スリクソンの新たなブランドメッセージの〝obsessed〟 は「何かにハマる、夢中になる」を意味する。つまり、ゴルフに情熱を注ぎ、夢中になっているゴルファーであれば、プロやトップアマチュアだけでなく、ゴルフをエンジョイする人にも寄り添うのが、スリクソンの新しい姿。それをゴルフクラブとして体現することについて、商品企画を担当した大倉 侑樹はこう話す。
「プロや上級者向けという根幹となる部分は大事にしながら、ゴルフに情熱を注ぐお客様との感情的なつながりを重視し、より幅広い層のターゲットに、スリクソンのクラブを使っていただきたい、ゴルフを楽しんでいただきたいというのが今回のリブランディングの趣旨です。そして、よりターゲットを広げていくための方法として、アイアンのラインアップの拡張をコンセプトに掲げました」
従来のプロ・上級者だけでなく、より幅広い層のゴルファーを対象にした新しいモデルを作るために商品企画チームが最初に行ったのが、ターゲットを見直すことだった。
大倉によれば、前作まではアイアンのターゲットを「シリアスゴルファー」と「エンジョイゴルファー」に大別し、スリクソンは前者を想定していた(ちなみに後者にはゼクシオを想定)。それを今回、ターゲットを①プレーヤー、②プレーヤーディスタンス、③ゲームインプルーブメント、④スーパーゲームインプルーブメントという新しい4つのセグメントに分類した。
「➀はプロ・上級者の使用を前提としたアイアンで、②は①よりも飛距離が出て、寛容性も高いアイアンです。NEW『ZXi アイアン』では、『ZXi7』が①、『ZXi 5』が②にそれぞれ該当します。そして今回、ミスに寛容でスコアメークをサポートしてくれる③として新たに開発したのが『スリクソン ZXiR アイアン』(以下、ZXiR アイアン)です」(大倉)
『ZXiR アイアン』はプロがターゲットではないものの、開発はドライバーと同じく、アメリカのモノづくりの拠点であるDunlop Sports Americas, Inc.(以下、DSA社)からスタートした。
その理由について、スリクソンのヘッド開発担当である福泉 惇は次のように説明する。
「日本のアマチュアゴルファーは、長い距離を打つクラブとして、ロングアイアンの代わりにハイブリッドを使う傾向があります。それに対しアメリカのアマチュアプレーヤーにはヘッドスピードが速い方が多く、アイアンを#5や#4までバッグに入れている方も多くいます。そのため、アメリカには〝やさしく打てるロングアイアン〟という、日本にはないニーズがあります。そのニーズに応えつつ、構えやすい形状や打感といったスリクソンのよさはそのままに、シリーズで最もやさしいアイアンを作ろうというのが『ZXiR アイアン』の開発の出発点です」
実は、『ZXiR アイアン』はアメリカでは日本より一足早く昨年12月に発売され、数パーセントながら、アメリカでのスリクソンアイアンのシェアを押し上げるほどの人気を見せたという。
「日本に比べると、アメリカではスリクソンのアイアンはまだまだなのですが、シェアは右肩上がりになっています。『ZXiR アイアン』は、アメリカ市場において、スリクソンがしっかりシェアを取っていくための戦略的アイアンでもあります」(大倉)
アメリカでのニーズをきっかけに開発をスタートさせた『ZXiR アイアン』。ドライバーと同様、その開発には、日本からDSA社に赴任しているダンロップの技術者も、日本人ならではの感性を製品に反映させるべく関わったという。具体的には、どんなアイアンをめざしたのか。
「飛距離と寛容性の両立です。スリクソンらしい形状やデザイン性は踏襲しつつ、ゲームインプルーブメントアイアンとして、いかに飛距離を出しながら、寛容性をもたせるか。ひと口に寛容性と言っても、やさしさは人それぞれで、必要な要素を取り入れるにしても飛距離性能にマイナスにならないようバランスをとらなければなりません。そこは開発チームが苦心した点だと思います」(大倉)
まず、1つめの開発テーマの飛距離についてだが、『ZXi5』と同様、フェース肉厚設計の技術「MAINFRAME」を搭載することで反発性能が向上。高いボール初速が大きな飛距離を生むとともに、フェースで生じた余剰重量を下部に配分することで、低重心化、すなわち上がりやすさも実現した。
