜひ打っていただきたいと思います」(福泉)
さらに、最新のスリクソンのアイアンにはもうひとつのモデル『ZXiR アイアン』が新たにラインアップしているが、それについては次回解説する。
新旧『ZXi7 アイアン』のバックフェース比較。前作(左)に比べ、打感を向上させる厚肉部を効率よく設計。それによって生じる余剰重量を下部に配分することで低重心化にも成功した。
ネックの強化という従来の効果に加え、フェースの表面と深部の硬度差を大きくできる「冷間コンデンス鍛造」を新開発。軟鉄「S15C」ならではのソフトな打感とフェースの摩耗耐久性を両立。
新旧『ZXi5 アイアン』のフェース裏。フェース肉厚設計の新技術「MAINFRAME iQ」により、効率よくたわむよう設計されたNEW『ZXi5』(右)は、飛距離アップだけでなく、余剰重量を生かし低重心化も実現した。