2021/07/21

コラム

"Tennis's コラム「D・style」"~第3回 「夏場のテニス・熱中症対策」~

2018年全米オープンで主催者の全米テニス協会が「エクストリーム・ヒート・ポリシー(酷暑対策)」を施行すると発表し、男子の試合で第3セット終了後に10分の休憩、女子は第2セット終了後に10分間の休憩が設けられました。
当時に男子シングルス1回戦を途中棄権した選手は「コート上で死ぬのはごめんだ」、「気温は36.7度だったが体感はもっと暑かった。」などとコメントがあったほど、ツアープロは長い試合時間に激しい運動量をこなしています。
昨今マスクの着用による熱中症も増えてきており、テニスプレーヤーに限らず誰にでも熱中症になる可能性があるのです。

■熱中症とは?

熱中症とは、体の体温の調節機能がコントロールできなくなり、体温が上がってしまう病気です。
体は皮膚の表面から熱を体外へ放出します。その際に外気温が体温より高いとうまく熱を逃がすことができず、体温がどんどん上昇してしまいます。また湿度が70%を超えるような環境下だと汗をかいてもうまく蒸発しなくなり、体温を下げられなくなってしまうのです。

体温調節機能をつかさどっているのは「脳」で、熱中症に大きく関わっています。
脳細胞は高温にとても弱いため、温度が40.5℃を超えると機能障害を起こすと言われており、体温の調節機能が弱ってしまうため脳を冷やすことが大切になります。
ただし動物には体温が上がったときに大切な脳を保護できるよう、脳だけを独立して冷却する機能が備わっています。鼻腔の奥には脳と繋がっている毛細血管がたくさん通っていて、鼻呼吸で冷たい空気を通過させることによって脳を冷やすことができますので、プレーの合間に涼しい場所でゆっくりと鼻呼吸をしてみましょう!

■テニスをする時の対策

①水分の補給
水分補給はこまめに行うことが非常に大切です。
テニスは激しい運動のため体の水分吸収速度が速くなります。この吸収速度に見合うように少量の水分をこまめに摂取することが理想的で、一度に多量摂取しても十分な効果を得ることが難しいようです。
また、体温調節機能をつかさどる「脳」は80%が水分でできており、呼吸や排泄される水分も合わせると、成人であれば通常1日に約2~3Lの水分を失っているとされています。
プレー中に拘わらず1日最低でも1.5Lの水分を摂取するよう心がけましょう!

②喉の渇きはサイン?!
喉が渇いたから水分補給~ではなく、”喉が渇く前に水分を補給する”ことがとても重要です。
喉が渇き始めた時点で体の機能は低下し始めています。
実は体重に占める体水分量の内、たった2%の水分を失っただけで軽い脱水状態に陥ってしまいます。
プレーの合間やエンドチェンジなどを利用し、早めに摂取するよう心がけましょう!

③水分と一緒に摂取しておきたいもの
汗で失われる成分は「塩分(ナトリウム)、カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄分」などで、中でもカリウムは失われる量が多く、食べ物からも補給する必要があります。
普段の食生活で大きく不足することはありませんが、大量に汗をかいたり、食事がとれなかったりすると不足しがちになります。
そこでおすすめするのが「バナナ」です。カリウムが多く含まれている「バナナ」は消化の良い糖質を摂取できるほか、筋肉や神経の機能を調整するために必要なミネラルも多く含まれているため、水分補給と共に食べることでこむら返りなどの筋肉のけいれんの予防にもなります。
また、汗をたくさんかく場面では、水分と一緒に塩分の補給も重要です。「塩分タブレット」は持ち歩きやすく、どこでも噛んですぐに塩分補給ができるのでおすすめです!

④ウェア・テニスグッズの機能性
体に身に着けるもので熱中症対策に効果的なのは、吸汗速乾に優れた「アンダーウェア」です。
アンダーウェアは、通常テニスウェアやTシャツの下に着るものです。「これを着たら暑くない?!」と思われがちですが、吸汗速乾に優れた素材であれば汗をすぐに蒸発させ、体の体温を下げる手助けをしてくれます。
なので着ていても暑いと感じず、むしろ涼しく感じます。最近の各メーカーのウェアの多くはこのように「吸汗速乾素材」を使用しています。
また、直射日光を防ぐキャップやバイザーだけでなく、ヘアバンドやハチマキを着用することで5~10℃前後頭部の温度上昇を防ぐことができます。さらに脱着することによりクールダウン効果も期待できますよ!

熱中症かなって思ったらすぐに「冷たい水や塩水、スポーツドリンク」などを飲み、涼しい場所で横になって体を休めましょう。 衣類の襟元をゆるめたり脱いだりし、うちわや扇風機で風を当てたり、首筋やわきの下、足の付け根、足首などの動脈が通っている部分を冷やすことが効果的です。
自力で水分の摂取ができない状況であれば、医療機関に緊急搬送することが最優先になります。
また自力で水分の補給ができても症状が改善しないときも、医療機関を受診しましょう。
たとえプレー中であっても、少しでも体に異常を感じたときは、無理をせずに早めに休息をとることが重要です。

いかがでしたでしょうか?
熱中症はプレー後やプレー翌日に異変が起こることもありますので、十分注意が必要です。
また普段の生活でも起こる可能性があるものですから、夏は日頃から体調管理を意識していきたいものです。
少し気温が下がってくる夕方~夜にテニスをするのも1つの対策かもしれません。
まだまだ暑い日々が続きます~無理をせずしっかりとした対策をしてテニスを楽しんでください!