また、「ZXi5」と比べると、ストロングロフトでソールは厚め、よりグースが入った形状にするなど寛容性が高い。
さらに、クリーブランドゴルフ「RTZ 2 ウエッジ」のヘッド素材である、軽くてやわらかい合金「Z-ALLOY」を、アイアン用にチューニングした新しい合金「i-ALLOY」を採用。それが設計自由度を高め寛容性につながっているが、それでいて外観はスリクソンらしさを備えている。
「〝ターゲットユーザーにとってやさしいクラブ〟ということだけを言えば、さまざまな形状や構造が考えられますが、やはりスリクソンのアイアンには、スリクソンならではの形状や打感のよさなどのセールスポイントがあります。それを継承しつつ、新しいフェースの肉厚設計や新たな素材を採用することで、飛距離と寛容性を両立できたと思います」(福泉)
ゲームインプルーブメントアイアンとしての工夫はサイズにも見られる。『ZXi シリーズ』アイアンの他の2モデルでは、各番手のフェース長がほぼ一定なのに対し、『ZXiR アイアン』では、ロングアイアンになるにつれてフェース長を長く設計した。
「ピッチングウエッジは通常のサイズからスタートして、ロングアイアンが苦手なアベレージゴルファーのみなさん向けに、少しずつフェースを長くしてやさしくするというアプローチです。見た目だけでなく、実際にMOI(慣性モーメント)も上がるので他の2モデルよりやさしく打っていただけます」(福泉)
このように、『ZXiR アイアン』は飛距離が出て、スコアメークを助けてくれるアイアンでありながら、構えやすさや打感という感性の部分でもゴルファーの期待に応えてくれる。
「ZXi5は自分にはちょっと難しいし、前作のZXi4もしっくりこなかったという方にも、安心して打っていただけるので、ぜひ試していただきたいと思います」(大倉)
本企画のPart.1で紹介した『スリクソン ZXi RKT シリーズ』ドライバー。4つあるNEWモデルの1つ『ZXi RKT MAX』(以下、RKT MAX)は、前作からのモデルチェンジではあるものの、寛容性をさらに高めたという点では、スリクソンの新しいブランドメッセージ〝OBSESSED WITH IT〟と関連している。
「4モデルの中で、アマチュアの方が最も打ちやすいという立ち位置は前作から変えていません。ただ、前作と比べて、ヘッドの上下左右の慣性モーメントは大きくなっていますし、より低スピン化しています。飛距離を追求しているものの、難しくならないよう工夫しているので、前作より確実に進化しています」(大倉)
そんなコンセプトのクラブだけに、使用するPGAツアーのプロは極めて少数。ただし、他の3つのモデルと同様、開発はアメリカでスタートし、多くのテストもアメリカで実施した。
「そもそもアメリカでのテストでは、4モデルすべてを、プロからアマチュアまでいろいろなゴルファーを対象に行ったのですが、『ZXi RKT MAX』に関しては、ターゲットゴルファー、つまりヘッドスピードがそれほど速くない方に集中的にテストしてもらいました」(福泉)
そうして完成したNEW『RKT MAX』。Part.1で紹介したように、VRチタンに「i-FLEX」設計を施したフェースとカーボンクラウン複合構造、「REBOUND FRAME」構造のバージョンアップにより、高初速・高打ち出し・低スピンを実現。その結果、ドライバーのヘッドスピード43m/s相当で、前作に比べてプラス4.0ヤードの飛距離アップに成功した。
また、重心が深くなったことで、すでに述べたように慣性モーメントは向上し、その値は4モデル中で最大。直進性が高いため、安心して振り切ることができる。
「デザインには惹かれるけれど、どうも難しいイメージが……」
そんな理由からスリクソンのクラブを敬遠してきた方。あるいは、
「スリクソンのクラブに〝やさしいモデル〟なんて本当にもあるの?」
と半信半疑の方。そんなゴルファーのみなさんは、『ZXi RKT MAX ドライバー』と『ZXiR アイアン』を試してみてはいかがだろう。